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【中学受験は何のためにするの?】読書レビュー「中学受験の親たちへ」おおたとしまさ氏&安波京子氏

先日ふと本屋に寄ったら、赤い表紙で一際目をひく本がありました。

子供の「最高」を引き出すルール「「中学受験の親たちへ」

教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏と算数教育家の安波京子氏の共著。おおた氏は以前何かの記事を読んで以来興味を持ち、安波氏はよく書店で見かけるのですが、両者の著書を読んだことがなかったので、この機会にちょっと読んでみよう!と思い即購入。

ということで、今回はこちらの本の感想について、私なりの論点で書きたいと思います。

1.中学受験は何のためにするのか?

「中学受験は何のためにするの?」

この問いに対して、中学受験をスタートするタイミングで正直なところ明確な解を持つケースの方が少ないと思います。というかほぼ無知(現在の教育環境)でスタートするケースの方が昨今多いように感じます。

・そりゃ学力向上はあった方がいいし(教育投資)

・機会や環境も違うし(環境差別化論)

・そうは言っても学歴は重要だもんね(学歴も結果大事)

くらいの感覚じゃないでしょうか。

一部の特殊な環境のご家庭の場合(例えば医者家系)だと、医者になるために〇〇中から●●大学医学部を目指して・・・という明確なビジョンを持っていると思いますが、大多数はそうじゃありません。

だから、「なぜ中学受験をするのか?」は答えにくい問いで、普通のご家庭は、中学受験をスタートするにあたり、具体的な目標が前提になっていないケースというのがほとんどなんです。

僕も現役で講師を務めていた時代、全国統一小学生テストの受験後面談で数百人の保護者と面談しましたが、

「やらないよりは、できる環境と機会があるならやらせたい」

「学校の勉強以外もやってきて、結構うちの子勉強できる?どこまでできるか試してみたい」

というお話からのスタートがほとんどでした。

それに対して塾側は

「この成績なら〇〇目指せますよ!一緒にAA中学目指しましょう!」
「この成績でも十分間に合いますよ!例えばこういう生徒が・・・」
「この成績で公立に行ったら、高校受験で大学に行ける高校に進学できませんよ、、、でも中学受験なら選択肢が・・・」

と全ての成績に対応する勧誘トークで保護者をその気にさせるわけです。これは塾側に罪はなく、ある種の営業トークとして、どの業界にも存在しますよね。ダイエットとか美容系も近いかもしれません。

また、このように中学受験は他の受験と異なり、子ども主導ではなく、親主導であることもほぼ例外なく当てはまります。

逆に、子供がやりたいって言い出して・・・という生徒はめちゃくちゃレア。100人いたら数人レベル。特にスタートする時期にもよりますが、小1・小2なんて絶対ありえない。

初めて塾に来て、小2の普通の家庭の子が

「僕は中学受験するんだ!だから塾に行きたい!」

とか言ってたら、塾講師は多分トムとジェリーのトムみたいに目ん玉飛び出るくらい驚きます。

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小4くらいでも、自分で受験したいというケースはほとんどないと思います。言われるがままにテストをうけ、言われるがままに体験授業をうけ、なんか楽しいから「やってみる!」と(言うことで親が喜ぶのは感覚的に子供がわかっている)言い、通塾がスタートする、という流れが中学受験スタートのテンプレだと思います。

もっと言うと、学歴至上主義!絶対難関中!公立なんてク●喰らえ!とかいう、極端な思想の保護者ももう化石レベルでいないと思います。

現在の環境だと中学受験ができるご家庭は、比較的裕福で一定の教育レベルを受け、それなりの社会でビジネスを経験されているはずなので、いきなり教育になるとそんなイキリたって批判するような論調にもなりにくい。

