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外食を潰す


「味のわりに値段が高い」

という口コミをたまに見ることがあります。
そもそも値段は味によって付けられているわけではなくて、その商品がどのくらいで作られているのかとか、その商品を扱うのにどのくらいの人が必要なのかとか、あとは家賃とか、席の間隔(席数)とか、そういうもので決まりますから「美味しいから高い」わけではありません。
そんなことを言うなら、みんなが買っているカップラーメンやみんなが観ている映画はもっと高いはずです。
売れているものは、みんながいいものだと「認識して」いるものですから。

もし「美味しいから高い」世界があると想像したときに「美味しい」はなにで測るのでしょうか。定規?体重計?偉い人のひとこと?それとも口コミ?「みんな」が美味しいと思うのは存在しませんから、いわゆる旨味成分がどれだけ含まれているのか、かもしれない。
旨味成分のひとつのグアニル酸は、乾燥したしいたけからしか摂れませんが「しいたけ嫌い!」という人もいるので、そうなるとやはり「みんなが共通の美味しい」で値段を決めることはやはり難しそうです。

「味の割に高い」がいかに因果関係のないことを書いているかがわかります。それなら僕はおばあちゃんが作ってくれたお汁粉が15000円以上すると思います。

なので、味と値段についての不満を正しく書くなら「自分の口に合わない味だったので、自分の懐具合を考えると自分にとっては高いと感じた。これは主観なので全く参考にならないので参考にはしないでください。センシティブです」くらいでしょうか。

それをオフィシャルな場所で書く必要も感じませんからフォロワー50人くらいの鍵アカの中で言っていればいいわけです。


例えば、うちだとN.Y.チーズケーキを作るのに1ホールで2000円弱、かかっています。14カットしますから1カットで142円くらい。お店では700円で出している。(うちはレシピブックも販売していましたのでこういうのは調べれば分かっちゃうので公開してもなんともない)

さて。
ここに、人件費もかかって、売れても半分くらいは税金で持っていかれるとか考えるとどうでしょうか。高いでしょうか。電気代もかかっていてオーブンを2時間占有する。丁寧にカットし、ホイップクリームを添えて、器はしっかり冷やして出す。(ここは当たり前のことを書いていますよ。)

これは難しいところで確かに必要以上に高い設定をしているお店もあるかもしれません。
でもほとんどのお店は儲かっているわけではないです。だから飲食は廃業率が異常に高い。
「じゃあ高くすれば?」と思いますが「味の割に高い」「コスパが悪い」「リピなし」という人たちがいるからできないわけです。

言ってる人、書いてる人はほんとうに深い他意はないと思うのですが、受け取る側はかなりシビアに受け取ったりするわけです。
これはなににでも言えることで「有名税だ!」じゃないんですよね。

もちろん、ただただ値段を釣り上げていいわけじゃないので、経費を限界まで削ったり、ゴミを出さないとか、アイディアを出したり、できることはきちんとやらなければなりません。

あとは値上げに寛容な空気というか。
うちではおこがましいですが「お客様の教育」と言っていて、今日書いているようなことは12年間ずっとブログやインスタグラムで書いてきました。
最初のうちは「偉そうに!」「そういうお客は来るな!って言っているのか!」など否定的なコメントがついたりしていましたが、それももうほとんどありません。

面白いことに「うちはマスクは任意なのでしたければして、しない理由があればそれでいいよ」とか「あなたがいいと思っている店への気遣いもタイミングでは邪魔なんで、それやってる自分ドヤ、みたいなことはやめた方がいいよ」とか書くと心当たりのある人たちは怒り出すのですが、すぐにいなくなります。
「前から通ってたのに残念です」とか言い出す始末。

その残念感は「今のあなたがいいと思えなかっただけで、それだけの話」なのですが多分自分を否定された気持ちになるのでしょう。
通っていた店にガッカリするにはあまりにも弱い理由です。

なんか脱税してました、とかならわかるけれど。

話がズレましたが、つまり大事なことは「お店のスタンスは常に表明すること」です。そういう文化をお客様の間に作り出す、とでもいうのか。

新規のお客様もいるけれど「値段はモノのスペックには紐づかない」ということをうちのお客様たちはなんとなく知っているし、その上で、うちを使ってくれている。
「高いっちゃ高いけどね。笑」という人もいるけれど「消費は投票」で、うちに投票してくれる。

売値がきちんとモノの原価だけではなく従業員の給与につながったり、店の運営に必要なのだと知っています。
繰り返し、しつこく、説明することは大事なのです。

そして「あの店偉そうだから行かない方がいいですよ」と言ってもらうことも大事です。そういうことに反応しちゃう人たちが来なくなるのでお店にはプラスです

僕は「安くて毎日使える店」も大好きです。
ただうちの店の状況にはそのやり方が合わなかったというだけで。
「相対的に高いと思われるが、たまに無性に行きたい店」でいいのです。

ここまでくると「味は普通のくせに高い」を読むとあぁなんだか書かれる側は納得できないよな、と感じる。
しかも、残念なことに世界はあなたのために作られていませんから「もっと安くしてほしい」と叫んだところで安くなることはありません。
理由があってその値段だからです。

「安い方がいいよね」なんていう議論はとっくの昔に済んでいてその結果「その味でその値段」なのです。
値付けの3手目くらいで「いやその値段でやっていけるわけないっしょ」と小学生でも分かるくらい簡単な算数です。


値段を叩くと文字通り、外食の店は「潰れ」ます。
叩けば潰れますから。ゲームセンターでモグラ叩きやったことあります?楽しいですよね、潰す快感。やりたくなりますよね。

外食産業を潰したいなら、それでいいと思いますが小さい頃に家族でする外食が楽しかったな、みたいな思い出が少しでもあるのならやめた方がいい。

僕は外食ができなくなったら困るので、値段を叩くことはないでしょう。

困窮したとしたら、外食はしないかもしれませんが「安くしろ!」なんてクソダサいことは死んでも言わないと思います。

不当なことに声をあげる、とそれは全然違うと感じる。



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