紫がたり 令和源氏物語 第四百三十五話 幻(四)
幻(四)
二月になると、明石の中宮は内裏へ戻られました。
しかしやはり父・源氏のことが気懸りであるので、三の宮(後の匂宮)を二条院に残されることにしたのです。
紫の上が養育した孫のなかでも特に可愛がり、明るく活発な三の宮がきっとこの二条院を明るく照らしてくれるであろう、という中宮の配慮によるものでした。
自責の念から勤行に明け暮れて、心を巌のように堅くしていた源氏もかわいい孫の姿を見ると、そのまなざしが緩むようであります。
「おばあさまが私にこの梅の守をせよとおっしゃた