2021 FIA-F2シリーズドライバー紹介
2021年のF1も開幕した。今年はホンダの最終年でもあり、角田がアルファタウリからデビューするとあって日本でのF1のマーケティングにも力が入っていると感じる。
特にF1の放送サイトDAZNでは角田をアンバサダーとして全面的にプッシュしてF1を猛アピールしている。これを機にDAZNに加入した人もいるだろう。
そしてDAZNにはF1だけでなく、F1の下位カテゴリーのF2やF3のレース中継も行っている。未来のF1候補生が繰り広げるバトルもF1とはまた違った緊張感やルーキーのフレッシュ感があって面白い。
せっかくDAZNに入っているなら、是非F2やF3も見てみよう!ただ残念ながらF2やF3ドライバーに関する情報は少ない。そこで、私の主観で今年活躍しそうなF2ドライバーをピックアップした。
専門サイト以上に詳しく解説していると思うのでF2観戦中に気になるドライバーが出てきたら辞書代わりに使ってください。
(画像は特に表示ないものはwikipediaから引用している)
2022/5/30追記:2022版も作成しています。
2023/3/24追記:2023版も作成しています。
〇ロバート・シュバルツマン
プレマ・レーシング(20年)→プレマ・レーシング(21年)
下位カテゴリーであるFIA-F3の2019年チャンピオンが2020年はF2にステップアップ。2020年シーズン前半で立て続けに勝利して大量のポイントを獲得し、一時は初年度からチャンピオンシップを獲得するのではないかと騒がれた。
中盤以降は失速してしまうものの2020年シーズンはルーキーながら4勝し、チャンピオンシップ4位。F2ルーキーの中ではF1にステップアップしていった角田に次ぐ成績でシーズンを終えた。
2021年も引き続きプレマ・レーシングから参戦。2020年シーズンの活躍、そして常勝プレマ・レーシングから参戦することを考えれば、2021年のチャンピオンシップの大本命だろう。Ferrari育成ドライバーということを考えると、もし2021年F2のチャンピオンとなればFerrariと関係の深いAlfa-Romeoから2022年にF1デビューすることも十分に考えられる。
〇オスカー・ピアストリ
(画像はwikipediaより)
FIA-F3(2020年)→ プレマ・レーシング(2021年)
2020年FIA-F3チャンピオン。Renault育成ドライバー。FIA-F3チャンピオン(旧GP3)の看板を背負っての名門プレマ・レーシングでF2デビューは近年ではシャルル・ルクレール、ミック・シューマッハ、ロバルト・シュバルツマンに続く4人目である。どのドライバーもその後、F1昇格やその候補となる結果を残しており、この系譜に続くピアストリも2021年のルーキーながらチャンピオンシップ争い、そしてF1昇格昇格争いに絡むポジションにいることは間違いないだろう。
そして、もし2021年にピアストリがF3からF2と連続でチャンピオンシップをとることができれば、それはジョージ・ラッセルやシャルル・ルクレールに続く快挙となる。ラッセルとルクレールがともに将来のF1チャンピオン候補と名高い才能であることを考えれば、ピアストリは早くも2021年が将来のF1チャンピオンへの試金石の年となるだろう。
〇フェリペ・ドルゴビッチ
MPモータースポーツ(20年)→ユニ・ヴィル(21年)
アイルトン・セナの祖国でありモータースポーツ大国ブラジルの期待の新星。フェリペ・マッサ以降にF1ドライバーを輩出できていないブラジルからF1昇格を熱望されている。
2020年はルーキーながら2勝。チームメートのベテラン松下に対して互角以上の成績を残し素質の高さを見せつけた。
とはいえ2020年に所属したMPモータースポーツがあまり強いチームでない中ではチャンピオンシップの上位は狙えなかった。2021年は強豪ユニ・ヴィルへの移籍が決まったことでドルゴビッチにとって勝負のシーズンとなるだろう。
またメーカー系の育成ドライバーではないため、F1に昇格するためにはブラジルからのバックアップ(≒資金提供)も重要になってくる。シリーズ終盤にランキング上位になってきたときにどういったスポンサーを集められるかにも注目だ。
〇周冠宇
ユニ・ヴィル(20年)→ユニ・ヴィル(21年)
全中国の期待を背負って(?)F1を目指す中国人ドライバー、周冠宇(読み:チョウ・ガンユー)。2019年からF2に参戦し、2019年はルーキートップの成績を残す。2年目の2020年シーズンはランキング6位と悪くはない成績だったが、2019年からの期待が大きかった分、決して満足のいく内容ではなかった。
