見出し画像

ワークショップと研修の違い

教育や学習の手段としてのワークショップのデザインを考える上で、研修設計の代表的な手法である「インストラクショナルデザイン」との違いについては抑えておかなければなりません。

階段型の学びを促すインストラクショナルデザイン

インストラクショナルデザインとは、(従来型の)研修、教材、授業の設計手法であり、ざっくり言えば、「学習目標」を明確化して分析をしたら、それをいくつかの「下位目標」に分割して、それを「行動目標」として定義します。そして行動が達成される活動の「順番」を決めて、それを「どのように評価するか」を策定し、段階的にプログラムやカリキュラムを作っていくやり方です。

元々は第二次世界大戦の軍事訓練において発展した方法論だと言われています。多数の兵士を早急かつ効率的に一定レベルまで訓練可能な手法として、重宝され、メソッド化されました。この方法は、生産現場や企業の"工場型"の価値創造の現場においても有効な人材育成の方法であるため、現代においても人材育成の業界に幅広く普及しています。

従来型の研修の多くは、インストラクショナルデザインによって設計されています。テーマが「会計」であれ「名刺の渡し方」であれ「ロジカルシンキング」であれ、学ぶべきことをステップ化しておけば、講義・演習・フィードバックによって学習者を着実に"階段を登らせる"ことが可能です。

画像1

日常を揺さぶるワークショップデザイン

ところが企業における人材育成の役割は複雑かつ多様化しており、インストラクショナルデザインだけでは対応できなくなってきています。たとえば「自分の強みに気づき、キャリアに活かす」「会社の理念を自分事で理解する」「イノベーションを生み出せるようになる」のようなタイプの学びを目標とする場合、学習者によってその学びの軌道は異なるため、必ずしも共通した「行動レベルのステップ」に分割することはできません。

どちらかといえば、日常の慣習や自分自身をいつもとは違う視点から相対化する経験や、普段使っていない感覚を鍛えたりストレッチしたりするような「非日常的な体験」が必要になります。これが、ワークショップが得意としている学びの性質です。インストラクショナルデザインが「よく設計された階段を登らせる」ことだとすれば、ワークショップは、「日常にハシゴをかけて、異なる視点を与える」ようなイメージです。

画像2

ファシリテーターの仕事は、参加者に「普段とは異なる視点を提示する」ことであり、その結果としての気づきや、着地点は学習者に委ねられます。ハシゴから見えた向こう側の景色にジャンプするもよし、ハシゴから見えた気づきをもとに、日常の歩き方を少し変えるもよし、何も変えないもよし、といった具合に。この学習目標のゆるやかさが、ワークショップの魅力であり、結果として、「トップダウン型の近代的組織を揺さぶりボトムアップ型のイノベーションを起こす手法」として価値を持っている所以です。※ワークショップの定義は以前に書いた以下の記事をご参照ください

ワークショップを人材育成に導入した事例

ミミクリデザインでは、ワークショップデザインの手法を活用することで、インストラクショナルデザインでは対応しにくい創造的な学習目標を達成するための人材育成プログラムを学校や企業に提供しています。

たとえばトレノケート株式会社と共同で取り組んだ以下の事例では、ワークショップデザインの学びの性質と遊び心をフル活用して、50歳以上のシニア向けのキャリアプランニングのプログラムを開発しました。

また、学校法人角川ドワンゴ学園が運営する「N高等学校」には、経産省「未来の教室」採択事業として、「創造性」と「コラボレーション能力」を磨くためのワークショップ型の授業カリキュラムを提供しました。

ワークショップを正しく理解し、人材育成に導入する

設計手法の他にも、本来はノンフォーマルに実施されてきた「ワークショップ」と、フォーマルな企業内教育として行われる「研修」では、評価の在り方や重さ講師(ファシリテーター)のスタンスの違いもあります。

ワークショップを効果的に企業に導入するためには、ワークショップデザインの本質を理解し、インストラクショナルデザインとうまく使い分けたり、ときに組み合わせたりしながら活用する必要があるでしょう。

人材育成にワークショップの導入をご検討の方は、以下のサービスページからお気軽にお問い合わせください。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?