Jewelry Box Ep.11 お客様クイズ
ジュエリーには記憶が刻まれます。
ジュエリー業界一筋の私が、これまで垣間見たエピソードを紹介させていただきます。
今回のエピソードは、オーダーメイドのこだわりジュエリーを好むお客様のお話です。
登場する方々には了承を得ておりますが、携わったジュエリーは個人所有のものですので、デザイン画や画像を公開することは致しません。
Jewelry Box Ep.11 お客様クイズ
ジュエリーにこだわりを持たれるお客様はオーダーメイドでジュエリーをお作りになったりします。
自分だけのオンリーワン。
まさに究極のジュエリーといっても過言ではありません。
そして中にはそのご自慢の逸品を我々プロに見せびらかしたい、というお茶目なお客様がいらっしゃいまして、今回のお話はそんなお客様からのクイズにお答えした時のお話です。
それはとある百貨店のディナーショー催事に参加したときのことです。
「ディナーショー催事」という言葉はなかなか聞くことが無いかもしれませんので、ちょっと注釈を。
百貨店主催の催事なのですが、普段お世話になっておりますお客様を有名な歌手のディナーショーにお招きして、お食事も楽しんでいただくという催しものです。
お客様はドレスアップをして普段とは違う夢のようなお時間を楽しんでいただく場、と考えていただけるといいでしょうか。
「この石なーんだ」
と、そのお茶目なご婦人は仰いました。
そのジュエリーはカラフルな石がテニスブレス状に並んでいるブレスレットでした。
お揃いでネックレスもなさっておられます。
青、黄色、ピンク、グリーン・・・。
カラーグラデーション豊富なジュエリーです。
「全部同じ鉱物なのよ。何でしょう?」
お客様は悪戯っ子のように微笑んでいらっしゃいました。
このようにさまざまなカラーバリエーションを持つ鉱物といえば、ガーネットやコランダム。
いやしかし、そんな簡単ではないでしょう。
私は近くで見せていただいて、紫を含んだような青い石があることに気付きました。
その独特の色味。
これはタンザナイト・・・。
こちらもプロです。外すわけにはいきません。
「ゾイサイト、ですね」
「あら、簡単にわかっちゃったわねぇ。さすがプロだわ」
そう仰って、あまりビックリもなさらなかったのですが、拍子抜けされた感じでした。
しかし同じ大きさでこのカラーバリエーション。
作ろうと思ってもまずルースを集めるのにひと苦労です。
「こちらのジュエリーまずは石を揃えるのが大変だったのではないですか?」
「そうなのよ。ずいぶんとあちこち探してくれたみたい」
「制作された方の心意気を感じます。一点ものですしね」
そうしてご婦人はとても喜ばれて、楽しいお時間を過ごされました。
私もプロとしての面目を保ちましたし、こういう挑戦ならウェルカムですよ♥