タイヤマネジメントに自信があるのか、あえてタイヤ戦略を周りと変えたり、長くタイヤを引っ張る戦略を多用し、その戦略の幅の広さで最終盤に中団から抜け出してポイントを稼ぐのがうまい印象がある。裏返せば、予選の速さでポールポジションを獲得したり、速さで勝ち切る印象が薄い。
F2は4年も5年もいるところではない。2021年は3年目ということでそろそろ結果が欲しいところである。21年に著しい成績が残せれば、Renault育成ドライバーの立場を活かして、Renaultの中国市場へのマーケティング込みでAlpine(旧Renault)への昇格があるかもしれない。
〇ユーリ・ヴィップス
(画像はhttps://www.redbull.com/int-en/juniorteam/drivers/athlete-profile-juri-vipsより)
DAMS(20年スポット参戦)→ハイテック(21年)
育成の名門で知られるRedBull育成ドライバー。本来であれば2020年は日本のスーパーフォーミュラに武者修行に来る予定であったが、コロナの影響で日本に渡航できなくなり、2020年はほぼ浪人のような状態になってしまっていた。その間に同じRedBull育成ドライバーでF2にステップアップした角田が2020年に大活躍したことでF1に昇格。2019年のFIA-F3時代は角田よりヴィップスのほうが良いランキングであったにもかかわらず、先に角田にF1に行かれる形となってしまった。
今期F2には3名のRedBull育成ドライバーが参戦しているが、3人の中では一番の実力を持つドライバーだとみている。昨年は一時的にDAMSのシートに空きが出たためにF2にスポット参戦して表彰台を獲得したことが評価されて、2021年はF2に参戦することとなった。F1のRedBull系列のシートは2022~23年に空きが出る可能性が高い(外様であるセルジオ・ペレスとの契約は1~2年で終了すると思われる)ので、それまでにF2で十分な成績を残せればF1昇格が見えてくる。
〇リアム・ローソン
画像はhttps://www.redbull.com/int-en/juniorteam/drivers/athlete-profile-liam-lawsonより
F3(20年)→ハイテック(21年)
ヴィップスと同じくRedBullの育成枠としてF2に今年から参戦。2020年はF2の下位カテゴリーであるF3で3勝を含む好成績を上げ、F2へステップアップした。
3名のRedBull育成ドライバーの中では唯一F2参戦が今年からであるため、一番実力が未知数。RedBull系列のF1チームのドライバー事情を考えると、この3名のうちF1にステップアップできるのは多くても1名だけだろう。ローソンはビップスとダルバラという経験で勝る相手よりも印象的な走りをRedBull首脳陣に見せることが必要となってくる。
〇ユアン・ダルバラ
画像はhttps://www.redbull.com/int-en/juniorteam/drivers/athlete-profile-jehan-daruvalaより
カーリン(20年)→カーリン(21年)
RedBull育成ドライバーの3人目はインド出身のダルバラ。20年シーズンはチームメートの角田の陰に隠れて目立った成績を残せなかったが最終戦で勝利。残留につながったか。
20年は大活躍のチームメートの角田と何かと比較されてしまい、いい印象を得ることができなかった。優勝争いをするチームメートを気遣うなどお行儀のよいドライバーだとは思うが、厳しいRedBull育成の基準を考えると、2年目の今年は20年の経験値を生かして少なくとも同じRedBull育成のビップス、ローソンを超える成績を残したいところだ。
〇ダニエル・ティクトゥム
DAMS(20年)→カーリン(21年)
若手の登竜門として格式高いマカオF3を2年連続で優勝したほか、RedBull育成としてピエール・ガスリーの後釜として日本のスーパーフォーミュラにも参戦するなど一時はF1に近いところまで到達した。
しかし、スーパーフォーミュラでの不振から2019年にRedBull育成から外されてしまう。それでも独自にF2に参戦し、昨年はDAMSでまずまずの成績を残した。
