見出し画像

#adtechtokyo 2022のネタ元 ー『いま、UI&UXを見直す際に考えるべきこと』に臨んで話しきれなかったことー

昨日、adtech tokyoに登壇させていただきました。
2年連続で通していただき大変感謝感謝である。。
参加したセッションは下記のもの。

アフターデジタルの著者の藤井さんと、セガXDというセガと電通のJDのゲーミフィケーション会社のCOOである伊藤さんとご一緒。
キックオフの時点で相当キレキレであることがわかり、『これは丸腰で挑むわけにはいかん。。』といくつかネタを用意していました。
パネルディスカッションはいろいろな方向に話が及ぶので結果的に手元にネタがいくつか残ってしまいました。
「これはもったいない!」と思い、せっかくなのでとひっさびさに記事を書いています。
参加された方も、されていない方も、何かのお役に立てればいいなと思います。

導入

キックオフに当たって、事務局の方からいただいたオリエンは下記のようなものでした。

■期待するディスカッション内容
・これまで、ことあるごとに議論されてきたUI、UXですが、それについて考えることが当たり前になったこともあり、ここ1~2年、以前に比べるとテーマとして挙がる機会が減りました。
しかし、その期間にも様々なテクノロジーが進化・登場しています。ここでは、テクノロジー企業やそれを活用する企業が、最新の状況を踏まえたUI、UXについて考えます。
*こちらはボードメンバーからの声です。あくまで参考として、セッション打ち合わせを進める際のきっかけとしてください。

これを見て、当時少し違和感を覚えました。
議論の始まりこそ少し前であるものの、実際にはけっこうUXがテーマに挙がることが多いのではと。
一方で、UXの議論が挙がるときには「UI/UX」とひとくくりにされることが象徴しているように、『体験の最適化』が語られることが多い。
ただ、いま本当に考えるべきは最適化ではなくむしろ『体験の最大化』なのではないか。
こんなことが主軸に置かれたディスカッションでした。

当日の発表資料から

僕はデザイナーでもないしUX/UIのスペシャリストというわけでもないので、いったんこの『体験の最大化』に振り切って話をしようと考えていました。

3つのメッセージ

ここからが用意していたネタです。
いろいろ話が展開することは予想していたものの、下記の3つのメッセージを中心にネタを出していこうと考えていました。
1. そもそも何をするべきなのか
2. UX議論においてテクノロジーはどのような役割なのか
3. どのようなチームを組むべきか

順を追ってコメントしていきます。

0. そもそも誰が聞いているのか

adtechなので、参加しているほとんどの人はブランドサイド(しかもそれなりに大企業)か、それをサポートするエージェンシーのどちらかだと考えました。
逆に、本当にゼロから作るスタートアップはあまりいないはず。
これを前提として、この立場のプレーヤーがどういうことを考えると実りがあるのかということを話そうと思いました。

1. そもそも何をするべきなのか

先に結論を書くと『Branded Service』を展開するべきだと考えます。

自社D2Cを展開しないといけない。サブスクリプションにしないといけない。
世の中から感じるこの手の圧はあれど、出口から考え始めるといつまでも不安は晴れないんじゃないかと思います。
この議論は「そのサービスを出したときにどのようにお客さんが喜んでくれるか」という観点から始まっていないので、「D2C化するためにお客さんにどのような価値を提供すべきか」というあるべき議論とは逆向きの思考を巡らせることになります。
さらに、ローンチしたあとにはグロースに奔走し、「施策のための施策」に追いかけられるようになる。
このように、後追いで世の中の流れに合わせるように考えるのでなく、むしろ自社がすでに持っているブランド価値を起点にしてお客さんに新たな価値をどう提供できるか。これを考えるほうが本質的なんじゃないかと思います。

少し寄り道をしますが、先日僕はダイエットサプリを買おうと思いました。(楽して痩せたい)
しかしながら、ググれどググれど記事はアフィリエイトのものばかりで、何を買ったらいいかさっぱりわかりませんでした。むしろ怪しさは募る一方。
いろいろ調べていったら防風通聖散という漢方がいいという結論には至りました。結果的に買わなかったのですが。。

この、ググれどググれどの状態の僕のような人はけっこういるんじゃないかと思います。
たとえばここで、漢方を昔から作っている会社が
「痩せるための漢方サービス」
「腸活のための漢方サービス」
「元気になるための漢方サービス」
なんてものを提供してくれていたら、一撃で申し込んだんじゃないかと思います。普通にいまでも欲しい。

マーケティング的見ると、Base of authorityが「昔から漢方を作ってきたこと」で、これはなかなかマネできない圧倒的な強み。
ビジネス的に見ると直販サブスクリプションの形になっていて、かつお客さんのコンディションもわかるようになる。

