見出し画像

CoSTEP受講エントリ〜サイエンスコミュニケーションに辿り着くまでの紆余曲折〜

2023年5月、私は北海道大学のCoSTEP選科Cの受講生となった。対外的には北海道大学の聴講生だ。ここに至るまでの紆余曲折を記し、CoSTEP受講エントリとする。


CoSTEPって何?

北海道大学 大学院教育推進機構 オープンエデュケーションセンターに設置されている、科学技術コミュニケーション教育研究部門 CoSTEP(Communication in Science & Technology Education & Research Program; コーステップ)は、 科学技術コミュニケーションに取り組む、北海道大学の教育・実践・研究組織です。

科学技術コミュニケーションの教育・研究・実践を、互いに有機的に関連づけつつ、学内外の機関と積極的に連携を進め、科学技術コミュニケーション活動を担う人材養成を行なっています。

CoSTEP公式サイト 拓く未来 CoSTEP概要より引用

機関の名前もCoSTEPだが、プログラムの名前もCoSTEPだ。ここでは、科学技術コミュニケーションの教育・研究・実践が行われている。公式サイトのトップには数々のイベントの告知がある。これらが、“実践"の一部だ。

先ほど選科Cと書いたが、これでは何のことがわからないので、少しだけ解説する。CoSTEPには対面での学びを主とする本科と、オンラインでの学びを主とする選科が存在し、どちらも1年かけて修了するプログラムとなっている。私はその選科の受講生だ。

では、Cとは何なのか。これは、選科の受講生で、なおかつ必修の集中演習AとCのうちCを受講する予定であることを意味する。2023年度、選科受講生はサイエンスイベント企画運営(集中演習A)とインフォグラフィック制作(集中演習C)のなかから一つを選ぶことになっている。そして、私は、インフォグラフィック制作を選んだ。

CoSTEPは、受講生が科学技術コミュニケーション、いわゆるサイエンスコミュニケーションの基礎を学び、実践していくプログラムだ。

それでは、私がサイエンスコミュニケーションに辿り着く紆余曲折に入っていこう。長い話になるが、お付き合いいただけると嬉しい。

私は研究者になれなかった〜22歳、失意の春〜

大学最後の年、私は卒業研究の最中にうつ病を発症して、逃げるように大学を卒業した。後に発達障害の一つ、ASD(自閉スペクトラム症)の二次障害の可能性を指摘されるが、その頃にはすべてが遅かった。

大学院入試は不合格、就職先は未定。おまけに、うつ病の影響で目が滑って文字を読むのもままならない。英文を読んでいれば、行を飛ばすのなんて日常茶飯事だ。

研究者になりたかった、なれなかった。その思いがこの頃から燻っている。

科学に惹かれつつ筆を取る〜理系ライター目指して執筆〜

いくつかの職を経て、私はフリーランスのライターになった。自身のマイノリティ性やそこからの意見を書く記事が多くを占め、それから大学時代の専攻に関連した科学に関する記事を少し書いていた。

理系ライターズ チーム・パスカル(以下リンク参照)の寒竹泉美さん(医学博士持ちの小説家/理系ライター)のような仕事をしたい、と思いながら、少しずつ進んでいった。


チーム・パスカルの大越裕さんと、株式会社TAMLOの石野雄一さん主催のプロライター道場オンライン(以下リンク参照)も、独立後の指針を考える上で大事な経験となった。課題へのフィードバックも的確で、嬉しかったです。本当にお世話になりました。


私がやりたい仕事、私にしか創れない価値を考え直す〜サイエンスコミュニケーションを通しての未来〜

理系ライターを目指していくなかで、理系ライターもいいけれど、研究への未練が捨てられなかった。どうにかして、研究する方法はないか。

あの頃自分を不安にさせたものは、アルビノからくるロービジョンゆえに、正しく実験できているか、結果を見られているか確証を持てない事実だった。過去を振り返ってその結論に達し、私は視力が低くても研究に支障のない研究分野を探した。

そうして、探し続けていったなかで、医学統計学に出会う。医学統計学で、難病など患者数が極端に少ない場合の治験デザインの研究をしてみたくなった。私の持病の一つ、アルビノはつい数年前に国の指定難病になったばかりで、患者数も少ない。

私はずっと自分の置かれた環境を改善すべく動いてきた。治療法ができかけたときに「治験ができません」とならないように環境を整えておくのも必要な仕事だと思ったのだ。

勉強を開始してしばらくの後に研究室訪問をした際には、研究をしようと思った経緯を嘘偽りなく述べた。自分のハンデがハンデにならず、かつ自分の目指すものと合致する分野である、と。

そのときに少しだけ「科学についてもっと書きたい」と話した。教授は、自分の研究室に来ないかもしれない訪問者に丁寧にキャリアの提案をしてくれた。

そこで提案されたのが、医学論文などの執筆をするメディカルライターの道と、サイエンスコミュニケーターとしてライティングをする道だった。

帰って調べてみて、サイエンスコミュニケーションの実践を通して自分の目指す事業が作れるのではないかと結論するに至った。

私のやりたいこと、それは、難病や希少疾患に関するサイエンスコミュニケーションだ。

難病については、偏見や、正確だけど不安を抱かせる情報が常に飛び交っていて、フラットに考える材料は限りなく少ない。科学的にも正しく、その上で当事者や当事者と関わる人々(支援者、就学、就労先)にとって必要で希望を抱ける情報、それを届けるコンテンツを、私は作りたい。

己を知り敵を知れば百戦危うからずなんて言うけれど、己を知るのに苦労をしなくてはならない人々に、判断材料を提供したい。

判断材料がしっかりあってこそ、自己決定権が尊重されていると言い切れるはずだ。

振り返ってみれば、中学生、あるいはもっと早くから、自身の疾患に関する情報の質の問題を考え続けてきた。科学的根拠があればいいのか。情報量があればいいのか。必要な情報は、何なのか。

ライターとして仕事をするなかで、どんな情報があるべきか、自分なりの答えの輪郭が見えてきた頃だった。


CoSTEPでの学び、実践を通して深めていく〜サイエンスコミュニケーションにおける基盤作り〜

将来的にこんな事業を作りたい、と決めて、周りの人に話していくと、そのうちの1人から北海道大学のCoSTEPについて教えてもらえた。

CoSTEPのよさは幅広く門戸を開いていることや、学費が安いこと、濃密な学びと実践の場であること……と数え切れない。

なかでも、サイエンスコミュニケーションの手法も学ぶが、考え方を学んで自分なりに結論を出して実践することを大切にしている点で、今の私には必要なプログラムだった。

ライティング以外にも、サイエンスコミュニケーションには様々な手法があり、基盤となる考え方がある。もちろんこれから新たなサイエンスコミュニケーションを創造していくことも考えられる。

サイエンスコミュニケーションの考え方を使って、事業を創り、持続可能なものとする。そのために全力で学び、思考し、実践する。

執筆のための資料代にさせていただきます。