スイートスポットにはまったときの速さはピカイチなのだが、タイヤマネジメントに難があるほか、チームへの無線や元監督でDAZNのF2解説の中野さんの言外のニュアンスを汲み取るとどうも性格が気難しく難がありそうだ(中野さんは解説でドライバーの悪口は言わないが、元監督としてティクトゥムの話を振られるとどうも歯切れが悪い)。
しかし荒くても速いドライバーが経験とともに精神が成熟していくケースはF1にはよくある。一方で、いくら優等生だろうが遅いドライバーは経験を積んでも速くはならない。そういう点でF2で精神的な成長を期待したい。
〇クリスチャン・ルンガー
画像はhttps://twitter.com/lundgaardoffより
ARTグランプリ(2020年)→ARTグランプリ(2021年)
2020年はルーキーながら安定した成績でチャンピオンシップ7位の成績を残した。一時は角田よりもランキング上位にいたルンガーは角田がF2にいなければ期待のF2ドライバーとして2021年を迎えていたはずだ。
優勝のような派手な成績が少ない代わりにポイントを取りこぼさないスタイルはほかのドライバーに比べて陰に隠れがちになってしまう。Renault育成ドライバーはF2にほかに周とピアストリがいる。
ただでさえ席の少ないRenault系列ドライバーは、ほかの育成ドライバー以上にシートの奪い合いになる。ポイントだけでなくレースでの勝利のような印象に残るレースをしてチャンピオンシップに絡んでいきたい。
〇テオ・プルシェール
FIA-F3(2020年)→ ARTグランプリ(2021年)
プルシェールは2020年F3でチャンピオンシップ2位と好成績を収め、弱冠17歳ながら2021年はF2にステップアップした。
17歳でF1デビューしたマックス・フェルスタッペンという特例中の特例はあるが、それを除けば通常20歳前後で到達するF2に17歳で参戦するのはかなり早熟なキャリアだ。
やはり若くして頭角を現すものはその後のキャリアでも高い技術力を発揮してきた。アロンソ、ライコネン、ハミルトン、フェッテルと近年のチャンピオン経験者はみな何らかの最年少記録を更新している。
今年のプルシェールが活躍し、1年でF1昇格ということになれば将来のF1チャンピオン候補として活躍することになるだろう。今年F2でプルシェールがどのような活躍をするか楽しみだ。
〇佐藤万璃音
画像はhttps://twitter.com/sato_marinoより
トライデント(2020年) →トライデント(2021年)
日本人F2ドライバーである佐藤万璃音(さとう まりの)は2020年から引き続きF2にトライデントから参戦。トライデントは戦闘力のある車を作れるチームではないため残念ながら、佐藤は2020年にほとんど成績を残すことができなかった。2021年、佐藤はトライデント残留を表明したが、トライデントがいい車を用意しない限りやはり2021年も佐藤がよい成績は残せない。そしてトライデントがいい車を用意できる可能性は過去の実績から考えてかなり低いだろう。
2021年度は唯一の日本人ドライバーとしてF2に参戦することはうれしいものの、かなり厳しい戦いになるだろう。1戦でもいいから展開が味方して光るレースを見せてほしい。
〇ロイ・ニッサニー
トライデント(2020年) →DAMS(2021年)
事業に成功したニッサニーの父はF1を目指したが、目指すにはあまりに遅かった。ウイリアムズのテストドライバーとF2ドライバーを兼務するニッサニーは父親のF1への夢を引き継いでF2をドライブしている。
父親の強力なバックアップの元、ニッサニーはウイリアムズのテストドライバーとして、ウイリアムズのシートに近い位置にいる。
昨年は競争力のないトライデントのクルマに苦しみ、佐藤ともどもアピールするレース自体がほとんどなかった。今年はDAMSというレースができるチームに移籍したことで、ニッサニーの真の実力が試されるときになるだろう。
スーパーライセンスが取得できれば、資金に困るウイリアムズのドライバー事情と父親の資金力次第では2022年のF1デビューも決してありえない話ではない。
〇おわりに
気になるドライバーがいればランキングもチェックしてみよう。以下のサイトがF2、F3のデータが詳しい。
また、F3には日本人ドライバーでHONDAの推薦でRedBull育成に加入した岩佐が今年から参戦する。こちらもどのような成績を残せるか注目したい。
せっかく見放題なのでぜひ下位カテゴリーにも注目してみてほしい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?