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失命嗜好『死』というものに初めて興味を抱いたのは、小学六年生の頃だった。 きっかけは大したことではなかった。いつも目にする夕方のニュース。よくある交通事故で同い年の女の子がひとり、死亡。 当事者以外の誰もが次の日には忘れる、よくある話。けれど。 そのときなぜか、ある疑念が湧いたのだ。 わたしの心に、ぽつり……と。 『死って、どんな感覚なんだろう? 死ぬって、どんな気分なんだろう?』 人は死んだらどうなるのか、とか、魂とか天国地獄とかはどうでもよかった。 ただ
降ってきたアイツ「杏子ちゃんと話ができますように、杏子ちゃんと話ができますように、杏子ちゃんと……!」 夜空を見上げるのも、願い事を口に出すのもずいぶん久しぶりな気がする。星に願いを、なんて言うだけなら簡単だが、見えなくなるまでに三回連続で唱えるとなるとなかなか難しい。 「最後の方が微妙だけど、まあ大丈夫だろ」 晴れていればナントカ座の流星群が見頃――そんなニュースが流れていた、ある日の夜。夕食を済ませたぼくは自転車を駆り、近所の高台までやってきていた。地方、それも山に近
春の穏やかな風に頬をなでられて、私は目を覚ました。 病室の白いカーテンがふわりとなびいて、私はそれにつられるように大きなあくびをする。昼下がり、窓際で過ごすひとときは眠気を抑えているほうが難しい。 「こら、ミク。また勝手に病室に入ってきたな」 続けて伸びをする私を、部屋の主がとがめた。 ベッドの上で、ひとりの少年が私に視線を注いでいる。だがしかしその声はとても優しく、そして――力がない。 「誰かに見つかったら大変だよ。せめてパパと一緒じゃなきゃ」 少年はベッドに体を
夏休み真っただ中のとある日、オレたちは学校のプールに忍び込んだ。 茹だるように暑い日の、熱を帯びたままの真夜中だった。 「ひゃ~! 超気持ちいい!!」 「お前も早く来いよ!」 ざばん、ざばんと盛大にしぶきのあがる音が響く。連れ立って来た仲間二人は早々に水中へ身を投じたようで、もし水が張られてなかったら、という心配は杞憂に終わったらしい。着替えの遅れたオレは足早にプールサイドに上がると、二人に続くべく水面にダイブしようとして―― ふと、踏み出す寸前の足を止めた。 「今日
あの世とこの世を分かつ三途の川ほとり、死後の世界の一歩手前。ここ賽の河原では今日も、子供たちのすすり泣きく声が絶えず聞こえていた。 子供たちは功徳のため、親不孝の罪を償うためにと、血と汗を流しながら、石を運んでは積み、運んでは積みしている。しかしその石積みが適当な高さになってくると鬼がやってきて、適当な難癖をつけて石積みを打ち崩してしまうのだ。そうして子供たちはまた石を積み、また壊され、が延々と続く。 それが賽の河原の日常であり、何百年ものあいだ繰り返され続ける光景だっ