なんでこんなことを書くのかというと、この本、冒頭で「中学受験というものは・・・」について書いてます。

第1章は「学歴が欲しいだけなら中学受験はやめなさい」です。

ここでは

迷信1:受験者数が増えたため中学受験が加熱している

迷信2:中高一貫校の先取り教育は大学受験に有利

迷信3:中学受験をするのは、良い大学に入るため

迷信4:公立高校復権で、もはた中学受験をする意味はない

迷信5:中学受験勉強は無味乾燥な知識の詰め込みである

という5節について書かれています。

書籍だからしょうがないんでしょうけど、正直

「迷信の内容、煽りすぎじゃない?」

と言うのがぼくの所感です。

同じ中学受験する親として、別にそんなことを信じてないし。

それをあたかも考えて受験させようとしてるのは間違いですよ〜と言いたいのか?とちょっとモヤりました。

また内容として

■たかだか中学受験で人生が決まるはずがありません。座れる椅子に座れればいいくらいの気持ちで中学受験を捉え直す必要があるのではないでしょうか。本書P19より

どれもこれもおっしゃる通り!の内容ではあるんですけど、「そう思えない親の感情にも目を向けてくれ!」と言うのが僕の率直な感想です。

でもこれって、なぜ中学受験をするのか?という明確な目的がなく、行きたい学校も決まってないからこそ生じる感想ですね。

中学受験こそ、スタートする前に志望校を決めておく、それこそ偏差値を見ずに、自分で行ってみたい学校を選ばせる、なんていう準備が重要かもしれません。

なんというか、中学受験の選択肢から、受験勉強、志望校選定まで塾に主導権握られっぱなしじゃない?

でもこれはしょうがないことで、この業界、ほんと塾の影響力が大きすぎるんです。


2.通塾は必要か?

本書では、コロナ禍によって「通塾の価値」が再度見直されると言う話題が書かれていました。僕自身もそこは課題意識を持っていて、塾ビジネス事態のあり方が、ここ20年ほぼ変わっていない。

業界でいう「イノベーター」の出現がない市場なんです。サピックスの牙城は全然崩れないし、早稲アカのNNで他塾本科生の合格者数をカウントする方法も全く変わらない。

だから既存の大手が寡占的にシェアを分配し、優秀生獲得にしのぎを削るわけです。結果、「その子のための中学受験」という観点よりも、

ビジネスの競争優位性のためのブランド校合格実績向上のための中学受験

に陥っていることに塾も家庭も気づいていないような感じがします。

そういう意味で、僕は最近「通塾ってこんな負担なことをずっと3年続ける意味は果たして本当にあるのだろうか?」という疑問を常に抱いています。

確かに目標に向かって競争環境を作るのは重要、でも受験は他人との競争だけでやるものではなく、自分とどう向き合うか?がとても重要な観点です。人にばかり目を向けてしまうと、自分との向き合いが不足するので、「他人との比較優劣」や「嫉妬感情」などを生みます。

さらに通塾+膨大な宿題量、これは子どもだけではなく家庭でも大きな負担になります。特に中学受験を経験していない保護者の場合、子どもと一緒に勉強することが必須です。そうなると家事・育児・中学受験と、ただでさえ忙しいワンオペ家事に、輪をかけるように負担がのしかかってくるのです。

また教えるだけではなく教材管理、スケジュール管理、todo管理など、子供の伴走者としての役割も必要です。これは全てできるのは多分スーパーお母さんです。佐藤ママが有名ですけど、あれ絶対普通じゃないですから。(批判じゃなくてすごいポジティブな方の意味で)

つまり、通塾って本来「塾にお任せすれば、私の負担はないのよね」というニーズを満たしてくれることを期待してると思いますが、ところがどっこい、負担は減るばかりか増える一方。

通塾そのものは、子どもだけではなく家庭の負担も増大するものであるという認識が必要なんです。

その上で、中学受験をどうすべきか?というのが重要です。

正直、偏差値50の学校がいい!と思うなら、大手塾のカリキュラムは全く不要。いますぐ転塾して地元の比較的緩い塾に行くべきです。ただし、今教わっている先生が大好きで、その先生に教わりたい!と思うなら話は別。そういう先生との出会いは奇跡ですから、その先生に教われる限りはその塾に通いましょう。

また塾に通わなくてもいい!という論調もあります。ひとまず自学で自分のペースで進めるという方法です。あとは苦手な単元や科目だけは家庭教師に依頼する、この方法も1つの選択肢です。

ただ、家庭教師はほんと相性が合うか合わないかが重要で、こんな人に教わりたい!というのがぴたりとハマるペルソナ属性は超レアケース。で、そういう人はやっぱり人気があるので超高額とかになる。

あと批判覚悟で書きますけど、1消費者の感情として正直、見た目がいけてない人は、僕も教わりたくない。なんていうか勉強しかできないの?みたいな家庭教師は正直嫌なんですよね。わかりますかね?この感覚。

