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見終わった後、親や祖父母に連絡したくなる「83歳のやさしいスパイ」

前回に引き続き、
チリの老人ホームを舞台に撮影された
ドキュメンタリー映画
「83歳のやさしいスパイ」
をご紹介します。

(詳細は前回の投稿をご覧ください)

「スパイ」として老人ホームに
入居者として暮らし始めたセルヒオは
調査したことを探偵に毎日連絡し、
依頼者から追加の調査の依頼がくると
それを調べるわけですが、
次第に彼は調査自体に疑問を持ちます。

というのは
「母が虐待されていないか?」
「母はXXXXという薬を飲んでいるのか?」
と心配しているという依頼者が、
一度も母を訪ねてこないからです。
(もしかしたら、遠方に住んでいるなどの
事情があったのかもしれませんが)

セルヒオは受付の記録も調べ、
この方には長い間面会者がないことも知ります。

最初は調査対象として
その女性を見ていたセルヒオでしたが、
明らかに元気が無くて、
あまり人と話そうともしないその方のことが、
彼は心配になるのです。

探偵に対して
「依頼者が母を心配しているというなら、
なぜ自分で様子を見にこないのか」
と疑問をぶつけ、
彼の調査は終わることになるのです。

また、セルヒオが
この施設に入居していた3ヶ月程度?の間には、
彼や他の入居者に自作の詩を
聞かせてくれた女性、ペティタが亡くなります。

非常に知的で、でもあたたかくて、
泣き言は一切いわないような、
凛とした素敵な方でした。 

「子供たちを育て上げたけれど、
ちっとも面会にはこない。
でも、それぞれ結婚して家庭もあるし、
まあ、仕方ないわね」 

そう話していた彼女は、
亡くなる前にホームの施設長に

「自分の葬儀の時には
この詩を読んで見送って欲しい」 

と自作の詩を託していました。

まだ彼女が元気だった頃に
セルヒオたちに即興で聞かせてくれた詩が
彼女の葬儀で読まれると、
ひときわ胸に響きました。

「まだ母親が健在であるなら
慈悲深い神に感謝しよう
長寿という聖なる喜びを
享受できる者は
多くないのだから

母親が健在なら大切にしよう
苦楽を乗り越えて
あなたを産んでくれた人だから
昼は働き 夜は子守り
優しい歌であなたを寝かせ
起きたら優しいキスをする

もし母親が天に召されて
親孝行できないなら
母親が埋まる冷たい地面に
思い出の花を供えよう
母の墓は聖地となろう
神聖な心のよりどころなのだから
魂が非常なトゲに
貫かれたら
母の墓を訪れ
癒しを乞おう」

セルヒオは任務を終えて
ホームを出ることができましたが、
その時もホームの入り口には
面会に来る家族もなく、
いつも出かける支度をして決まった時間に
ホームの入り口に立ち、
通行人たちに
「お願い、外に出して」
と声をかける女性が立っていて、
なんとも言えない気持ちでした。

ホーム内では入居者の方のお誕生会や
ホームの記念日などの催し物もあり、
セルヒオも楽しい時間を過ごすのですが、
ほとんどの毎日は、静かな時間が続きます。 

そこでの暮らしに慣れて
穏やかに過ごす人もいる反面、
毎日そこから出ずにくらす人たちの孤独も、
厳然としてそこにあるのです。

見終わって、温かい気持ちと、
やるせない気持ちが入り乱れました。

「映画館を出た後、親や祖父母に連絡したいと
思ってもらいたい。
そんな映画です。」
という監督の言葉通りの映画でした。


今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

*日曜日の午後、遠くでゴロゴロ言っていたと思ったら、
突然の雷雨。

大きな雹交じりの雨が降り、
雨で空気が白く見えました。

しばらく続いた雷雨の後は、
空には虹が。
(写真だとわかりにくいのですが)

最近はお天気が不安定なので、
気をつけたいですね。

*最近は近所で綺麗に百合を咲かせているのを
あちこちで見かけます(^^)

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