東大合格するために必要なこと【合格体験記】

先日、元お笑いタレント中田敦彦のYouTube大学を視聴しまして、自分が兼ねてよりやりたいと思っていた「教育をアップデートしたい」という気持ちが刺激されまして、この投稿を執筆しています。

私は東京大学理科I類に現役で合格し、その後、色々な経緯を経て東京大学医学部を卒業しています。

恐らく自分は、朝から晩まで勉強漬けの日々、といった世間のイメージからはだいぶずれている受験期を過ごしてきたと思っていて、同時に「勉強」のあり方についてもずっと悩みながら日々を過ごしていました。

その悩みは既に「今の教育はもっと現代社会の実情を反映したものにアップデートしなければならない」という問題意識へと昇華されていたりしますが、とりあえずその第一歩として、自分の東大合格までの道筋について振り返りたいと思います。

もう10年以上過去のもののため、情報が古いところも多々あるとは思いますが、参考になるところは大いにあると思います。また、更新できるところについては随時アップデートしていきたいと思います。

東大受験モードにスイッチを切り替えて最初に行ったこと

私は私立の中高一貫校に通っていて、受験は中学受験と大学受験のみを経験しています。中学受験のときは小学6年生の夏頃から塾へ通っていましたが、大学受験については塾は模試の時にしか利用せず、普段からは利用していませんでした。ただ、中学・高校はいわゆる進学校と呼ばれるもので、東大へも毎年30名弱(一学年の10%)ほどの合格者をそこそこ排出していました。

中学入学後の初めての定期試験後の親と揃っての二者面談にて、「うちの学校でずっと上位30人に入っていれば、およそどこでも好きな大学へ進学できますよ」と伝えられたのを今でも覚えているのですが、今振り返るとまさに正しい言葉だったと思います。私の最初の定期試験の成績は全学年中26位でした。

私が東大受験を初めて意識し始めたのは高校二年生の春〜夏にかけての時期だったと思います。そのくらいから先生たちも、東大受験を目指す先輩たちの高二の時の様子などについて共有し始めていましたし、ちょうどその頃に受験を見据えたコース分けなども始まっていました。東大受験コースは文系・理系別で80人くらいいて、結局合格率は30%くらいだったと思います。

私が初めて東大を意識したのは高二の夏頃でしたが、本気で東大受験モードに切り替わったのは高三の4月下旬でした。私は運動部に所属しており、運動についてはからっきしだったので主に応援要員でしたが、インターハイへの選抜に敗れ、部活を引退してから本格的にスタートした印象があります。今もそうですが、同時に複数のことをやる器用さは持ち合わせていなく、一つのことに集中して一つずつ一気に仕上げていくタイプだと思います。

東大受験モードに切り替えてまずやったこと、一番大切だと今でも思うことは、戦略・計画を立てることです。最後までの綿密な計画でなくてもいいので、「とりあえずこの二ヶ月でリードαを三周終わらせる」ということを目標において物理・化学の仕上げに入りました。

私は誰が見ても明らかなほどに理系特化タイプでしたし、学校では理一合格を推奨していて、そのため理系選択科目は物理と化学のみでした。(同年受験した慶応入試では数学・物理・化学全て満点でした)

また、目標の期日や分量については数字で決めることが大切です。「できるだけはやくとりあえず頑張る」のような曖昧な目標では、ずるずると先延ばしになってしまうリスクなどがありますよね。

夏明けに大きな模試があることがわかっていたため、それに余裕を持って間に合わせられるようにと「二ヶ月」という期限を設け、その中でギリギリできる範囲というところで「物・化の完成」という目標を立てました。

結局、目標達成するまでものすごい集中力を発揮して、リードαを三周した上で、物理重要問題集および化学重要問題集(リードαの次にこなすべきとされている問題集)まで2周終わらせて、「物・化の完成」を完了してしましました。

物・化について言えるのは、リードαはとても優秀な問題集(兼参考書)であり、これだけで十分ということです。その後、推奨されていた重要問題集も一通りやり終えましたが、自分にとっては「自分の実力が十分だという自信をつける」ための役にしかたちませんでした。夏の模試では、化学の成績がもっともよく、得点率90%で偏差値80以上を出しましたが、リードαを徹底的にやりきった賜物だと思っています。

