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多様な動作は多様な感覚刺激から生まれる


動作の多様性とは

トレーニングをして身体を変えていく過程で最も重視したい要素の一つが「動作の多様性」です。
何か特定の動作を行ったり、課題に対処する際に「沢山の戦略を持っていること」効率よく、楽に、怪我のリスクを下げて身体を動かすために重要なのです。

動作の多様性には2つの考え方があります

マクロな多様性

1つはマクロな意味での多様性です。これは見てわかるようなレベルで沢山の戦略を持っているという意味です。

歩く、走る、跳ぶ、持ち上げる、引っ張る、押すなど一言で表せる動作にも、色々なやり方が存在しますよね。
同じような課題を与えられてもその場面や、状況、それを行う環境、自分のコンディションなどに応じて最適解が変化するはずです。

様々な「やり方」を知っていて、実行できる準備があればその時々に合わせて、効率的で、成功率の高く、リスクの低い手段を選ぶことができます。

1つの得意技を磨くことも大切ですが、ケースバイケースで戦略を使い分ける能力もまた大切なのです。

ミクロな多様性

もう1つはミクロな意味での多様性です。
こちらは見た目では分からないレベルでの戦略の使い分けです。

どういうことかと言うと、同じ動作を繰り返し実施した時に順番に筋肉の線維が使われてくれる状態を指します。

筋線維はある動作をする時すべてが一気に使われるのではなく、全体の何割かがまず使われ、次はその働いた筋肉は休んで、まだフレッシュな筋線維が使われることが繰り返されています。

この毎回違う筋線維が使われていくことをミクロな多様性と表現します、

人によってはこのような筋線維の使い方ではなく、同じような筋線維が使われ続けてしまうといった「多様性の欠如」が見られ、こういった方は痛みなどの問題を抱えやすいとされています。

知覚行為循環

動作の多様性についてイメージができたら、どうやってその多様性を身につけていくかを考えたいと思います。

ここで重要になるワードが「知覚行為循環」です。

感覚が行為を生み、行為がまた感覚を生むという意味で私は捉えています。

さまざまな感覚情報がインプットされ、脳の中で統合、情報処理されます。
それは「行為、動作、感情、疲労、痛み、症状」としてアウトプットされるという流れがあり、これによってまた新しい感覚情報のインプットが生まれます。

このように、知覚と行為は循環しているのです。

これと動作の多様性がどうつながるのか、話を進めます。

単調な刺激からは単調な動作しか生まれない

フラットで、凹凸のない広々とした地面を歩くことを想像してください。
一歩一歩、足を踏み出しても均一の刺激しかなく、毎回同じ足の踏み出しでも大きな問題なく歩くことができます。

刺激が単調なので、動作も単調になっている状態です。

単調な動作の繰り返し=多様性が乏しいということです。

ここは最初に説明した内容(動作の多様性)と重複しますが、単調な刺激が単調な動作を生み、それによって問題が起きる過程について再び解説します。

慢性的なストレスによる問題

単調な動作に慣れてしまい、これが続くと局所的なダメージが蓄積してくるリスクが高まります
ダメージの蓄積よりも回復の方が優位な状態であれば問題はありませんが、少しでもダメージの蓄積の方が優位な状態だといつか組織の耐性をダメージが上回り、これによって怪我や痛みといった症状が引き起こされます。

急性的なストレスによる問題

また、単調な動作に慣れ戦略が乏しい状態だと、たまに来るイレギュラーへの対応が下手になります。
その場面に応じた最適な動作をとることができず、失敗したり、余計な力を使ったり、場合によっては怪我をしてしまうかもしれません。

多様な刺激を求めて

我々の生活を改めて見返してみると、便利になった一方で運動と言う意味では世界がどんどん単調なものになっていっていると感じます。

昔は草や木の根、石、岩などで起伏に富んだ地面の上を歩いていたはずですが、今はアスファルトで整備された均一な地面を歩く時間の方が圧倒的に長くなっていると思います。

歩くことは代表的な例ではありますが、見るものが立体的なものから平面的なものになったり、同じような味がするよう整えられた食材や食品、決まった方向から聞こえてくる音、決まった方向から目に入ってくる光なども「単調な刺激」であると言えます。

