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唖然とし頭を抱え立ち向かう『破天荒フェニックス』田中修治

まさに『破天荒』な日々だったが、ここまで、資金ショートの波に襲われる物語とは思わなかった。


倒産ほぼ同然のオンデーズを著者でもある田中さんが買収したところから物語が始まる。メガネ店という店舗をもっいてることに可能性を感じて、というところが理由と書かれていたが、いかんせん、オーナーになってすぐに資金ショートの波に見舞われそうになる。


もう各章で何かが起きる。民事再生だけは逃れようと必死に金策に走る田中さんと、CFOとして田中さんに引っ張り込まれた奥野さん。ちゃらちゃらした若手の社長の風貌からか、改革に疑義を呈する旧来の社員たち。銀行団は幾度となく返済を迫り続ける。


ピンチのたびに、なんとか乗り越えていく様を見続ける。財務状況は最悪でも、それでも、オンデーズは従業員の意識改革をはじめ、新店舗での半額セール、オリジナル製品の拡大、そして海外へと打って出る戦略が次々とあたっていく。まあ、そのたびに『資金ショート』の文字が浮かんできてしまうのだが。


とにかく、楽観的な思考はさっぱりなく、飛び道具もない。ほとんど社長の直感で動き、それを周りが何とか形にしていって、成功に結び付けていく。そういった手法だった。


実は、オリジナルのアイデアがないことには気付かさせられる。業界最大手として、名前があがる『ジェイムズ』。ひらたく言えば、『ジンズ』だが、格安でのメガネ販売、非球面レンズ0円などは、こちらのほうが規模が大きい。ただ、どうしてオンデーズが成功したのか。


目先を変え、市場の波に恐れず立ち向かい、必死になって、従業員に染み付いた負け犬根性を勝てる狼たちに仕立て上げていった。
具体的な経営については、『大きな嘘の木の下で』に書かれている。
それにしても、”嘘のような本当の話”というしかないような日々が描かれている。


よくストレスで倒れなかったな、と。いや、本当は何度か倒れたのかもしれない。
きっと田中さんの破天荒さに飲まれるように、従業員は必死の努力で、結果に結びつけていったのだと思う。
正直にいうと、かっこいいのだけど、そのかっこよさがちょっと剥がれるのが『大きな嘘の木の下で』だ。


さて、さっとホームページを見てみたら、今の所在地は沖縄になっている。・・・ん?
まあ、日本の本社は天王洲のようなので・・・。
日本141店舗、海外は11か国203店舗と、海外店舗の数のほうが日本より上回っている。
特徴的なのは東南アジアをかたっばしから押さえている中で、中国への出店はない。代わりに、中国ではJINSが160店舗を展開している。
そして、アメリカにも手を出さない一方で、ヨーロッパへと向かおうとしている。
世界のとり方の発想が何か違う。ヨーロッパをとるというのは、デザインがとても重要になりそうな気がする。


愛用している999.9にトムフォード。家用はZoffだったのが、新たにオンデーズを加えようか。
店舗を探す。・・・あれ?これだけ海外にも展開しているのに、丸の内(私の仕事場)には店がない!
どんな戦略が今、練られているのか、その秘密が明かされる日を待ちたい。

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