実は、受験を振り返ってあとにも先にも集中して勉強したのはこの期間のみというくらいで、やりきった達成感でだれてしまい、「この後の模試でひどい点数をとってお尻に火がつけばいいな」と思っていましたが、普通にA判定をとってしまったこともあってそのままずっとダラダラとやって終わってしまいました。

勉強に対する態度

私がダラダラとやっても合格してしまったのは、中高と一貫してずっと定期試験にて上位30位以内をキープしてきた下地があったからだとも思います。

その一方で、東大合格の秘訣とも言える「勉強に対する態度」について、確かに周りと違う心がけをしてきていたと思うことについて共有します。

東大の入試問題は、普通の問題とは全然違う、考える力が試される問題だ、ということがよく言われます。

確かに応用力が問われる問題が合否を分けます。なぜなら、東大受験者のレベルでは基本的な問題では点差がつかないからでもあります。では、どうすればいいのか。

応用問題は基本問題が解ける人にしか解けない

だからこそ、基本問題をしっかり解けるようにすることが大切です。

基礎力をしっかりと身につけ、決してそんな問題で失点してはいけません。基本的問題(=解くべき問題)では確実に満点を取り、初めて見るような応用問題では解けたら解く、で大丈夫です。他の受験者も定番の問題集や過去問を解いて訓練してきます。そんな十分訓練された他の受験者が解けてしまうような問題を絶対に落とさないようにすれば自然と合格点までは届きます。

このマインドでもって基礎力をしっかりと定着させることが合格のための秘訣だと思います。私は、入試の時には「その問題が受験者の平均が解ける問題かどうか」を見分けられるようになっていました。もし問題集などで見たことがあった問題であるならば、それは他の受験生も解けるはずであり、その問題を落としているようでは合格から遠のいていくのは事実です。

例えばよく東大入試の数学の問題で取り上げられる円周率の証明の問題ですが、初見の年の学生にとっては解かなくても合格できる問題だけど、以降の学生にとっては解けなければいけない問題、ということになるでしょう(もっとも、もう出題されることはないでしょうが)。

それから、教えられたことを教えられる通りに解ける、の次のレベルにいく必要があります。「なぜを深く考える力が求められている」と表現されたりもしますが、数学や物理で言えば「なぜこの公式は成り立つのだろう」だとか、歴史で言えば「なぜ恐慌のあとに戦争が起こったのだろう」だとか、化学で言えば「なぜ元素は周期的に同じような特性を持つのだろう」だとか。もっとも、全てを自力でやっていると労力がとてつもなかったり、受験問題範囲を軽く超えたりしてしまうので、そういうところをうまく先生や家庭教師などを「利用する」ということも必要になるのですが、受動的な学習をやめて、能動的な学習へのシフトなのかなとも思っています。

学習の効率化のために復習ノートを作る

復習専用ノートを用意することはとてもおすすめの学習法です。人それぞれによって自分の苦手な問題とかは違いますが、だからこそ自分が間違えた問題のみをまとめた復習ノートが「自分だけのための参考書・問題集」となります。

それこそ学習の最初期から作成するのはおすすめしませんが、私の場合は問題集を周回するたびに間違えた問題を違う色などで印をつけておいて、問題集を使い込んでいっていました。最終的に表紙の裏などによく間違える箇所の要点をまとめたり、暗記系のよくまとまってる問題などをメモしたりしていました。模試の直前などにさらっと目を通すだけでも安心感が違います。

授業中のノートの取り方について

これも恐らくほとんどの人と違うノートの取り方をしていたと思います。ノートひとつとっても、目的に応じて様々な使い方があるのだと今になって思います。

私は授業の際には、自分がすぐに理解できない部分をメモ取るようにノートをとっていました。つまり、「後で振り返って有益な情報は何か」を考えつつノートをとっていました。一番顕著なのが数学の授業ノートで、ほとんど計算が書き殴ってあるだけ。基本的にノートを読み返すことはありませんでした。それは、先生が前もって問題集の試験範囲となる該当ページを教えてくれていたため課題を進めつつ予習ができたことや、授業のスピードが生徒の理解を促すようにゆったりと進められていた(個人の感想です)ことや、結局試験対策には問題をこなすことが近道であったことなどが理由で「後でノートを読み返すことは考えなかった」ためです。

