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「社員満足度調査」に嫌気がさしていた私がHRサーベイを開発している理由

私が開発している「WorkEx」は一言でいうと、「HRサーベイ」です。
というと、「巷にはすでに色んなサーベイがあるのに、なぜ今更サーベイ?」とか、「あぁ、あの意味ないやつね」という心の声が聞こえてくるので、ここらで一つ、「なぜ今更、わざわざHRサーベイを開発しているのか」
を書いてみようと思います。

一番の理由は、世の中に出回っているHRサーベイでは、会社員のモヤモヤは解消されないと思うからです。
何を隠そう私自身、会社員時代は何だか常にモヤモヤしているモヤリーマンでした。しかし、そのモヤモヤを上手く言語化できず、きちんと会社側に伝えることができませんでした。そして、実はそういう会社員が多く(もはや、私の個人的な問題ではなく、日本の社会課題レベル)それこそが日本の生産性や幸福度、エンゲージメントなど諸々のスコアを下げている原因なのでは、ということに気づいたのです。

モヤモヤ…というのは、「今すぐ辞める理由はないけど、このままでいいのだろうか…」という漠然とした不安や焦り、課題感などを抱えながらも、組織に消極的に定着している状態です。
この状態は、個人の幸福度を下げていることはもちろん、企業にとっても、実は最も生産性を下げている、非常に残念な状態なのです。
特に日本の大企業においては、離職率よりも、このモヤモヤ(消極的定着)を解消することの方が生産性向上に繋がります。しかし、今現在、このモヤモヤを透明性高く徴取し、その原因や背景を把握し、改善に導く手段がないということに気づきました。

え…?こんなに色んな優れたサーベイやHR Techのサービスがあるのに、なんで、モヤモヤは解決できないの…?
ありとあらゆるサーベイを調べてみて、感じたことを書きます。

①聞かれていることが的外れだから
既存の社員満足度調査とか、エンゲージメントサーベイとかで必ず聞かれる項目「ミッションビジョンに共感できますか?」
そう言われて、「むむ!!絶対共感できない!!」という人、どれほどいるんでしょうか。
どこの会社も、立派なミッションビジョンを掲げています。
「XXで世の中を幸せにする」とか、「XXで未来を切り開く」とか…
それに対して「そんなの共感できない!!」という人、ほぼいないでしょうし、企業規模が大きくなるほど、「ミッションビジョンに惹かれて入社しました!」という人も少ないはず。(表向きは面接の場で「御社のミッションビジョンに共感し…」とか言うでしょうけど)

*もちろん、ミッションビジョンは大切です。
ただ「共感できるかどうか」が重要なのではなく、「ミッションビジョンをベースとした行動が出来ているかどうか」が重要で、出来ていないのなら、「なぜできていないのか」を深掘りして次のアクションに繋げていくことがサーベイの価値だと思います。

ミッションビジョン以外にも、「経営陣に対して親しみが持てるか」(大企業で、経営陣に会う機会なんかそうそうあるかい!)など、なんだかピンとこない設問が多く、結局アンケートの途中で思考停止して意識が遠のき、気づいたらほぼ全ての項目に淡々と「ややそう思う」を付けているだけ…という方、多いのではないでしょうか。

②聞かれていることが抽象的すぎるから
・「社員のモラルが高い」(モラルって…?そりゃあ、悪いことしてる人はそうそういないと思うけど…)
・「方針・目標が妥当である」(何をもって”妥当”…?)
・「会社を信頼できる」(そりゃあ毎月お給料もらってるから信頼してるけど、何をもって”信頼”…?)
・「仕事にやりがいを感じる」(感じる時もあるけど、そうじゃないときもあるし、そういや何をもってやりがいなのか。。うーん)
…というように、漠然とした抽象的なことを聞かれて何と答えていいのか分からず、ここでもまた思考停止し「ややそう思う」のループにハマってしまうことが多々あります。

③欧米か!
・「朝に目がさめると、さあ仕事へ行こう、という気持ちになる」
・「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる」
・「職場では、元気が出て精力的になるように感じる」
…いずれもエンゲージメントサーベイの設問ですが、
欧米か!と突っ込みたくなるような和訳。(島津先生、すみません)
いや、和訳が悪いのではなく、そもそも欧米人と日本人では感覚が違います。
にもかかわらず、欧米製のサーベイのLocalize版が日本企業に普及し、欧米人の感覚で「活力、ミナギルだろぉ~?(スギちゃん風)」と、質問をぶつけられた日本人社員たちは、
「うーん。。ややそう思う、かな…」と、ここでもまた「ややそう思う」の渦に巻き込まれていきます。

こういった「ややそう思う」という思考停止現象はなぜ起きるのか。
調査設計で何よりも重要な「仮説設計」が出来ていないことが大きな原因として挙げられます。
仮説設計で重要なのは、「うちの組織は良い状態に違いない」ではなく、「何か問題があるんじゃないか、こういう人たちの能力は活かしきれていないんじゃないか」といったように、問題があることを前提に仮説を立て、
設問設計をしていく必要があります。
その際に重要なのは、
・こういう人たちが(ターゲットの設定)
・こう感じているじゃなかろうか(課題の設定)
という2点を意識することです。

そうして、ターゲットと課題を絞り込んで仮説を定め、設問設計をすれば、
上記のような的外れな設問は出てこないはずです。
つまり、回答者は「あぁ、これこれ!そうなんだよ、こういうことにモヤモヤしてたんだよ!分かってるね~!」という気持ちで回答できるようになるのです。そうなれば「サーベイなんてやっても意味ないのに、なんで忙しいのにまたやらせるのか…」といったサーベイアレルギーもなくなり、「自分たちの声を会社側に伝える機会」と捉えるようになると思うのです。

モヤリーマンは問題児ではありません。
課題意識の強い彼らは、組織を良くするためのヒントをたくさん持っている、宝の山です。モヤリーマンの声を丁寧に聴取し、その原因に真摯に向き合い、的確な手を打つことで、個人のモヤモヤが解消されるだけでなく、一人一人の持つ力を最大限生かすことができる、本当の意味で良い組織・強い組織を作ることに繋がります。

WorkExは、私自身の課題感から生まれた、モヤリーマンによるモヤリーマンのためのHRサーベイです。
回答者の「分かってるね~!」が聞きたくて、日々、働き手の声の収集に励んでいます。



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