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映画『青春18×2 君へと続く道』 南国・台南と雪国・福島の対比に、二人の近くて遠い距離を感じた

18年前に置いてきた青春にサヨナラを告げるって勇気がいること

あの時、想いを伝えていたら未来は変わっていただろうか。

始まりは18年前の台湾。カラオケ店でバイトする高校生・ジミー(シュー・グァンハン)は、日本から来たバックパッカー・アミ(清原果耶)と出会う。天真爛漫な彼女と過ごすうち、恋心を抱いていくジミー。しかし、突然アミが帰国することに。意気消沈するジミーに、アミはある約束を提案する。
時が経ち、現在。人生につまずき故郷に戻ってきたジミーは、かつてアミから届いた絵ハガキを再び手に取る。初恋の記憶がよみがえり、あの日の約束を果たそうと彼女が生まれ育った日本への旅を決意するジミー。東京から鎌倉・長野・新潟・そしてアミの故郷・福島へと向かう。
鈍行列車に揺られ、一期一会の出会いを繰り返しながら、ジミーはアミとのひと夏の日々に想いを馳せる。たどり着いた先で、ジミーが知った18年前のアミの本当の想いとは。

映画『青春18×2 君へと続く道』公式サイト

カタコトの「ミスチル、聞く?」が可愛すぎた

お元気ですかーーーーーーー!

これって、日本の映画の台詞だったのか。
許光漢(シュー・グァンハン)演じるジミーが、長野県・飯山線から見える雪景色に「まるで『Love Letter』みたいだ」とつぶやく。そして、名台詞を叫ぶ。

以前、韓国の芸能人がYouTubeで言っていて頭に?が浮かんだのだけど、まさか『Love Letter』(1995年公開)がそこまでアジアで流行していたとは。台湾では1996年に公開されたらしい。

『青春18×2 君へと続く道』は、36歳のジミーが、18歳だった頃の思い出を日本の旅で確かめる映画。寄り道をしながら、初恋の人・アミの故郷である福島を目指す。

私にとって、ジミーとアミは世代も違うし、生きている環境もまったく違う。それでも、二人が笑う場面で笑って、泣く場面で一緒に泣いて、本当に楽しかった。

『Love Letter』以外にも『スラムダンク』、Mr.Childrenと、ジミーとアミが青春を過ごした時代の流行がいくつも出てくる。まだ日本語を練習中だったジミーのカタコトの「ミスチル、聞く?」はめちゃくちゃ可愛い。

ミレニアム世代のアジアの人々は、本作を観てどんな気持ちになるのだろう。

こういう伏線の回収もあるのだと気付いた

本作では、同じ場面が前半と後半で2回出てきたりする。ジミーとアミ、それぞれの目線で同じ場面を辿る感じ。大切に思っているのにすれ違っていく二人が切ない。

ジミーには、まだ恋愛に慣れていない10代特有のイタさがあって、全力で応援したくなる。こんなに18歳と36歳を演じ分けられるのは、許光漢しかいない……。

アミを演じた清原果耶の、未成年じゃないけど垢ぬけ切っていないリアルな雰囲気も最高だった。まったく着飾っていない自然な髪型と服装が、台南の熱い空気感に合っている。私もその湿度を感じに、今すぐ台湾へ行きたい!

ジミーが見た冬の福島は、1年を通して暖かい台南とはまったく違う。それぞれの故郷の対比が、二人の距離を表しているように感じる。その分、旅の途中で出会う人々の温かさが際立っていた。やはり、ロードムービーの見どころは人との出会いだ。

ジミーと自分を重ねて、私も過去にとらわれずに前に進みたい、と思った。一人で観ていた隣の席のおじさまも、同じ気持ちだったかも。

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