見出し画像

コロナ禍でのインドのスタートアップの取り組み

こちらのnoteでは資金調達を発表したインドのスタートアップ情報を毎週発信していますが、今回は番外編として、新型コロナウィルス状況下でインドのスタートアップがどのような取り組みをしているのかをご紹介したいと思います。

5月16日現在インドでは81,970人の感染者が報告されており、これは日本の現在の感染者数の約5倍にあたります。インド政府は3月25日に全土でロックダウンを発表し、13億人の全国民に対して原則外出禁止を義務付けました。この措置により国内の経済活動の多くがストップし、日雇い労働者らを中心に失業者が急増しています(現地メディアによるとインドの失業率は4月時点で27.1%にも急騰したとのこと)。

そんな混乱の渦中で希望を失わず、この困難な状況を乗り越えようとする取り組みも多く行われています。インド政府は新型コロナウィルス感染拡大を食い止める目的で作られたAarogya Setuというモバイルアプリの無料配布をはじめたり、初診を含めたオンライン診療を正式に解禁したりしました。またインド最大の慈善事業団体であるタタ財団はパンデミック対策のために1500クロール(約210億円)を使い、最前線で働く医療従事者のための保護服・マスク、そして医療機関で使用されるPCR検査キットや呼吸器などを提供すると発表しています。更にVCや起業家が中心となって「Action COVID-19 Team (ACT) 」という寄付ファンドが組成され、新型コロナ感染拡大防止のためにイノベイティブなソリューションを提供するスタートアップの支援が開始されました(微力ながら当社もこのACTの活動に参加しています)。

ロックダウンによってインド国内の多くの企業活動に影響が出ていますが、逆に当社のインドの投資先の中にはコロナショックが追い風になって事業を伸ばしている企業もあります。例えば、外出制限が発表された直後から、生鮮食品や日用品のデリバリーサービスを提供するMilkbasketには注文が殺到していますし、クラウドキッチン立ち上げのためのキッチンスペースや配達インフラを提供するKitchens@にはレストランや料理人からの問い合わせが急増しています。

前置きが長くなってしまいましたが、今回はこのような状況に合わせて様々な新しい取り組みをはじめた当社の投資先をいくつかご紹介したいと思います。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

■ 1. HackerEarthhttps://www.hackerearth.com/ )

画像1

企業向けにエンジニアの採用ツールやオンラインハッカソンプラットフォームを提供するHackerEarthは、インドのトップビジネススクールであるIIM Bangaloreと共同でhackCOVIDというオンラインハッカソンイベントを開催。hackCOVIDでは、世界中からエンジニア・デザイナー・データサイエンティスト・ソーシャルワーカーなどが集まり、制限時間72時間のなかでコロナウイルスの発生とその影響を緩和するプロダクトのプロトタイプを企画・開発しました。このオンラインイベントには世界中から参加者が集まり、ヘルスケア・行政・観光・経済・Eラーニングといったサブテーマに沿ってオンライン上で活発な議論と開発が行われました。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

■ 2. Revvhttps://www.revv.co.in/ )

スクリーンショット 2020-05-16 11.52.04

自動車レンタルの予約サービスを提供するRevvは、政府の外出制限によって公共交通手段がストップし、通勤が困難な医療従事者らを輸送するサービスを開始しました。デリー・ムンバイ・プネ・ベンガルール・チェンナイの5都市で1,000台の車両を確保しており、医療従事者はRevvのサービス予約時に従事している病院の身分証明書を提示することで車両を利用することが出来ます。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

■ 3. Healthianshttps://www.healthians.com/ ) 

スクリーンショット 2020-05-13 10.18.32

Healthiansは在宅での健康診断サービスを提供するスタートアップです。通常は、利用者が予約を申し込むと専門の検査員が家やオフィスに来て血液や尿の採取を行い、それが提携検査施設に送られ当日中にオンラインで検査結果が確認できます。Healthiansの健康診断は生活習慣病関連の検査項目が多いのですが、今回のコロナショックを受け在宅及びドライブスルーでのPCR検査の提供を開始しました。

