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#cakesコンテスト2020
もしあの時あの場所を選んだなら、どんな私になっていたのだろう
視界を埋め尽すビルが、イルミネーションのように輝く街。グレーのダウンコートのファスナーを胸元まで上げた19歳の私は、窓に無数に宿るオレンジの光をぼんやりと見つめながら、ゆっくりと歩いていた。
歩道の両脇に並ぶ街灯やコンビニの灯りに、煌々と照らされ白んだ空。それを背景にそびえる1棟のビルが目に留まった。
18歳の冬。私は母と不動産屋さんと一緒に、そのビルの一室にいた。ベッドを置いたら、半分が埋め