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竹ってこんなヤツ。

竹は、万能な素材。
付き合えば付き合うほどに、知れば知るほどにそう思う。竹の存在が必要でない分野って、もしかしたらないんじゃないだろうか。

私と竹の出会いは、思えば祖父が私に作ってくれたままごと道具だった。

年に2度の家族総出での餅つき行事が大好きだった私に、節の窪みを活かして積み重ねられる羽釜や蒸し器と臼、杵を作ってくれたのだ。

高校生になり、日本の伝統文化や伝統工芸に関心を持ち始めて、色々と調べるようになる。そのきっかけでもあったように思う。

竹工芸の歴史は古い。

最古の品は、なんと縄文時代の遺跡から発掘された、藍胎漆器と呼ばれる竹籠。この時代にはすでに、現代で作られている編組法を確立していた。生活の根底を支える、必要不可欠な品だったことがうかがえる。


工芸品としては法隆寺に伝わる扇子が、奈良時代の作として最古の品とされている。

木材とは性質の全く異なる竹材。その竹材がここまで広く深く利用されてきたのは、6つの特徴ゆえである。

①割裂性
線維と平行に割れる性質。

②弾力性
杉の20〜30倍と言われる!
割れても折れない。東南アジアなどに行くと、高層ビルの建築現場の足場にも使われている。

③抵抗・負担力
横からかかる力に強い。上に重いものを乗せる屋根の梁や、ハシゴなどに使われる。

④抗挫力・抑圧力
上からかかる力に強い。
柱や机の足、杖や傘などに使われる。

⑤中空性
節の中の空洞を利用して、多くの楽器が生まれた。花器や食器としても有用。

⑥低伸縮性
乾燥しても反ったり縮まない!
狂いが出ないので、物差しや計算尺が作られた。

また、抗菌作用と鮮度保持能力も高い。竹の皮でおにぎり包んで竹の水筒を下げて出かける。これは実はとても理に叶った使い方なのだ。

そんな、木材にはない特徴を活かし、日本の伝統工芸と呼ばれる品物は、材料か、もしくはそれを作るときの道具に必ずと言っていいほど竹が使われている。
 

竹工芸品、というとものすごくたくさんの種類があるので、京都の竹屋さんの分野に沿ってご紹介を。

京都の竹屋の種類は3つ。ただ、今ではどれか一つしかやらないというところはほとんどない。なので、加工の種類として捉えていただけたらと思う。

まず、切ったままの竹を、割らずに加工する丸竹加工の竹屋さん。花器がメインになる。



それから、竹を割って竹ひごをしてそれを編む編組加工の竹屋さん。これがおそらく多くの方の想像する竹工芸品ではないだろうか。
竹屋として作る人もいれば、作家として活動されている人も多い。弟子を取る人もいれば、一子相伝の秘技となっているような特殊な編組法もある。



そして、竹垣を作る竹屋さん。青竹を使って作るものと、白竹を使って作るものとあるが、組み方は多様。

最初にそれを使った寺院の名を冠することが多い。金閣寺垣、龍安寺垣、建仁寺垣。などなど錚々たるメンツが並ぶ。
あとは、昔ながらの町屋の壁を囲っている犬矢来(イヌヤライ)なんかもここに分類される。京都のお茶屋や料亭は、年末になると竹具を新しい緑の青竹に取り替える。もうすぐそういう季節だなあ。

竹屋の商品としては挙がらないが、戦後プラスチックにとって代わられるまでの竹は生活に欠かせないものだった。農機具、漁具、カゴやザルなどの生活用具、紙や筆記具など文房具、スキー板などのスポーツ用具まで、あらゆるところに使われていた。

昔ながらの日本家屋も、柱や梁、土壁の芯材、屋根材、装飾品、垣根と、ほとんどすべての場所で活躍している。

直接竹を使う品物ではなくても、織物の横糸を整えるクシや、和菓子や料理に欠かせないヘラや箸、木工品で金属製の釘の代わりに使われる竹釘など、材料としての主役の顔も、道具としての脇役の顔も併せ持ち、竹はどんな工芸品のそばにもある。

最近ではインテリアとして、日本でも海外でも注目されている。

ほかにも、先に紹介した抗菌作用に加え、アトピーなどの炎症も抑えることができるとして、竹の繊維を編み込んだ竹布が注目されていたり、災害時の簡易避難所として竹の家が提案されていたりと、これからも注目される素材だと思っている。

それに、食べて美味しい。これも大切!

ざっくりとした説明になってしまったが、また改めて、それぞれを掘り下げた記事が書けたらと思っている。竹工芸に携わっていると言っているのに、あまりそれに関する記事が書けていなかったもので、ここで私の相棒をご紹介しようという次第である。

京都は今からが竹の旬だ。

あまり知られていないけれど、筍だけでなく親である竹にも旬がある。夏の竹は水分を含んでいて腐りやすく、堅牢性も冬に比べると落ちる。

私もそろそろ、自分の竹籠の材料の竹を迎えに行こう。

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