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2022年版 FIA-F2シリーズドライバー紹介

F2はF1へのデビューを懸けて若手ドライバーがしのぎを削るカテゴリーだ。F1と同じコースでチャンピオンシップを戦い、好成績を残せばF1デビューを果たせる、最終関門となっている。

今年F1デビューした周冠宇も、角田やシューマッハ、ラッセル、ルクレール、ガスリーetc…F1で活躍するドライバーの多くがこのF2での走りが評価されてF1にやってきた。

DAZNではF1だけでなくF2,F3の放送もやっている。せっかくDAZNを契約しているなら、将来のF1ドライバー候補者たちのF2、F3もみないと損だ。
しかし、モータースポーツの専門サイトでもF2やF3ドライバーの詳しい情報はほとんどない。

そこで昨年に引き続いて、2022年のF2のドライバーを紹介していく。これを読めばF2をもっと楽しく観戦することができるはずだ。なお、昨年紹介したドライバーについては昨年の記事もリンクしたので参考にしてほしい。

(2022/7/27:記事内容を全体的に更新しました)
(2023/3/20:2023年版を作成しました)


〇岩佐 歩夢(いわさ あゆむ)


honda.racing HP より

FIA-F3(21年)→DAMS(22年)

角田と同じく、RedBull育成ドライバーかつホンダのバックアップで今年からFIA-F2に参戦する日本人ドライバー。20年にフランスF4、21年にFIA-F3と1年ずつカテゴリーを順調にステップアップ。今年からF2に参戦することとなった。

おととしのフランスF4ではともに日本から参戦した佐藤蓮とともに圧倒的な成績を残した一方で、昨年のFIA-F3ではやや苦戦し、シリーズを安定してポイントを稼ぐことができずランキング12位。

しかし、ハンガリーでの優勝や、ポイントにつながらないレースの中でも各所でオーバーテイクして順位をあげるなど、実際のランキング以上に随所での活躍をみせた。FIA-F2の開幕戦でも最後尾スタートから怒涛のオーバーテイクをみせ、角田の再来を予感させる走りだった。

昨年のF3の様子ではF2は慣れるまで苦労するだろうなという私の予想を完全に裏切り今年の台風の目となってくれそうな選手だ。

フランスGPのフィーチャーレースで優勝したことで、同じRedBull育成ドライバーたちの中でも最も注目される存在になったといってよいだろう。

2024年にアルファタウリ離脱が噂されるガスリーの後任になれるかどうかは今年後半の活躍にかかっている。

〇佐藤 万璃音 (さとう まりの)

https://www.marino.asia/  より

トライデント(20年)→ユニ・ヴィルトゥーシ(21年)
(昨年の記事はこちら

もう一人のF2に参戦する日本人ドライバー、佐藤万璃音。1,2年目はテールエンダーのトライデントからの参戦で、目立った成績を残すことができなかったが、3年目となる今年は、ついにトップチームのユニ・ヴィルトゥーシに所属することになり、期待も高まる。

佐藤にとっては今年が最初で最後のF1チームに向けてアピールできるチャンスのシーズンだ。
佐藤はホンダのバックアップがある岩佐とは異なり、自動車メーカーからの支援を受けずにここまでステップアップしてきた独立系のドライバーだ。

成績が良ければF1までのルートが開かれている育成ドライバーたちとは異なり、独立系ドライバーは自らで資金を用意し、F2チームへの参戦をマネジメントし、F1チームへの売り込みを行っていかなければならない。

そのため、独立系ドライバーが実力でF1のシートを手に入れることは現実には非常に難しい。たとえF1に行けたとしても持参金を大量に持ってきたペイドライバーとして参戦するケースが圧倒的に多い。ラティフィやマゼピンがそれにあたる。

近年で実力でF1にステップアップできた独立系ドライバーはアルボンくらいだろう。そのわずかな条件の中でも、F1チームに目を向けてもらうにために、トップチームに移籍できたこの実質的な初年度のシーズンで圧倒的な実力を示してほしいところだ。

しかし前半戦では予選で沈んでしまってクラッシュに巻き込まれる展開が多く、良いレースに恵まれない。何か浮上のきっかけをつかんでほしい。

〇デニス・ハウガー

画像はRedBull Junior TeamのHPより

FIA-F3(21年)→プレマ・レーシング(22年)

昨年のFIA-F3選手権チャンピオン。
昨年のF3ではどのレースでも安定した速さをみせた。

RedBull育成ドライバーでもある。F2のRedBull育成ドライバーは5名。うち開幕戦の段階で、RedBullから最も期待されていたのは初年度から強豪プレマのシートが与えられた彼だろう。

F3のプレマ・レーシングからF3のチャンピオンシップを優勝して、今度はF2のプレマ・レーシングからF2に参戦するのは近年のF1へのルートの王道コースだ。昨年F2を優勝してF1のシート待ちのピアストリ、ハースで2年目のシーズンを過ごすシューマッハもこのルートを辿っている。

