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テクノロジーによる便利の罠

 テクノロジーによる便利さが却って害を引き起こす。それに気付いたのはアマゾンプライムを辞めたときでした。


 入ったいた理由は、以前はアマゾンプライムの年会費にプラス数百円程度でアマゾンのゴールドクレジットカードが手に入ったから。

 ポイントがたくさんつく。少額の買い物でもお急ぎ便ですぐに到着する。
 このカードが長らく私のメインクレカでした。


 辞めるきっかけになったのは、そんなプライム会費にちょっとプラスαするだけでゴールカード相当のサービスが受けられる、大盤振る舞いのサービスが終了したとき。

 私のアマゾンのゴールドカードは、ただのカードになりました。
 アマゾンプライムを使いたかったら、別途自分で会費を払って入会しないといけなくなりました。


 アマゾンは確か、「お客様が一分一秒でも荷物が早く到着することは歓迎しかしない」の精神で、絶え間なき配達の効率化・高速化に邁進していたと聞きます。

 が、わたしはこのとき考ました。

「アマゾンのお急ぎ便で荷物が届かないと困ったことなんて、何度あったっけ?」
「配達量の増加で配達員さんが疲弊していると伝えられるなか、わざわざ急いで届けてもらわねば困ると言い張れる荷物なんて、はたして何個あったっけ?」

 たった一度だけ、急いで届けてもらわねばならなかった荷物があります。
 あれはコロナが流行る前、季節外れのインフルエンザに罹った自分が、家に病人向けの食料もなくおちおち買いにも出られなったとき。
 そんなときにアマゾンで頼んだ飲食物が一日足らずで到着したとき、それがどれほど有り難かったか。

 でも、その一度だけです。

 数え切れないほどあれだけ沢山アマゾンで買い物したのに、お急ぎ便を使うにふさわしい買い物が、それ以外全く思い浮かびませんでした。

「ほんとうにお急ぎでない荷物以外、お急ぎ便を使うのをやめよう」
「無駄にお急ぎ便を使って、現場の配達員を無駄に疲弊させるのはやめよう」

 そう思って、あえてアマゾンプライムの更新手続きをしませんでした。


 アマゾンプライムから抜けて気付いた、思わぬ多大な恩恵、あるいは便利すぎることの弊害があります。

 それは、送料無料の最低ラインがあるので、買い物に一呼吸おいて、結果的に買わないことが増えたこと。

 以前は「これがほしい」と思うたびにカートから購入に進んでいました。だって何を何個いくら買おうが、送料はタダだから。

 しかし、アマゾンプライムを抜けると2000円以上買わないと送料がかかります。(※出品者によって違いあり)

 少額の小物は当然それだけでは送料がかかるので、あとで何かとまとめ買いするか、とカートに置いて放置するようになりました。
 2000円以上の大物も、あとで小物と一緒に買うときに送料無料役として使えるかもしれないと、急ぎでない限りいったんカートに放置するようになりました。

 するとどうでしょう。あとでカートをみると

「なんで私、これをこんなに買おうとしたんだっけ?」
「やっぱり買わなくていいや」

 なんて、お買い物の頻度や金額が圧倒的に減ったのです。
 お財布に優しくなったのは言うまでもありません。


 便利すぎると、却って自分や他人の害になる無駄な行動をしてしまう。

 そのロジックを痛感してからは、最新テクノロジーが謳う【便利】には背を向け、むしろあえて不便を生活に取り入れるようにしました。

 Kindleの読書はあえてKindle Paperwhiteに切り替えました。
 長らく読書端末としてもブラウジング端末としても万能優秀なiPad miniを使っていましたが、これは優秀すぎて、気を抜けば読書でなくネットサーフィンを始めてしまっていたことを自覚したんです。
 案の定、読書の時間は圧倒的に増えました。積読の消化が捗る捗る。


 SNSはスマホでは一切アクセスせず、自宅のPC、それも起動に時間がかかる古いマシンでからのみ使うようにしました。

 思えば私が子供のとき、いくらネットにハマッていたといっても、出先で通知が気になるからわざわざ家に帰るようなことはありませんでした。

 いまは出先でいつでもSNSにアクセスできる習慣が根付いてしまっているから、街中を歩いているときでも、お買い物をしているときでも、久々にあった大事な人と食事しているときでさえ、SNSが見たくなってしまう。

 あえて家からめんどくさい手段でしか使わない。
 そうSNSのマイルールを徹底することで、一ヶ月もすればわざわざお出かけしたのに結局出先でSNSをやっているだけ――そんな時間は圧倒的に減りました。


 便利を供給するITエンジニアの仕事をしていてこんなことを言うのもなんですが。
 便利を疑い、あえて便利と距離を置くことで生活がより豊かになる時代だと、つくづく痛感するのです。

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