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『令和源氏物語 宇治の恋華』解説/浮舟<二>

みなさん、こんにちは。
次回『令和源氏物語 宇治の恋華 第二百七話 小野(一)』は、8月7日(水)に掲載させていただきます。
本日も解説 第十三章/浮舟<二>を掲載させていただきます。


 匂宮の執念

薫と結ばれた浮舟は穏やかな宇治での暮らしに満足しておりました。
生活は満ち足りて、何よりありがたかったのは母君と気兼ねなく手紙のやり取りをできるようになったことです。
元気に暮らしていることを喜ぶ母を安心させてあげられたことにほっと胸を撫で下ろすのでした。
しかし運命とは皮肉なもので、姉の中君に正月の挨拶と若君に贈りものをしたことから匂宮にその居場所を嗅ぎつけられてしまうのです。
新年の公務に明け暮れる薫の目を盗んで匂宮は宇治へと赴くのでした。
東宮にも昇ろうという愚かな親王はその身も顧みずに山道に分け入ります。そして女房の目を欺き、薫のふりをした匂宮はとうとう浮舟を我が物としました。
自分のものとした女には遠慮のない皇子は浮舟の気持ちを推し量ることもせずに、強引に口説くばかりです。しまいには言葉も発しない浮舟に拗ねる始末です。
浮舟はあまりのことで狼狽して、返す言葉もなくただ薫への申し訳なさでうなだれるのでした。

 女心・・・?

匂宮の無体な仕打ちは浮舟を傷つけましたが、浮舟の心は徐々に変化してゆきます。
「恋死にしてしまう」という歯のうくような宮の言葉にまんざらではないのです。よくよく見ると美しい男が自分を恋慕って死んでしまうというのが新鮮だったのか、何なのか・・・?
また、女房を手伝おうとする浮舟を「そのような召人の身分ではない」と窘めることが、まるで大切に扱われているように錯覚してときめくのです。
浮舟はいささか優柔不断な女性のようで、二つ心のある女性と蔑まれても仕方がないですね。
というのは、女性である私の意見でして、男性から見ればこのように従順な女性は魅力的であると捉える方も多いようです。
また、女性でも薫と匂宮のような二人に愛されて羨ましい、という意見も多く、女性ファンが多いのは否めません。
しかし体から始まる恋、というのがイマイチよくわからない私にはやはり浮舟は「???」と感じざるをえません。
(浮舟ファンの方、ごめんなさい)
ともあれ薫の居ぬ間に匂宮はしっかりと浮舟の心を掴むのです。
こんな関係はいずれ露見するものですが、愛欲に溺れる彼女にはそのようなことさえ考え及ばないのですね。

明日も解説/浮舟<三>を掲載させていただきます。


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