物理や化学では基本的に先生の授業や説明に意識を集中し、どうも理解がおいつかないところや後で質問したい部分などを集中してメモをとっていました。

逆に英語や国語などはしっかり黒板の内容を書き写したようなノートができあがっており、後からノートを読み返して授業の内容を思い出すような学習方法も効率が悪く、なかなか成績は伸びなかったように思います(中学の最初の英語の模試偏差値は30代で最悪でした)。また、例えば「小説においては情景描写は主人公の心情の描写と密接に関わっている」のような重要な秘訣について教わる機会も全くなく、先生と私との相性もよくなかったように思います。

自分の合格タイプについて

先ほどから書いている通り、私は明らかに理数系タイプでした。多くの理系の人がそうであるとは思いますが、自分の得意分野と苦手分野について把握することは合格を明確に意識するにおいて大切なことです。「どんな得点配分だったら合格できるか?」最初はイメージできないかもしれませんが、模擬試験を繰り返していく中で徐々に自分の理想の得点配分をイメージすることが重要です。科目ごとに具体的な目標点数を設定できるまでになれば、より合格が現実味をおびて、モチベーションはますます高まるはずです。

私の合格時の点数について

私の合格時の点数は、およそですが次のような感じだったはずです。

センター試験 :780/900 (二次換算で95/110)
二次試験 数学:80/120
     理科:80/120
     英語:60/120
     国語:40/80
合計:355/550

センター試験はだいたい100点前後におさまるため、目標としていたのは二次試験の総得点220点。結果はそれを大きく上回る260点程度で現役合格を達成できました。この年の理一の合格最低点は300点程度だったので、二次試験での200点前後の得点が合否の分かれめになっていたと思います。二次試験の総得点が440点なので、ぎりぎり半分いかなくても合格できる感じなんですね。

必要勉強時間

これについては諸説ありますが、完全に人によると思います。私は中高通しての積み上げがあったので、割とゆったりと受験期を過ごした印象がありますが、もし中学まるまる不登校ばりに完全に遊んでいた人であれば高校生から始めても手遅れかもしれません。ある程度下地があれば高三だけで一気に仕上げることもできなくはないですが、それでも周りにライバルがいない状況などではモチベーションの維持が課題になってくるかもしれません。適切な先生がついていれば効率的な指導で圧倒的に時間短縮することは可能だと思いますが、それでも先生のことを100%信じてついていくだけの絆を形成することは簡単なことではないはずです。時には寄り道してしまうこともあるでしょうし、後になってその行動が正しかったと証明されることだってあります。

自分のケースで言えば、受験モードに入った4〜6月にかけては毎日10時間程度勉強をしましたが、その後は平均して1日1〜2時間程度しか勉強していなかったと思います(ゲーマーでもあったので、恐らくゲーム時間の方が多かったと思います)。なので、高三だけで1100時間程度の勉強時間だったと思います。

確実に言えるのは、受験の合否でキーとなるポイントは

基礎的な問題をしっかりミスせずに満点回答ができるか

という点です。勉強時間はあくまで目安としておきつつ、基礎がしっかり網羅されている問題集を何周もこなして、みっちり基礎力をつけることが大切です。理科においてはリードαの基礎知識を完璧に身につければそれで基礎は十分です。仕上げとして、問題設定と学習した知識の橋渡しの部分などがありますが、それは過去問演習を通す中で1、2年分でも解けばすぐに慣れてくる部分です。基礎を一通り身につけたら、早めに過去問を数年解いてみて軌道の微修正をするのもよいでしょう。

なぜ東大を目指したか?

実は、私には東大を目指したいこれといった強い理由はありませんでした。強いて言えば次のような理由があったかと思います。

・東大ブランドは強いから、とりあえず入れるなら入りたい
・他の大学と違って、入学して後で専門課程の選択を先延ばしにできる
・国立大学だから授業料が安い

大学に行ってからやりたいことも、将来やりたい職業なども全然考えられなくて、東大なら専門課程の選択を先延ばしにできるという理由は、他の東大生に聞いても割とメジャーな志望理由となっていました。

ただ、これから東大を目指す方にはこれら以上のメリットを感じて東大を目指して欲しいとも思います。私の時は誰も教えてくれませんでしたが、次のような強烈なメリットもあります。