きっとこういう強みをすべての会社が持っていて、ただそれがいまの時代とマッチしているかは疑問
こんな状態なんじゃないかと思います。
いまやるべきことは、外圧に屈して出口から考えることではなく、むしろブランドの、企業の、本当の価値を見出し、いまの時代にあった形で提供することなんだと思います。
これを、広告文脈の『Branded contents』をもじって『Branded service』と考えると整理がつきやすくて、これをひとつめのメッセージにしようと考えていました。

こう考えると非常に勇気がわきます。
なぜなら答えの種は自社の中にもうすでにあるからです。
トレンド云々でなく、しっかりと人を見て、自社の持つものがどう価値に思ってもらえるかを見て、それをまっすぐにサービスとして届ければ、結果的に自社にとってはかなり新しいことを行っているようになるのではないかと思います。

このBranded Serviceがどんどん出てきたら、もっともっと日本が元気になるんじゃないかとワクワクします。
僕もその中のひとり。
みなさん、一緒にがんばりましょう!

2. UX議論においてテクノロジーはどのような役割なのか

Preferred Networksというテクノロジーの会社から来ているので、UX議論に置いてテクノロジーがどのような役割であるのかということも触れようと思っていました。

スティーブジョブズはかつて、コンピュータを『知能の自転車』と表現しました。

あまりにもおもしろいインタビューなのでぜひ動画で見ていただきたいですが、中身をざっくり抜き出すとこういう内容です。

ジョブズが伝えたかったのは、おおよそ次のようなことです。
『人間は生き物の中で移動に優れた動物とはいえない。ただし自転車という道具を使うと人間は自分のエネルギーだけで最も効率的な移動ができる。つまり自転車は人間にとって能力を拡張する道具である。そしてコンピュータとはまさに知性にとっての自転車、知性を拡張する道具である。』と。

https://applembp.blogspot.com/2010/10/bicycle-for-mind.html

コンピュータに限らず、テクノロジーとは知の自転車なのだと思います。
冷蔵庫が発明されたことによって、料理の幅は大幅に広がったはず。
エクセルが発明されたことによって、人間は分析する技術が大幅に上昇したはず。
新たな道具が発明されるたび、その領域が大幅に発展する。
その「道具」こそがテクノロジーなのだということです。

直近ではstable diffusionが最もわかりやすい例だと思います。
簡単に言えば、テキストを入力することでものすごく精度の高い絵が生成されるというサービスです。

『adtech tokyo 2022』で生成した画像

絵を描くということは当然絵を描く技術が必要であるというのが常識です。
しかしこの常識は、テクノロジーによって書き換えられました。
絵を描く技術を飛ばして、テキストを入力する技術があれば絵を描けるようになったということです。
当然ですが、絵を描く技術を持つ人よりもテキストを入力する技術を持つ人のほうが圧倒的に多いので、絵を描くことが一気に民主化されたと言えます。

このような書き換えを脅威と見るか機会と見るかはスタンス次第です。
しかし、どうせなら機会と見たほうが前向きだし、怯えるのでなく前向きに取り込んでいくのがいいんじゃないかと思います。
(僕は一応その専門家でもあるので、何かあればご相談ください)

3. どのようなチームを組むべきか

こちらは結論から書きます。
最初からすべてのファンクションを入れるべきであると考えます。
事業開発、デザイナー、エンジニア、マーケター、生産、法務、財務などなど、通常考えうるチームよりももっと拡大したメンバーを、最初から入れるイメージです。
なんでもダイソンの新商品開発チームは上記のようなメンバー数人ではじめから構成されるらしいです(又聞きなので要出典)

マーケティング起点でアイデアを考え始めたとします。
ビジネスモデルを考えると事業開発に当たります。その先には財務に当たります。
実装を考えるとエンジニアに当たります。その先に生産に当たります。
知財が絡むものであれば法務に当たります。
デリバリーを考えるとデザインに当たります。
マーケティング起点の例を挙げましたが、どこから始めたとしても様々なファンクションにいずれ当たってしまうのです。

様々な観点で叩くことで、新たな取り組みはどんどん強くなります。
これをひとつのファンクションのチームで小さく詰めてしまうと、
局所最適に陥ってしまっていずれ大きな壁に当たってしまいます。

どうせ壁に当たるのならば早い方がいい。
最初からすべてのファンクションを入れて、あらゆる観点から叩く。
これをとにかく早いフェーズからやり始めることで、実現の精度はどんどん上がっていくはずです。
ちょっと恐いけど恐れずに多様なチームを組むことがいいと僕は思います。

まとめ

1. そもそも何をするべきなのか → Branded Serviceを作るべきである
2. UX議論においてテクノロジーはどのような役割なのか → 知の自転車である
3. どのようなチームを組むべきか → 最初からすべてのファンクションを入れるべきである

これが僕の用意した持ち玉でした。
もし少しでも響くところがあれば、ぜひディスカッションしましょう。なんなら一緒に仕事もしましょう。

以上です!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?