ハウガーは初年度からF2で結果を期待されるポジションに立った。この期待に応え、チャンピオンシップ上位の成績を出せれば、F1への道は近いだろう。ただし期待はプレッシャーの裏返しだ。

前半戦ではそのプレッシャーからか、チームメイトのダルバラにポイントで負けており、チャンピオンシップを争うような成績までには至っていない。
後半戦ではプレッシャーに打ち勝ち、レッドブルジュニアの総帥、マルコ博士を納得させる走りができるかに注目だ。

〇ユアン・ダルバラ

画像はRedBull Junior TeamのHPより

カーリン(21年)→プレマ・レーシング(22年)
(昨年の記事はこちら

RedBull育成ドライバーの一人。今年で3年目。初年度の走りは正直F2で成績を残せる走りだとは思っていなかったが、2年目は安定した走りでコンスタントに入賞。さらに2勝を挙げてチャンピオンシップで7位となった。

1年目から大きな成長をみせて、3年目もRedBull育成を継続。さらに強豪プレマ・レーシングからの参戦となった。今年のここまで安定したポイントを獲得。チームメートのハウガーを上回る成績でチャンピオンシップ上位を確保。F2でも上位実力者として、新人ハウガーの実力を測るうえでよい指標になっている。

ただ、正直、F1に行くための旬を逃してしまった感じはする。来年あたりにフォーミュラEやインディ、スーパーフォーミュラといったほかのトップカテゴリーあたりからお声がかかるのではないかと予測している。

〇リアム・ローソン

画像はRedBull Junior TeamのHPより

ハイテック(21年)→カーリン(22年)
(昨年の記事はこちら

RedBull育成ドライバー。昨年度から引き続いての参戦。昨年度の成績はまずまず。今年の成績もまずまず。F2において実力上位であることは間違いないが、F1に進むためにはもう一皮むける必要がありそうだ。

RedBull育成では後ろに岩佐とハウガーも控えており、彼らよりも絶対的に早ことを証明する必要がある。

〇ユーリ・ビップス

画像はRedBull Junior TeamのHPより

ハイテック(21年)→ハイテック(22年)
(昨年の記事はこちら

昨年度から引き続いての参戦。RedBull育成ドライバー、だったのだが、自身のゲーム配信中に差別発言をしてしまったことでシーズン途中でRedBull育成契約を切られてしまった。

RedBullの後ろ盾がなくなってしまい、F1昇格の道はかなり厳しいくなった。このようなサーキット外の部分でF1の道が閉ざされてしまうというのは残念。

サーキット上でも前半戦、いい順位のときに限って自責クラッシュを起こしてしまうというやらかしを何度かしてしまい、安定感という点で疑問符が付いた。
後半戦はサーキット内外での悔しさをバネに再起を期待したい。

〇ジャック・ドゥーハン

jackdoohan.comより。坊主の写真が多いが、髪を伸ばしたこちらのほうがかっこいい。

FIA-F3/MPモータースポーツ(21年)→ユニ・ヴィルトゥーシ(22年)

21年はFIA-F3にフル参戦し、ハウガーに次ぐ2位。ご褒美にスケジュールがかぶらないF2に21年後半スポット参戦し、今年から佐藤のチームメートとしてユニ・ヴィルトゥーシからF2にフル参戦。

F3ではシーズン後半から存在感がある速さやオーバーテイクをみせ、F2でも実力者として存在感のある走りを見せてくれている。積極的なオーバーテイクが魅力だが、反面、接触も多いので、そこは修正が必要だろう。

今年、RedBull育成ドライバーからAlpine育成ドライバーへと移籍。
RedBull育成プログラムは名門だが、今年だけでドゥーハン以外に5名のドライバーがF2に参戦してF1のシートを狙うという競争の激しさだ。

ドゥーハンも速さのあるドライバーだが、そのようなRedBull育成の状況を嫌ってか、もしくはAlpineの育成プログラムのほうが今後のキャリアの選択肢が増えるとの考えだろうか。

とはいえ、Alpine育成もピアストリが浪人、周冠宇がAlpineではなくAlfa-Romeoからデビューと、必ずしもAlpineチームへの切符が用意されているわけではない。

はたしてドゥーハンの選択は今後どのような結果になるだろう。

〇テオ・プルシェール

Wikipediaより

ARTグランプリ(21年) → ARTグランプリ(22年)
(昨年度の記事はこちら)

昨年からFIA-F2に参戦。今年まだ18歳の若手ドライバーでSauber(Alfa-Romeo)の育成支援を受けている。
昨年、17歳でのF2初参戦はチームメートのルンガーよりも優秀な成績をたたき出した。この年齢でこの成績は才能の片鱗を感じる。

