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【第2章-お金と仕事の仕組み-第5節】お金に対する考え方

[ お金は人生の全て?]

私たち日本人は、家庭や日常会話において、お金に関する話題を避けがちである。唐突に「あなたの年収はいくらですか?」「あなたの貯金額はいくらですか?」と質問されれば、多くの人達が不躾で無礼な人間だと思うだろう。家庭や学校においても、子供に対して職業内容や職位は自慢しても、給料の金額や貯金額を大っぴらに話す親は少ない。

「お金よりも大事なものがある」「お金では買えないものがある」「愛や家族、相手を尊重する気持ちこそが大事なのよ」と主張する両親が、仕事に文句を言いながらも今すぐ辞めないのは何故だろうか?

それは現在得ることができる収入が途絶えることで、継続的な支払いが必要な「家賃、食費、光熱費、燃料代、ローン、教育費、税金」を支払えるのかが、心配であるからであろう。

また「お金があるからといって、幸せになれるとは限らない」と主張する人間が、結婚相手や子供の進路において「よい学校」「よい会社」を推奨してしまうのは、何故だろうか?

それは「よい学校」「よい会社」に進んだ人間が、平均以上の「収入」や「社会的地位」を確立してきた事を実感しているからだ。

さらに「安物買いの銭失い」という言葉があるように、お金を奪われたり、すぐに壊れる物を購入して損をした場合には、私たちは強烈な怒りを感じてしまう。逆に不意のボーナスや、宝くじに当選して、思いもよらぬ大金を手にしたとき、人間は強烈な喜びを感じる。

このように、人間の生活や意思決定は、明らかに「お金」を中心に動いている。なのにどうして、人はお金に関する話題を避けてしまうのだろうか?本節では、お金に関する偏見を見つめ直し、お金と健全に向き合うための方法を解説していく。

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《人間はみな、お金の事ばかり考えている》

冒頭で述べたように、私たちの生活は金によって支えられており、全ての人間の行動は、お金を中心に回っている。食事、衣服、旅行、休暇の過ごし方、住居、仕事、結婚相手、進学先、子供を産むタイミング・・・。これら全ての行動選択は、自らの財布と家庭の懐事情と密接に関係しているのだ。

例えば食事においても、財布の中に3,000円しか入っていない場合には「500円のコンビニ弁当」を選択するはずで「2,000円でレストランのランチ」を選択することは無いだろう。家計が苦しい場合には、「旅行先はヨーロッパ旅行ではなく、隣県の温泉旅行」となり、給料が安い場合には、「住居は高級住宅街ではなく木造のボロアパート」となる。

「私は今いくら持っており、これであれば買えるだろう」「今はこれだけしかないから、これで我慢しよう」「うちの家にはお金が無いから、進学を諦めるしか無いな」「欲しいものがあるのに、お金が無いから今は買えない」「パートナーとしては理想的なのに、収入が低いから将来苦労しそう」「いまの仕事は好きじゃないけど、辞めたらお金に不自由するから・・・」

商品を買うとき、仕事を選ぶとき、結婚相手を選ぶとき、進学先を選ぶとき、ありとあらゆる状況において「お金の制約」が付きまとい、私たちに強烈な影響をもたらしている。多くの人間は人前で、お金についておおっぴらに話すことを躊躇するだろうが、「もっとお金があれば・・・」と四六時中考えているのだ。

《学術研究にも膨大なお金が必要》

これは知識や情報を取り扱う学者の世界でも同様であり、科学研究においては膨大な研究費用が必要となる。研究に必要な設備や材料(数百万〜数億円)、研究者の人件費、施設利用料、学会への出席に伴う移動費、海外の実地調査のための旅費と滞在費・・・。科学者は決して卓上で、パソコンと書類に向かって研究している訳ではなく、膨大な物理的実験を繰り返すことで、ようやく成果が達成できるのである。

iPS細胞でノーベル賞生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授も、9割以上の職員が非正規雇用である「京都大学iPS細胞研究所」の資金不足を改善するために、自らマラソン大会に出場し寄付を募っているのが現状である。「第1章第2節:学歴と職業選択」でも解説したように、日本の大学院においては、研究者達は研究費が乏しい環境において、ギリギリの状態で研究を行っているのが実態である。

だが、アメリカの教育機関においては、大富豪が創設した財団法人や、一流大学の卒業生が母校や研究機関に寄付を行っている。例えばロックフェラー財団は、「医療・健康」「自然科学」「社会科学」「芸術、人文科学」「国際関係」の5つに援助を行っており、財団の資金援助により大学院生は毎月の生活費と、研究費をまかなっている。金が集まるところには優秀な人材が集まる。優秀な学生や研究者が日本を見限り、欧米の研究機関や新興アジアの企業に転職するのも、結局は金が原因である。

このように、私たちは「お金が全てではない」と主張する一方で、「金に振り回され続け」「四六時中お金のことを考えている」というのが現実なのである。

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