画像3

HealthiansのPCR検査専用のヘルプラインにまずは電話し、その後身分証明書や必要書類をオンラインでアップロードすることで予約が完了します(現在はデリーNCRとムンバイでのみ提供)。PCR検査は外部との接触を最小限に抑えるため、感染の疑いがある患者の家、もしくはHealthiansが提供する専用ドライブスルーで、防護服を着た専門の検査員により行われます。検査プロセスは医療ガイドラインに沿って行われ、検査結果は48時間以内にメールで受け取れることになっています。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

■ 4. Niramai https://www.niramai.com/ ) 

スクリーンショット 2020-05-13 8.07.10

サーモグラフィカメラで撮影された乳房の画像をAIで解析し、高精度で乳がんを判定・検知するソリューションを提供するNiramaiは、自社のもつ技術を利用してコロナウィルスの感染拡大防止の取り組みをはじめました。

スクリーンショット 2020-05-13 10.08.00

コロナ患者の一般的な症状は主に発熱や咳と言われており、現在インド国内の病院や特定の公共施設では建物内に入る際に発熱や急性呼吸器疾患の症状がないかを確認されます。その際におでこへ赤外線体温計をあて体温を測定されることが多いのですが、この方法では検査員にも感染リスクが伴いますし、時間がかかり一度に多くの人数を測定することができません。また体温が高いというだけではコロナに感染しているという十分な徴候にはならないのです。Niramaiが今回提供をはじめたソリューションは、高解像度のサーモグラフィカメラで撮影された熱画像から、一度に多くの人の発熱と呼吸器の症状をAIでリアルタイムに自動検出することができます。コロナ感染が疑われる症状が検知された場合はアラームが鳴らされ、PCR検査に移る前にNiramaiが提供する別の胸部画像検査で呼吸器の状態を検査されます。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

■ 5.  mfine ( https://www.mfine.co/ )

mfineはオンライン診療のスタートアップです。病院の医師と患者をスマートフォンアプリ上で繋げ、患者はビデオコール・音声コール・テキストチャットなどを通じて医師からの病気の診断を受けたり、処方箋を発行してもらえたりすることができます。mfineは病院の専門医と提携してこのプラットフォームを運営し、また独自データーベースと人工知能(AI)エンジンにより効率的で最良の診断を患者に対して行うことが可能となっています。mfineは今回のコロナ渦でいち早く感染拡大を防止するための施策を打ってきました。

画像7

こちらのmfine Radarはインドの都市や地方別に、新型コロナ感染が確認された人・感染の疑いがある人・回復者・死亡者のそれぞれの数を表示しています。特定の日数や週数を設定してグラフ表示させ、感染拡大がどのくらいのスピードで進行しているのかを確認することもできます。

スクリーンショット 2020-05-13 10.27.29

更にmfineでは、AIチャットボットを使った新型コロナウィルスの感染の可能性を示すソリューションの提供をはじめました。mfineのWebやモバイルアプリ上で、症状や発症時期などに関してmfineのAIチャットボットの質問に答えていくと、新型コロナウィルスの感染リスク診断を受けることができます。感染の可能性が高いと判断された場合はmfineの提供しているオンライン診療サービスに繋がり、専門医の診察をリモートで受けることができます。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

危機から機会を見出し、知恵と技術を結集して新たな価値創造をしていく投資先の姿を見ていると、withコロナ・afterコロナの時代はそれほど悲観すべきものではないように感じます。私達BEENEXTとしても投資先の成長を支えるため全力でサポートしていきます。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------


ご質問等はTwitterからDMでお願いします。

#テクノロジー #インド #スタートアップ #ビジネスモデル #VC

ご覧いただきありがとうございます。継続して書いていけるよう頑張ります。