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紫がたり 創作部分解説『玉鬘』後編

みなさん、こんにちは。
本日も『玉鬘』の帖についてお話致します。
この帖では私は玉鬘姫の心裡を重視して描きました。

玉鬘の運命はとても数奇ですね。
本来ならば大臣家の姫としてかしずかれた身分ですが、夕顔は頭中将の気の強い北の方(右大臣の四の姫)に嫌がらせを受けて行方をくらましました。
それから思わぬ源氏との巡り会いに突然の死を迎えたのは玉鬘の知らぬことです。
 
ともあれ玉鬘姫は乳母一家と共に筑紫に下り、姫と大切にされながら育てられてきたのですね。
ですが、本人にしてみればどこの姫なのか、父という人はどのような人なのかも漠然として、年頃になれば田舎の名士に迫られるという顛末。
私はついに玉鬘姫が大夫監と結婚する意志を固める、というところまで書きました。
玉鬘は人柄が好ましく、紫の上にも可愛がられる姫ですが、やはりその背景には乳母たちに申し訳ないと思いつつ、どこか遠慮をしながら暮らしてきたのではないかと思うのです。

これからの帖では源氏が玉鬘に懸想していくことになりますが、一般的に物語の面白さから色じみたその部分だけに焦点を当てられがちです。
ですから玉鬘の為人を描く部分はこの『玉鬘』の帖をおいて他にはないと考え、思い切った創作をしました。
 
そうしてついにお寺詣でで右近の君と巡り会うのですが、ここの部分はくどくどしいのです。
一緒にご祈祷したとか細かいことはざっくり省きました。
その方が前半の印象が強く残るからです。
そして六条院に迎え入れられた時の情景を描いた方がドラマチックになりますでしょう。

大夫監の熊本弁はわすが2セリフでしたが、リアルを感じていただけた、と貴重なコメントもいただきました。
ありがたいことです。
平安女性のおもうままに生きられないことに共感してくださったご意見も現代に生きる私達には憤りを感じるポイントであり、ごもっとも。
ありがとうございます。とても励みになります。

私はこれから先も自分なりの解釈の創作部分を盛り込んでゆきます。
よろしくお付き合いいただければ幸いです。
 
繰り返しますが、受験生の方や学生さん、私が書いた源氏物語は多分な創作部分、省いた部分がありますのでお気を付け下さい。
 

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