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あいのうた

ただ歩く、この大きな荷物を背負って。
大任を担える者を願って生まれたのが私なのだ、と大神はおっしゃった。
灼熱に燃えたぎる背中の荷物は私を焼き続ける。
それでも私は歩みを止めない。
彼女に会えるからだ。
ああ、そろそろ・・・。
暮色に染まる世界は、刹那、スローモーションになる。

いつものように彼女が馬車に乗ってやってきた。
白髪に腰の曲がった老女はにこりと笑った。
「あなたは今日も大変そうだわ。ご苦労さま」
「やぁ、君は今日もきれいだね」
「こんなお婆さんをきれいだなんて。あなたしか言ってくれないわ。でも、ありがとう」
「私が嘘をつけないのは知っているだろう」
彼女はうふふ、と笑うと通り過ぎて行った。

翌日の夕暮れ、馬車に乗ってきたのは栗色の髪の少女だった。
「その背中は痛くはないの?」
彼女は心配そうに首を傾けた。
「君の可愛い顔を見たら痛みなんて忘れるよ」
彼女は嬉しそうに笑うと通り過ぎて行った。

半月ほどすると、透き通るような金色の髪の乙女が馬車に乗ってやってきた。
「ああ、やっとあなたに釣り合うようになったのに明日からまた年上になっちゃうわ」
「君はどんな姿でも美しい。愛しているよ、セレネー」
「私も愛しているわ、ヘリオス」
頬を染めて輝くばかりの微笑みを浮かべながら彼女は通り過ぎて行った。

私が足を止めれば大地はこの背の日輪に焼かれて大干魃になる。
彼女が馬車を留めれば月の引力に引かれた海が大津波を起こす。
私たちが共に歩むことはない。

私は恋愛小説を読まないので、それらしきものが書きたくても、ファンタジーに寄っていってしまう、というのが今回よくわかりました❕
うーん、ビミョーです😅

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