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かくもゆるき一日

100年ぶりくらいに朝はやく目が覚めた。
そこまでは良かったものの、朝食をとったあとに再びソファーでまどろんでしまい、一日活動して帰宅したのち、ソファーで本を読んでいるとまた寝てた。いや、どんだけ!

本を片手に寝落ちしたくせに、開くと読みかけのページにはしっかりとしおりが挟まれていて、物語への執念が感じられたのであった。


ふたたび読み始めるわたしの隣で、母は夕食の支度をしている。
今日の献立は、わたしの大好きなハンバーグ。

ちなみにだけど、母のハンバーグは世界いち美味しい。
(まるで小学生のような発言!しかし、さすがにそれはわたしにとってだけなのだということをわかっているので、わたしは立派な大人である)

ふつう、レストランやカフェで出てくるハンバーグというのは、これでもかというほどよーくこねられており、肉片も残っていないほど滑らかな舌触りのものが多い。

しかし母のハンバーグは、しっかりとした肉の歯ざわりを感じることができるものである。

肉片の隙間から溢れる肉汁、
一旦炒めることをせずに生のまま混ぜ込まれた玉ねぎのシャキシャキした食感、
ツンと香るニンニクもたまらない。

あーーー美味しい!
幼い頃と寸分たがわぬ思いでそう言うと、

「優香がいると作りがいがあるわあ」

と、笑って母が言う。

まるで育ち盛りの男子中学生みたいに、口いっぱいにハンバーグを詰め込んで思いっきり頬張る、この至福。

ハンバーグ、ごはん、ハンバーグ、ごはん。なにこれなんぼでもいけるやん、と思いながら無心でわしわし食らっていると、大サイズ二個あるうちの一つを食べ終える頃、ごはんはなんと一口ぶんしか残っていなかった。

いつもおかずとごはんをぴったり食べ終えられることだけが自慢の、このわたくしが……。
恐るべし、母のバーグパワー。

なんだか、えーい!もうここは中学男子になりきってしまえ!という気持ちになって、わたしは元気よくおかわりをした。
お茶碗にあつあつごはんをこんもりと盛り、二つ目のハンバーグに取り掛かる。

おかわりしたぶんも綺麗に食べ終え、わたしは満足げなため息をつく。
あーーおいしかった!ごちそうさまでした!


たべて、寝て、動いてたべて、
読んで、また寝て、また食べて。

ゆるゆると、しかし怠慢なことはなく、
非常に充実した一日であった。

睡眠と書物と、おいしいもので過ぎゆく時間。
ああなんて、なんてすばらしい!

ビバ夏休み!な一日だったのでありました。


#エッセイ #夏休み #実家 #帰省

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