感覚的にどんどん貧しくなっている状態です。

多様な刺激を得るために手っ取り早い手段が「自然に身を置く」ことですね。
山を登ったりすると、地面はランダムで一歩一歩足の置き方を考えさせられるし、実際に足を置いてみたら思っていたよりそこが不安定であったりもして、動作を大きく修正しないといけないかもしれません。

単調な地面であれば、自分の快適な足幅やリズムで踏み出すことができますが、山に入ったら、自然側が提供する環境に合わせて自分の動きをいちいち変えないと進めません。

また、木々などの立体的なものがランダムにあることで道ができ、鳥や小動物の出す、様々な方向からの音に敏感になっていくことがわかります。

とはいえ、気軽に山に入って生活ができる環境の人ばかりではありません。
効率よく多様な感覚を得て、多様な動作を作る準備はジムでも十分できると思います。

ジムでできること

ここからは実際に私がパーソナルトレーニングを行う上で大切にしている要素についてまとめます。
色々な切り口でトレーニングメニューを組み立てることができますが、今回解説している感覚と動作の多様性という考え方であれば、エクササイズを2つに分類することができます。

環境と交流する

まず環境(その人の身体以外の要素)と、関りを持ちながら行うエクササイズをについてです。

眼を使って行わないといけない物であったり、反射の要素がある物であったりと考えると理解しやすいかもしれません。

どこかに向かってジャンプする
飛んでくるものをキャッチする
不安定な足元の上で動作をする
不安定な何かを持って動作する

こういった環境や課題を設定することで、様々な感覚をフルに活用し自分の身体以外に意識を向けて動作を行う必要性が生まれます。
つまり、課題や環境によって感覚の入力が増え、それが動作を引き出してくれるのです。

できるだけ多くのパターンで環境や課題を準備できれば、その分入力できる感覚も増え、引き出せる動作も増えてくれます。

環境と課題を設定することでジムの中でも多様な感覚、多様な動作を作ることに貢献ができるということです。

内観から始める

とはいえ、闇雲に色々な動作をとにかくたくさん行えばよいという訳ではありません。

単調な動作に慣れている状態、単調な動作しか持っていない状態で、複雑な環境や課題を与えられても対処できずに、うまく動作を引き出せない可能性があります。
蓄積するダメージが加速したり、場合によってはそれがきっかけで痛みとなってしまう場合もあるかもしれません。

その為に必要なのが、自分の身体との交流です。

一つ一つの関節がうまく動かせることを確認したり、どの位の可動範囲であるか自らに問いかけたりしながら行うようなエクササイズです。

一般的に行われる「ストレッチ」「エクササイズ」「筋トレ」はこちらの成分に近いものがあると感じます。

逆に言えば一般的な従来ジムで行われていたトレーニングでは、「環境との交流」は作りにくいということです。

環境との交流をしていくことは説明をした通りとても大切です。
しかし、この内観をとても丁寧に行うことで、その後の環境との交流を目的としたエクササイズの質が驚くほど高まると最近は特に感じています。

ここ1年でセッションの内容が大きくブラッシュアップされたのはこの内観についてで、2024年はこの分野をさらに掘り下げて学んでいきたいと考えています。

まとめ

多様な動作を身につける重要性について解説しました。

自然の中に身を置いて活動することが効果的ですが、そうでなくてもジムで環境と交流するようなトレーニングを行ったり、その前段階として内観を丁寧に行うようなエクササイズを行うことで、多様な動作を身につけていくことができます。

これによって、生活が楽になったり、痛みが減ったり、余計な筋肉の緊張が減ることでボディラインが引き締まったり、脚のねじれなどのアライメントの問題が改善したりといった効果まで期待することができるのです。

恵比寿駅徒歩5分のパーソナルジムでトレーナーをしています。
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恵比寿でパーソナルトレーナーをしています。 ダイエットやボディメイクに興味のある方はお声かけ下さい。