「生徒が練習しない!」への対応、その②SFAを応用する

こんにちは、辰巳です。

前回に引き続き、練習しない生徒さんとの関わりについて、心理学的にアプローチしてゆきます。

前回は、MRIモデルという方法の応用をご紹介しました。MRIモデルを実践するには、リフレーミング「本来の解決方法とは真逆のアプローチ」が必要でしたよね。

先生方にとっては、リフレーミングの方法を見つける事が課題なわけですが、これが難しく、良い方法が浮かばない、、

という時には、こんな方法もあります♪


②SFAを応用する


また聞き慣れないアルファベットですね(^_^;)

SFAは、Solution Focused Approach の略で、解決志向と呼ばれます。

MRIモデルでは「問題」にフォーカスしていたのに対して、SFAは「解決」にフォーカスしている点が特徴です。

、、、と言われても、ピンと来ないかもしれませんので、具体的にご説明します。

例えば、練習しない生徒さんに対して、

「練習していて、嬉しい気持ちになった事とか、うまくいった事はある?」

などと質問します。

練習している限り、些細な事であっても「ヨシ!」と思う瞬間は、きっと誰にもあると思いますので、まずはそれを思い出してもらいます。

そして生徒さんが、例えば、

「手首を下げないようにしたら上手く弾けた」

と答えたとしましょう。そこで先生は、

「手首を下げなかったら上手く弾けたのね、良かったよねぇ」

などと答えます。

コレをコンプリメントと言います。

コンプリメントとは、ねぎらいという意味で、相手が上手く出来た事をきちんと言葉で認めてあげる事です。

生徒さん自身は、わざわざ思い出さなければ忘れていたような些細な「うまくいった事」を思い出し言葉にする事で、「うまくいった事」に意識が向くようになります。

そこへ先生からのコンプリメントがあると、その意識が強化されるのです。

「そうだ、あの時うまくいったんだ」

と、埋もれていた小さな経験が立体的に見え始めます。そして、自分が出来る事や、自分の良い所にどんどん気付き始めます。


コンプリメントでは、褒めるなどの「評価」はしないのがポイントです。

このプロセスの目的は、生徒本人が自分で自分の良い経験を思い出し、その時の気持ちを実感してもらう事です(自分軸の基準)。あまり褒められてしまうと、褒められる事が目的になって本来の目的とすり替わってしまう可能性があります(先生軸の基準)。

このため、先生は「評価」ではなく「一緒に喜んであげる」というスタンスが良いでしょう。

このように、埋もれてしまっている「うまくいった事」や「嬉しかった事」を見付けさせてコンプリメントする、

というプロセスを繰り返すうちに、

生徒さんは以前よりも前向きに変化してくれる事でしょう。

そこですかさず、次のステップへ進みます。

先生は、こう質問します。

「〇〇ちゃんは、どんな風になったら、ピアノ習ってて良かったなって思う?」

これは、ウェルホームド•ゴール(現実的な目標設定)と呼ばれます。

コンプリメントを何度か経験している生徒さんであれば、この質問に向き合える下地は出来ているでしょう。そして何かしらの答えを考えてくれる事が期待できます。


さらに、コンプリメントとウェルホームド•ゴールを繰り返し、生徒さんに、前向きな態度や自信が感じられるようになってきたら、

すかさず次のステップへ進みましょう。

先生は生徒さんに、こう質問します。

「もし、ピアノが上手くなってどんな願いでも叶うなら、どんな風になりたい?」

これはミラクル•クエスチョンと言います。もし奇跡(ミラクル)が起きるなら、どうなりたいですか?という語源です。

生徒さんの気持ちが前向きで、自信が持てるようになってきている状態ならば、ミラクル•クエスチョンに対してもきっと色々な考えや目標が聞けるのではないでしょうか(^^)

「あの曲にチャレンジしたい!」

「家族の誕生日に演奏してあげたい!」

「コンクールに出てみる!」

「先生になりたい!」

「プロになりたい!」

などなど、そんな風に言ってくれるかもしれません。

ここまで来れば、目標に向かって自発的に頑張れるようになっているはずです。練習しなくて困ったなぁ、の生徒さんはもうそこにはいません。


、、、というのが、SFAのプロセスです。

お気付きかもしれませんが、

SFAのプロセスでは、コンプリメントでも、ウェルホームド•ゴールでも、ミラクル•クエスチョンでも、

その内容はすべて生徒本人の口から出たものです。

「出来た!」と思う事も「目標設定」も、先生からは何のアドバイスもしていません。

先生は、質問係りです。それ以外の発言は、

「出来たんだね!」

「それいいね!」

だけでオッケーかもしれません( *´艸`)


ご褒美などで頑張らせたり、発表会などあらかじめ決められた目標や、先生が決めた目標で練習させる事は、手っ取り早いかもしれません。

それに対して、SFAによる解決は、すべて生徒本人から発信される内容を待つぶん、時間はかかるでしょう。

しかし、かけた時間は、生徒が得られる気持ちの安定感と比例すると思います。

自分の自信や気持ちに基づいて自分で決めた、「自分だけの目標」は、他者に決められた物よりも、地に足のついた物なのです。さらにまわりも気にならなくなります。


1つ注意点があります。


SFAのプロセスが短期間で順調に進み過ぎた生徒さん(急にやる気が出た子)は、設定した目標や自分の理想に到達しようと焦ったり、なかなか到達出来ないと更に焦って落ち込んだりしてしまう可能性があります。急激な変化には落差のリスクが予想出来ます。

コレを防ぐために、

この子はちょっと急激にやる気出すぎだな、

と感じた時は、このタイミングでMRIモデルを投入します。

やる気にさせておいて、「放牧」するのです。

これで、スピード過多な「やる気」に一時的にブレーキをかける事が出来ます。

自信を育てたり、地に足のついた目標を決めるには、ゆるやかなスピードで成長する方が望ましいからです。

やる気にさせたり、放牧したり、先生はひそかに手綱を握りますが、露骨に態度を変える「ツンデレ」にならないように。

手綱は握りながらもあくまで一貫した態度で接してあげてくださいね( *´艸`)



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プロセスをご覧いただきお分かりかと思いますが、SFAは、その名の通り、常に「解決」を志向した質問を投げかけます。

「練習しない」という、そもそもの問題点には全く触れていません。

なるほど、確かに解決志向ですよね♪

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こういった言葉のかけ方や質問は、慣れないうちは先生も難しいかもしれません。

ウッカリ、勝手に目標を押し付けてしまいそうになるかもしれません。

でも、そこはちょっと我慢して。

その生徒が自分で目標を見つけられるように隣で待っていてあげてくださいね(^^)

慣れてくると、コンプリメントも、質問も、自然とレッスンの中で普通に出来るようになりますから、興味のある先生は、是非、チャレンジしてみてください。

まずは、コンプリメントから♪

下地が出来ていない状態でミラクル•クエスチョンを投げかけてしまっても、生徒さんが困惑するか、全く地に足のつかない回答が返ってくるでしょうから、プロセスはきちんと踏む事をオススメします。

、、、こういう事を、ロールプレイングで先生同士で実践練習出来る勉強会を開けたらなと思うのですが、、

コロナが落ち着いてからですかねぇ^^;


お読みくださってありがとうございました♪




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