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冴えない毎日を生きる人にも、とんでもない力が。

昨日、2023年のアカデミー賞で7部門を受賞した映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」を見てきました。

やはりアカデミー賞受賞が大きかったのか、雨の土曜日のために
「映画でも見に行こう」
と思った人が多かったのか、そこそこ大きな映画館がほぼ満席でした。

英語タイトルそのままの
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
は中国語名では「媽的多重宇宙」。
(「多重宇宙」、なるほど!)

映画に出てくる「マルチ・バース」(多元宇宙)という概念も難しいのですが、「宇宙には私たちのいる宇宙以外に複数の別の宇宙が存在している」
ということです。

つまり、そのこのタイトルは
「すべてが複数の場所(別々の宇宙)で同時に起こっている」
ということであり、
「同じ人が別の宇宙では同時に別な人生を生きている」
ということなのです。

と言ってしまうと難しげになのですが、カンフー映画であり、アクション映画であり、SF映画であり、とんでもないコメディでもあり、家族の物語でもあり、本当にびっくりするくらい見所満載の映画でした。

ミシェル・ヨー演じる主人公のエヴリンは、中国人女性で、子供の頃は父に厳しく育てられました。

若い頃に恋人のウェイモンドとの仲を反対され、父に親子の縁を切られるようにして米国に移住して結婚し、コインランドリーを経営するようになったようです。

その後一人娘に恵まれて幸せに暮らしていたはず‥でしたが、中年になった彼女は今にも神経の糸が切れそうな毎日。

コインランドリーでは毎日機械のトラブルやお客様とのやりとりにてんてこ舞いで、落ち着く暇もなく働いているのに、経営はあまり上手くいっていない様子。

人の良い夫は彼女の役に立とうとするものの、逆に彼女の足手まといになるようなことをしてしまい、夫婦仲も実は危機的。

娘のジョイとの関係も良くなく、娘に「白人のガールフレンド」がいることも受け入れがたく感じていて、娘も母との関係に悩み、反発しています。

中国から訪ねてきた父とは過去の因縁もあり、父の前では自分が「恥ずかしい」と思うことは(娘の彼女のことも含めて)知られたくもない。

介護が必要になっている父には、気にいられるようなお世話もしたい。

そして、実は店の経費処理にも問題があり、頭の痛いことばかり。

ここまではファミリー映画のようですが、彼女が国税局で絶体絶命の危機に見舞われる時から、この映画はいきなりSF映画・アクション映画に変わるのです。

この先があまりにとんでもない展開になり、あまりに壮大になるので詳細は控えますが、主人公のエヴリンは様々な宇宙で、様々な姿で輝いた人生を生きていることがわかります。

あるところでは、カンフー映画のスター女優として。
高級レストランでパフォーマンスで客を湧かせるシェフとして。
中国の京劇のスター俳優として。

いずれも、あちこちガタがきたコインランドリーで毎日なんとか持ちこたえている中年オーナーとは違っています。

でも、考えてみれば、
「彼女の中にはどんな世界でも様々な形で輝ける力がある」
ということ。

コインランドリーで毎日を送るエヴリンだって、一つ一つは地味ではあるけれどとんでもない能力を発してなんとか毎日の家族の生活を回しているのです。

まるで次々とカンフーの技を繰り出して家族を守るように。

どんな人にも、素晴らしい力がある。

そして、その力を対立したり、他者を痛めつけるために使うのではなく、他者を思いやり、支えるために使う。

親子や夫婦の対立だけでなく、世界の対立やカオスさえも、それによって救われるのではないか。

次々に繰り出されるアクションや笑い、じんわりくる言葉とともに感じたのはこんな大きなメッセージでした。

わたしが励まされたのは、
「毎日地味な生活を必死に行きている人にも、とんでもない力があるのだ。
そして、そうは見えないかもしれないけれど、いつもその力を最大限に生かして戦っているのだ」
ということ。

そして、
「自分が理解できないと思う相手にもそれぞれの物語があり、それを理解しようとすること、思いやりを持つことでお互いに良い関係を持てるのではないか」
ということ。

また、そうすることで、本当に困った時に周囲の方に思わぬ形で助けてもらうこともあるのです。

「違う宇宙」とまではいかなくても、人生の中には様々な選択肢があり、
「もしああしていたら」
と思うこともあります。

でも、映画スターにならなくても、スポットライトを浴びていなくても、今自分の力を生かして精一杯に生きることがわたしの人生。

だから、今のこの人生を精一杯生きていこう。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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