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ワークショップの"スピリット"とは何か

ミミクリデザインの今年度の目玉企画の一つ「Workshop Spirit -“ワークショップの魂”を探る」がいよいよ始まりました。次世代を担うワークショップ実践者が自身の"ワークショップスピリット"を研ぎ澄ますための半年間の学習プログラムです。タイトルだけ見ると、なんとも怪しいですねw

講師は、2001年に『ワークショップ』(岩波新書)を出版された時代の先駆者である中野民夫先生、人材開発・組織開発を専門とする中原淳先生、そして私、安斎勇樹の3名。

安斎がワークショップを始めたのは2007年頃。まだ大学生の頃でした。当時はワークショップに関する文献はまだ少なく、もちろん最初に手に取った本のうちの一冊は、中野民夫さんの本でした。

中原先生は大学院の頃から大変お世話になっており、修士課程の頃には企業のビジネスパーソンを対象としたワークショップのファシリテーションや場作りの機会を多くいただき、その数々の「無茶振り」によって実践者として本当に鍛えていただきました。博士論文でも審査ご指導いただき、研究者としても、恩師の一人です。

この約10年間、ただひたすらにワークショップの実践と研究を積み重ねてきて、いまこうしてファシリテーターとしてお二人と協働させていただけることは、本当に感慨深いです。(もちろん、ペーペー講師枠ですが!)

ワークショップスピリットとは何か

4月13日に行われた【DAY1】キックオフワークショップでは、ワークショップスピリットに関する丁寧なオリエンテーションとチェックインだけでほぼ6時間を使い切ったような、贅沢な時間でした。本プログラムでは、ワークショップスリットを以下のように定義しています。

ワークショップスピリット = ワークショップ実践者が、ワークショップを創造・実践していくなかで、自ら大切にしたいと思う価値感

ここでいう「価値感」とは、実践における哲学的前提、持論、信念体系、アイデンティティ、使命のようなものが入り混じったものです。客観的に規定された普遍の価値観があるわけではなく、実践者固有のものであり、また熟達を通して「常に更新し続けられる」もの、つまり「学習可能なもの」として定義しています。他方で、知識や行動、技術などに比べると「そう簡単には変わらないもの」でもあります。

学術知と持論を結ぶ、深いリフレクション

ワークショップの実践者であれば、毎回のファシリテーションの中で「行動」や「実践」のレベルでの経験学習は積み重ねていると思います。たとえば「ちょっと足場かけが足りなかったな。参加者が慣れていない場合は、プログラムをもう少し丁寧に作った方がよさそうだ」とか、そういう類のものですね。いわゆる、コルブの経験学習のサイクル的な学びです。

しかしながら"スピリット"のような価値観レベルの学習には、コルトハーヘンのALACTモデル(以下図)でいうところの「本質的な諸相への気づき」に相当するような、深いリフレクションが必要です。コルトハーヘンによれば、そのためには学術的な知識(大文字の理論:Theory)と日常経験から形成した持論(小文字の理論:theory)の結合が必要だとされています。

ワークショップの手法ばかりが普及し、流行の反面で形骸化しつつある現代において、100年以上の歴史があるワークショップの意味と意義を改めて問い直し、真髄としての背景理論を深く学ぶとともに、自分自身が形成してきた持論や哲学と融合させることで、「ワークショップスピリット」を磨き直す。それが、今回のプログラムの学習目標です。今回のキックオフの冒頭では、1時間近くかけて、スピリットの定義とともに、本プログラムの現代的な意義について丁寧に確認がなされました。

中野民夫さんの場作りはファシリテーターも含めた「全員参加」が鉄則ですから、安斎自身も参加者のみなさんと同様に「自分自身のスピリット」を振り返るためのワークと対話に参加をしました。ライフヒストリーを共有するワークでは、中野さんと中原先生から、これまで全く気が付いていなかったけれど、確かに自分の人生に通底している、実践の背後にある価値観を言語化していただけて、本当に深いリフレクションの機会となりました。

しかしまだあくまで【DAY1】です!6月15日の【DAY3】では、安斎が講師として「創造性からワークショップのスピリットを探る」というプログラムを実施予定なので、これまでの集大成的なコンテンツを作るつもりで、準備をしたいと思います。

コルトハーヘンのリフレクションの理論は、以下の書籍に詳しいです。

スピリットの今後の展開や気づきは、ミミクリデザインが運営するオンラインコミュニティWDAでも随時共有していきます。



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