・全国から集まった優秀な学生と一緒に学べる環境はとてつもなく尊い。学業だけでなく、サークル活動・社会貢献活動・起業活動などなど。東大ならではの他では代替不可能な部分は多く存在する。
・「東大」の肩書きは自身のキャリアを装飾してくれる材料の1つになる。もし自分の家系が裕福でないならばこそ、うまく利用して成り上がるチャンスとすることもできる。
・優秀な学友たちは、いずれ貴重な人脈となる。東大に来る学生の多くが将来有望であるということはまぎれもない事実である。彼らと早期にコネクションを作れるということは見方によってはかなりチャンスとも言える。

東大を目指す人の中にはもちろん、東大合格を通過点としか捉えておらず、その先の科学研究の追求であったり、閣僚キャリアの道を目指している人も少なからずいます。私はそういった学生たちについては、東大受験以前に、自身の将来としっかり向き合っている点において今も尊敬しています。

自分の受験期を振り返っての改善すべき点

前項の東大合格のメリットに対する意識についてもそうですが、その他に4点、今振り返ってみて思う改善すべきだった点があります。

1. 受験戦争は情報戦争

受験の戦いは、ある意味情報戦でもあります。
このnoteもそうですが、どんな心構えで臨めばいいのか、どんな人が合格するのか、どうやったら合格できるのか、注意すべきことは何か、、、

そうした情報を知っているだけで、いくらでも有利に受験を進めることはできます。その際には、どの情報を信頼するのか、といったことや、どうやって効率的に情報を収集するか、といったことも関わってくるため、簡単なことではありません。しかし、そういった有益な情報へアンテナを伸ばしていることで半年後、一年後に大きな差を生むことにつながると思います。

2. 一緒に支え合えるライバル・仲間を作り、チームを組もう

モチベーションの維持とも関連して、ライバルを作ることについてはよく耳にしますが、これだけSNSが発達しているならぜひ活用すべきですよね。

今やお互い知らない人同士でも簡単にツイッター、LINE、Slack、ジモティーと様々なアプリでつながることができます。そこでお互いを励まし合う仲間を募り、チームで乗り越えていくのがいいと思います。

熱量が高いチームを結成することができれば、お互いに士気を高めあえるだけでなく、情報交換や分かりやすい図解を共有することで勉強の効率も段違いになるのは間違いないはずです。

3. 自分の知識や学んだことを発信していこう

2. に通じるところはありますが、自分の知識を発信して価値を提供することであなたの周りには人が集まります。受験を乗り越えるための仲間を増やすきっかけにもなるでしょう。また、アウトプットは最も効果的な学習法でもあります。アウトプットしようとすることで物事に対する理解が深まり、さらなる知識の定着に役立つでしょう。またSNSなどでの発信の経験の蓄積は、これからのあなたの人生にとって大きくプラスになることも間違いないことです。

4. 東大に合格した後の計画を少しずつ立てよう

なんだかんだ、一番大切なのがこれかもしれません。せっかく苦労して合格したところで、ぼんやりと学生生活を過ごしてしまっては本当にもったいないです。東大に合格した後のことについては、なかなか身近に相談できる人もいないかもしれませんし、まだ合格もしてないのにそんな話をするのはよくないような気もするかもしれませんが、東大に合格した後のプランが全くなかったために入学後に燃え尽きてしまったような人は少なからずいます。自分もこのタイプだったので、そのことはもったいなかったとも思います。

私は引っ込み思案な性格で、大学生活や将来の就職についても全くイメージができなかったので、大学入学後のイメージも全くつきませんでした。そんな人にこそ、親・先生・家庭教師など信頼できる人へ早めに相談をしていって、その先の展望についてもイメージを作るように努力するともっと有意義な時間を過ごせるのではないかとも思います。

これから東大を目指す人に向けて

以上、色々と書き連ねてきましたが、参考になるところはあったでしょうか?
一つでもいいので、何か役に立つことを提供できたのであるなら嬉しく思います。

何といっても、最終的には受験する本人の主体性が一番重要になってきます。合格する人たちは、最終的には自分に合った最適なやり方を追求していくものです。先生や家庭教師に言われたやり方があったとしても、それは参考にしつつ、自分なりの勉強法を確立しながら進んでいく。そのくらいの意気込みで臨む、ということが東大受験においてもっとも必要なことなのかもしれません。


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