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日本画の技法で描かれるパン 酒井ゆみ子・日本画展「パンの旅・花の旅」

昨年吉祥寺の個展で
日本画家・酒井ゆみ子さんの描く
パンの絵に出会い、
とても心ひかれました。 

今年も個展をされるというご案内をいただき、
昨日伺ってきました。

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マスクに帽子をかぶって行ったのですが
しばらく作品を拝見していると
会場にいらした酒井さんが
「あのう、もしかして・・・」
と声をかけてくださいました。

嬉しいことに、
覚えていてくださったのです(^^)
酒井さんが描くパンたちは
金箔や銀箔、岩絵具を使うなど、
日本画の技法で描かれています。

だからこそ、
クロワッサンの、
何層にも浮き上がった皮もとても繊細で、
かじったら「かしゅ」と音を立てそう。

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焼きたての香りも漂ってきそうですし、
ハード系のパンの、
ちょっと歯ごたえのある
生地の感じも伝わってきます。

絵を見ていてパンが食べたくなるのです。

(写真のポストカードのクロワッサンの絵は
他のお客様がお買い求めになったそうで
本物の絵は拝見できませんでした) 

酒井さんがパンを書き始めたのは、
酒井さんの命を繋いでくれた
パンがあったから。 

若い頃、酒井さんが病気をされて
何も食べられなくなった時、
お友達が作ってお見舞いに持ってきてくれた
天然酵母のパンだけは、
食べることができたのだそうです。 

そうして元気になった時、
お礼にパンの絵を描いてお友達に送ったのが
酒井さんがパンを描き始める
きっかけになったのです。

「去年の個展で、
知人が作るパンにそっくりだ!と思って
酒井さんのパンのエピソードを書いて
パンの絵のポストカードを送ったら
とても喜んでくれました」
とお話すると、酒井さんも
とても喜んでくださいました。

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他にも、花や鳥も描いた作品もあるのですが、
見る角度によって背景の輝きと
そこに舞う桜の花びらの印象が変わる絵は
あちこち立ち位置を変えて
拝見しました。

また、秋の背景の中に佇む
美しい色合いの相思鳥の絵は
落ち着いた秋の色合いに
色鮮やかな相思鳥がとても映えました。

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(写真のポストカードの絵は今回は
出展されていませんでしたが、
これが相思鳥です。
少し羽を膨らませている様子)

この相思鳥、うぐいすによく似ているので、
昨年の個展の時にはてっきり
うぐいすだと思っていました。

でも、酒井さんと今回お話ししていて、
相思鳥のことを教えていただきました。

酒井さんは子供の頃、友達がいなくて、
相思鳥を飼っていたのだそうです。

ぴーちゃんと名前をつけて、
友達のように可愛がっていました。

でも、学校で友達ができると、
友達と遊ぶ方が楽しくなり、
ぴーちゃんのお世話を
しなくなってしまったのです。

そして、気が付いた時には
ぴーちゃんは亡くなっていました。

酒井さんは子供心にショックで
ひどいことをしてしまったと思い、
それからずっと、ぴーちゃんのことを
大切に思い続けているのだとか。 

だから、相思鳥をよく描かれているのですね。

ちなみにこの相思鳥、
つがいを分けてしまうと
お互いに鳴き交わすという
夫婦仲の良い鳥として知られ、
そこから「相思鳥」と名付けられたとも
言われています。

中国では儀式の時に
籠や箱から放鳥する鳥でもあるそうです。

(元々は中国の原産の鳥で、
現在は日本では特定外来生物に指定されており
飼育も禁止されています)

相手を思うとかく、相思鳥。

ピーちゃんが亡くなったように
相手を思うことを忘れてしまうと、
相手との関係が途切れたり、
相手にさびいしい思いをさせることもありますよね。

大切な人には思いをかけて
言葉をかけたり、連絡をとったりすること、
本当に大切ですよね。

酒井さんと、そんなお話もしてきました。

小規模な個展ではありますが、
一つ一つの作品をゆっくり拝見し、
酒井さんとお話もできて
とても楽しく嬉しいひとときでした。

酒井さんの個展は
本日10/17(日)が最終日です。
(11-17時まで)

もし今日吉祥寺に来られる予定の方がいらしたら
滅多にない機会ですので、ぜひどうぞ。

🥖酒井ゆみ子日本画展🥐
「パンの旅・花の旅」
(本日10/17(日)が最終日、11-17時まで)
@吉祥寺中道通り re-tail
(詳しい場所は下の写真をご覧ください)

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今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。 

*2〜5枚目の写真は
酒井さんのポストカードの写真を
使わせていただいています。

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