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見所はトニー・レオンじゃない。中国スパイ・ノアール『無名』の魅力を語りたい

巧妙に仕組まれた伏線が観客を心理戦に巻き込む

 今日5月3日に『無名』の日本上映が始まった。日中戦争におけるスパイたちの心理戦を描いた本作。観客を何度もだます作り込まれた仕掛けが凄まじい。

 まず驚いたのは、冒頭のシーンが“始まり”ではないこと。ある意味では始まりとも言えるが、とにかく観て確かめてほしい。
時間軸が複雑に絡み合っていて、ストーリーが進むにつれて伏線が回収されていく。と思ったら、実はそれが新たな伏線で。生きるか死ぬかの戦いの中、スパイたちが命をかけて騙し合う。観客もそれに参加せざるを得ない。
 その上、観ているこっちの呼吸が止まりそうになる激しいアクションシーン。観終わったあと、ジェットコースターに1時間乗り続けたのかと思うくらい体が疲れていた。それほど入り込める映画だった。

アイドル出身の王一博が演じるイエの“しごでき感”と“闇堕ちした表情”

 本作では、トニー・レオンと王一博がダブル主演を務める。トニー・レオンといえば、中国の大スターだ。本作のポスターでは、明らかに彼がフィーチャーされている。
 だが、劇中で最も存在感を放っていたのは王一博(役名:イエ)だった。中韓合同男性アイドルグループとしてデビュー。有名オーディション番組「創造101」でトレーナーを務めたこともある人気アイドルだ。

入場特典でもらった『無名』のポストカード

 劇中で王一博が目立ったのは『無名』のタイトルとも合っている。ドラマティックな配役だ。
 王一博が演じるイエは、最初は従順な部下に見える。それが、どんどん違う人物へと変わっていく。黒い部分が滲み出た表情が特に印象的だった。イエの掴めないパーソナリティは危険なオーラを感じる一方で、魅力的だ。スーツのまま戦う姿も、劇場で見る価値がある。

 とにかく、中国映画がもつノスタルジックな雰囲気がたまらない!

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