嫌われたくないやいやいや
突然ですが、質問です。
「嫌われる勇気」なるものを、あなたはお持ちでいらっしゃる?
わたしは、持っておりません。
9年間もの義務教育を終えて高等学校も卒業し、晴れて人間関係のしがらみから解き放たれた4年前。
中・高時代はそうでもありませんでしたが、特に小学生の頃、人間関係のあれこれに対して非常に心を砕いてきたことを思うと、大学においての人付き合いというのは夢のようでありました。
まず、クラスというものが存在しない。
ゼミなどの半強制的な繋がりはあれど、その中でやるべきことさえこなせば、あとはその人たちと付き合うも付き合わないも個人の自由です。
自分が属したいと思うコミュニティにだけ属し、その中でさらにお話したいと思う方や好もしく思う方、尊敬できる方のみと交流を深めていけば良いのです。
まあ、なんと楽なのでしょうか。
居心地の良くない人と付き合わなくていいというのは、顔の引き攣るような愛想笑いや、相手の顔色を伺って心を疲弊させることと無縁になれるということです。
少なくとも社会に出るまでは、人間関係に頭を悩ませることなく、そうやってぬくぬくと過ごしていけるのだと、信じきっていました。
つい先月までは。
詳しいことは伏せますが、わたしのアルバイト先の従業員は大半が女性です。
そのうちの9割を40〜60代のパートさんが占めており、残りの数名は学生アルバイト。
2つ年下の女の子がいます。仮にNさんとしましょうか。
気のせいかな、そんなことないよな、と自分に言い聞かせつつ1ヶ月以上様子を見ておりましたが、どうやらわたしのことが大層お気に召さないらしい。
本日は、特にあからさまでありました。こちとらちょっと、我慢なりませんよ。
出勤したらこちらは毎回、笑顔で元気よく挨拶します。
「おはようございます!」
社会的に立派な大人とみなされる年齢の者としては、当然のマナーですからね。
「……ようございます。」
返ってくるのはいつも、うつむきがちのつぶやきです。
今日は元気がないのかな? と思うことにします。他の従業員には随分と明るく挨拶しているようでありますが。
アルバイト内容の中には、他の従業員とペアになり、20分ほど二人でこなさねばならない業務があります。
今日はNさんとペアになりました。二人きりになるのは三度目くらいでしょうか。
しんとした空間で(私語が禁じられているわけでは全くない)、10分以上の沈黙というのは耐え難いものがあります。
拒絶オーラをひしひしと感じてはいましたが、思い切って口を開きます。
「冬休みはどっか旅行いったりするの?」
「いえ、行きません。」
食い気味&早口の回答をいただきます。
「そっかそっか!あ、ライブ行くって行ってたっけ? 外れちゃったんかな?」
「ライブは1月に行きます。冬休みはずっとバイトです。」
「そっかそっか〜!」
「(返事なし)」
普段+ダブルシャープくらいの声色で、そっかそっかおばさんと化しました。
しかし、負けてはいられません。もうひと押し。
「めっちゃバイト入ってるんやね!服とかよく買うの?」
「いえ、あまり買いません」
「そっかそっか〜!まだ二回生やもんね!」
「(返事なし)」
そっかそっかおばさん、ふたたび。動揺のあまり、意味不明な相槌まで付け加えてしまいました。
もう心折れました。許して。
その後も、退勤までに似たような出来事がエトセトラ。
みんなにそのような感じなら、まったく気にならないんですよ。人見知りの気持ちはめちゃくちゃよくわかるので。
しかし、他のアルバイトやパートさんにはすれ違うたびニコニコと自分から話しかけ、時に抱きつきかねんほどのボディータッチもし、かわいらしい笑顔で接しているのを普段目の当たりにしているぶん、もやもやは否応なく募ります。
あるいは、明らかにわたしに非があるとか。
なんやろう、めっちゃ考えてるんですけど、その子より仕事の手際が良くないことしか思い当たらない。もしくはこの丸顔が気に食わんのか。
立ち入ったことを無遠慮に聞いたこともなければ(大学すら知らん)、これはあかんやろというほど迷惑をかけた覚えもなく、常に他の従業員と同じように笑顔で挨拶をし、機会があれば世間話を振り、そういうことしかしていない。のに。
自分でも情けないとは思うのですが、10年以上前に人間関係で悩んでいたときのことが、久しぶりにフラッシュバックしてきました。
沈黙の続く密室の中、手には汗が滲み、心拍数が上がってゆくのを感じます。
理由は皆目検討もつかないが、どうやら年下の女の子にあまり好かれていないらしい。
たったそれっぽっちの事実で、何をびくびくしているのでしょうか。無意識のうち、媚びるような声色を使っている自分がほとほと嫌になりました。
泣きたい!!
わたしを嫌わないで!!!
誰かを好きになることはあれど、わたしの場合その他大勢は「ふつう」に過ぎず、積極的に嫌うことはまずしない。
そんなことを考える前に、意識の外にやってしまうのが常なのです。
だから、こうもあからさまにされると落ち込みます。
一体全体、わたしの何が気に入らないのでしょうか。聞きたい。
でも、聞いたところで「え、別に何もありませんけど。」と言われるのは目に見えています。
残念ながら、小公女セーラやシンデレラのような健気さ、清く美しい心は1ミリたりとも持ち合わせていませんので、毎度これが続くようならちょっとあんまり舐めんなよ? という気持ちにもなる。
わたしと並んで歩きながら、他のアルバイトと意味ありげな目配せするのをやめて!
スキップしながらパートさんに近づいて話しかける、その愛想の1パーセントでもいいから
わたしに向けてくれ!!
「好き」じゃなくても全然、ぜんっぜんいいよ。
ただ、ある一定の年齢を超えた人間として、挨拶や愛想笑いや世間話は、最低限のマナーであると思うのです。
たとえそれが、好きじゃない相手だとしても。
これから社会の荒波に揉まれるであろうわたしに、神が与えた予行演習なのでしょうか。
理不尽、不条理、不可解でしかない。久しぶりに心が摩耗するのを感じました。
気にするようなことではない、うまく立ち回ればいいのだと思っていても、シフトが被るたび心に緊張が走ります。
そっかそっかおばさんとして、強い心で生きていきたいと思います。
ご静聴ありがとうございました!!!
最後にかわいい動物を載せて終わります。
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