ちなみに、上記のような想いがあって、個人的には時間と費用を抑えて、効果の良い教育サービスってなんだろう?というのを模索中です。

授業は動画でも結構いけるんじゃないかな?というのがここ最近の感覚で、もうちょっとエンタメ性を強くできれば、見ていて楽しい・何度も見たいという動画教材なら、授業よりもコスパがいい。

あとは個別具体的なアドバイスですが、これも集団の中で匿名で質問で解決できそうです。そのサービスで結構質問が来ますが、似たような環境の方も多くいらっしゃり、なるほど、他の家もそうなのね、と安心・共感できる情報を得られます。

またより個別貸したい場合は、ズームカウンセリングで相談する。そのた学習進捗はクラウドツールを使って、いつでも確認可能にする。など中学受験の受験サービスは、テクノロジーを使えばもっと楽になるような気がしています。

直近で、そういうサロンを作ろうと現在DMM.オンラインサロンで内容を検討中です。ご興味のある方はぜひご入会お待ちしています。一応、内容としては

■youtubeで公開してきた授業解説動画をこちらに移管します。

■予習シリーズ各回の指導ポイントの説明動画(月1回)

■市販中学受験教材や市販中学受験本のレビュー

■現役の塾の講師からの「塾では言いにくいこと」をズバリ話してもらいます。

■オンライン算数補講(月1回程度) 小4・小5から解ける入試問題を中心に扱います。

■塾の校舎別合格実績集計(スプレッドシート活用)

■学習管理ツールの提供(都度)

■お悩み相談掲示板(学年別、属性別)

■過去問添削や宿題添削サービス(別途オプション予定)

■オリジナル教材提供(別途オプション予定)

■オンライン塾(別途オプション予定) 授業の生配信+宿題チェック・月1の情報共有ズーム(30分程度)

■個別カウンセリング(別途コース・人数限定予定)

とかを検討して、基本月額980円とかでやろうと思います。

(もしご意見あればTwitterのDMいただけると参考にさせていただきます)

基本コンセプトは、塾を補完しつつも、塾なく自分で勉強できる負担がすくなくかつ成果を最大化できる受験サロンのようになったら良いなと思っています。

3.親としてどうあるべきか

さて、中学受験は親が9割とかいう格言がありますが、これも重たい話ですよね。言葉尻だけ見ると「親が悪かったら中学受験できんのかい!」と勝手に憤りを覚えます。

これは親としての人間の良し悪しというより、親も人間。怒る時もあれば、悲しくなる時もある、理不尽な時もあるけど、それも全部ひっくるめて家族みんなで頑張ろう!という連携の重要さだと思います。

どちらか片方がけが一生懸命になってもだめ、できれば両親がそれぞれの役割を果たすということがベスト。うちは普段のことは全て妻がやりますが、テストの送迎は僕。算数のフォローも僕の役割です。

ちなみに夫婦仲は冷め切ったコーヒーのような感じです。どうでも良いですけど。

僕はまだ親としての経験は長くないし、めちゃくちゃ未熟。息子と一緒に服を脱ぎ散らかして妻に怒られるし、できることと言ったら「中学受験の算数をめちゃくちゃわかりやすく解説すること」とお金を普通の人以上に稼ぐことくらい。(妻には仕事ができれば良いってもんじゃないと叱られます)

その役割を果たして、背中を見せるのが親の役割。そのくらい楽に考えて良いんじゃないかな。僕も子どもの頃、母親がぐちぐち言ったり、理不尽に暴力ふるったっりされましたが、母親への感謝は尽きません。親父も同様です。Twitterに親父のくそエピソード書きましたけど、それでも別に嫌いじゃないし、憎んでないんです。

だから、中学受験する親だからこうあるべき!とか、そういうのもうやめません?別に優秀じゃなくても良いんですよ。その子にあった受験ができれば。だから、今の環境に疑問を持つことからスタートしてみてください。

■中学受験、なんのためにするんだろう?

■果たしてこんな苦しい通塾って本当に必要?

■親も楽にいていい。肩の力を抜こう。

そんな形で自分の方向性を定めていこうと考えている方は、この本を読んでみると良いかもしれません。

塾が全てではなく、家庭主導の中学受験、そしてお金がなくても中学受験のチャンスが開かれていく未来を僕は願ってやみません。

(塾ビジネスの変革もWさんあたりには期待してます)


以上!長々とお読みいただきありがとうございました!



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