今年も安定感のある走りでコンスタントに上位入賞。前半戦でランキング2位につける。近いうちにF1にステップアップする可能性が高いドライバーの一人だ。

しかし、支援するのがSauber(Alfa-Romeo)という点がF1昇格のネック。現在のAlfa-Romeoのドライバー二人の状況を考えると、少なくとも来年のシートは空かないだろう。
今の成績を手土産に2024年のAlfa-Romeoのシートを確実なものにできるか、はたまた他のF1チームへアピールができるか。

モータースポーツでステップアップするには適切なタイミングで適切な場所にいるという運の要素も大事だが、はたして。

〇リチャード・フェルシュホー

Wikipediaより

FIA-F3(21年) → トライデント(22年)

完全なダークホース。F2のトライデントは万年テールエンダーとして知られていて、F1でいえば近年のWilliamsのポジションに近い。
このチームは年間を通じてポイントを取れればラッキーくらいの立ち位置なのだが、今年のトライデントドライバー、フェルシュホーはまさかのまさか、優勝してしまった。DAZNの解説に、フェルシュホーはトライデントのチームごと変えてしまったと言わしめる。

さすがにチャンピオンシップを争うまでにはいかないが、コンスタントにポイントを獲得しており、来年トップチームに移籍できれば、チャンピオンシップ争いに絡んでくる実力者ではないだろうか。

〇フェリペ・ドゥルゴビッチ

オフィシャルサイトより

ユニ・ヴィルトゥーシ(21年) → MPモータースポーツ(22年)
(昨年度の記事はこちら

前半戦まで終わり、今年度のドゥルゴビッチはF2の中でも抜けて速い。コースと合致すればレース1,2両方で優勝。そうでないときも堅実に上位入賞を繰り返して、早くもチャンピオンシップ独走状態に近い。

昨年は期待されていたほどは振るわず、背水の陣で挑んだ参戦3年目にして完全に能力を開花させた。

昨年の同じく、彼の唯一の欠点は後ろ盾(スポンサー)がないことだ。ただ、これだけ速さを見せつけているのであれば、ブラジルの大企業を引っ張てくるとか、どこかのアカデミーから声がかかってもおかしくはなさそうである。
アカデミーなら最も可能性がありそうなのはフェラーリだろうか。ミック・シューマッハの今期のドライビング次第によっては、2023年のハースの席が空くかもしれない。

〇マーカス・アームストロング

自身のFecabookより

DAMS(21年)→ユニヴィル(22年)

昨年度まではフェラーリ育成の一角だったが、F2参戦の2年間ではあまりぱっとした活躍ができず、今年からは育成から外れてしまった。
ところが今年はコンスタントに良いところを走れるようになり、前半戦モナコまで終わってランキング4位。F3のころの躍動感が戻ってきた。

安定感はあるので、あと必要なのは一発の速さだろう。安定感があるが一発の速さが足りないという量産型ドライバーではせいぜいF2どまり。
F1に進むためには予選から良いグリッドを獲得して、何勝かできるドライバーへともうひとつステップアップが必要だろう。

〇ローガン・サージェント

Wikipediaより

FIA-F3(21年) → カーリン(22年)

Williams育成ドライバー。
Williamsの育成ドライバーは資金があれば誰でもなれるので、正直、開幕までほとんど注目していかなったが、レースを経るごとに存在感を増してきた注目株。

前半戦まででランキング3位につける。
開幕から安定して入賞しているイメージはあったが、中盤戦からはフィーチャーレースで連勝するなどだんだんとF2のクルマに慣れてきている感じがする。
フィーチャーレースで勝利するということは、レース展開だけでなく、予選の速さもあるということだ。

Williamsは2023年のドライバーとしてAlpineからピアストリをレンタル移籍すると噂されるが、ここにきてサージェントも対抗馬に名乗り出てきたといってよいだろう。
後半戦の活躍次第で本当にピアストリを押しのけてサージェントがF1ドライバーになる展開もあるかもしれない。

〇ロイ・ニッサニー

Wikipediaより

DAMS(21年) → DAMS(22年)
(昨年度の記事はこちら

F2ベテランのニッサニー。岩佐のチームメートとしてDAMSから参戦。

クラッシュが多く、正直F2のペイドライバー枠なのだが、だんだんとF2の運転にも慣れてきて、ときどき覚醒したような速さを見せるようになってきた。

それでも結局クラッシュしてしまうのだが…。


〇おわりに

ここで紹介したドライバーは全体の1/2程度で、全体では総勢20名のドライバーが参戦している。
気になるドライバーがいればランキングもチェックしてみよう。
また、ステップアップのために必要なスーパーライセンス制度を知れば、ランキングももっと面白くなる。
以下のサイトがF2のデータが詳しい。

それでは楽しいモータースポーツライフを!

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