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教育格差

今回は松岡亮二さんの「教育格差」という本をよんだのでご紹介しようと思います。

「教育格差」という言葉は恐らく、生きてきて何回も聞いてきた言葉だと思います。

ただ、「教育格差」は複線的な要因が重なり合っているので、抽象的なイメージだけで留まっている人が多いと思います。

そこで、この本の著者である松岡さんは、膨大なデータを基に客観的な事実として「教育格差」という問題を浮かび上がらせたのです。

執筆はかなり骨の折れる作業だったと推測できますが、松岡さんの教育への熱い思いが文章の節々に感じられ、それが原動力になっていることも感じられました。

こういう本に出合った時、本当に勇気を貰えます。

さて、本の中身に入っていきます!

データからみた教育格差のとは何か?

本書では、両親が”大卒非大卒か”、”大都市圏非大都市圏か”によって子どもの教育の傾向(学歴、努力量、メディア消費時間、大学期待度)がどうなっているのかを明らかにしました。

調査した結果、両親が大卒のほうが、大学以上の学歴、努力量が多く、メディア消費時間が少なく、大学期待度が高い傾向があるという結果でました。

つまり、大卒の両親のもとに生まれた時点で、非大卒の両親のもとに生まれるより有利だというのです。

また、大都市圏と非大都市圏では大都市圏で生まれ育った子どもも、前述のように初めから有利な環境にいるという結果でした。

何に対して有利なのかは、”経済的”にです。

ここで、多様性と叫ばれる時代なのだから、何が有利かはその人によって違うんじゃないかと思われる方もいるでしょう。

国民的アイドルの有名な曲にも以下のような歌詞があります。

「世界に一つだけの花一人一人違う種を持つその花を咲かせることだけに一生懸命になればいい」

確かに、色んな花があって良いと思いますし、それぞれの綺麗さはあります。

しかし、現代社会ではその花に値段というレッテルがついています。

少なからず、買う判断の要素に値段は大きなウェイトを占めています。

それは、人の場合でも同様に給料という経済的レッテルを貼られるのです。

つまり、多様性を叫ぶのは自由ですが、社会に出たとたん経済的な評価が付きまとうという事です。

そして、非大卒の両親+非大都市圏のもとに生まれた子どもは生まれた瞬間から経済的に不利なのです。

著者はこの事を「緩慢な身分社会」と言っています。

確かに、両親が非大卒で非大都市圏のもとで生まれても、出世する例外はありますが、データの全体的な傾向を否定する力はありません。

また、高SESの親ほど、子どもの教育への介入度が高く、通塾や幼少期の絵本などの読み聞かせを積極的に行ったりしており、低SESの親ほど介入度合いが低く放任的教育の傾向があるそうです。

※SESとは文化的・経済的・社会的な要素を統合した概念のことです。親の学歴・世帯収入・職業などで構成されていて、高いほど子どもの教育にとって有利な条件といえます

以上の事がデータで見た教育格差の現実です。

重要なのは平等それとも自由?

今日の教育では、「平等」と「自由」が良く天秤にかけられ、両者は相反するものとしてとらえられています。

教育は学校教育の中だけで行われるものであり、どんなレベルの学生であっても、同じ内容の教育を受けるべきというのが「平等」に軸を置いた考え方です。「平等」な教育では、能力の高い人がかなりの制約を受けます。

一方で習い事や習熟度別の授業を促進し、個別の能力に合わせて教育すべきという考えが「自由」に軸を置いた考え方です。

教育格差を改善する視点で見ると、「平等」の方が良いと思うかもしれませんが、結局、教育内容の同質化を図ったところで、高SESの両親の文化的な資本(周りの大人との関係、蔵書数、オンラインでの学習機会など)があるので、格差は改善されず、むしろ成績の悪い学生は全て自己責任になりかねないと警鐘を鳴らしています。

つまり、「平等」と「自由」のどちらをとっても誰かの血は流れるということ。議論しなければいけないのは、誰のどんな血がどれだけ流れるかを最小限にすることで、そのためには「平等」と「自由」の両者を俯瞰的に見て適度なバランスを保たなければならないのです。

教育格差に改善に必要な施策4つ

最後に著者が議論で留まらない為に格差拡大改善に必要施策を4つ提示してくれています。ここではそのうちの2つを紹介します。

①「分析可能なデータを収集する」

アメリカなどでは、教育におけるデータが日本に比べて着実に蓄積しています。冒頭にも述べたように、教育格差という問題を取り扱うとどうしても個人の”正しさ”で考えたり、経験から物事を判断してしまい抽象論になりがちです。なので、データから目の前にある現状を認識し、包括的な施策を打っていく必要があるのです。

「教職課程で『教育格差』を必修に!」

教員でも、低学力の学校では、「学生への指導意欲」「進学期待」が高学力の学校に比べて低下傾向があります。それでは、教育格差拡大に加担してしまっているので、必修科目で現状をきちんと理解することが重要です。これは、教職課程を履修している学生全員が対象です。現状認識ができていれば、学生へのアプローチにも改善の余地が出てくるでしょう。


長々と書きましたが、最後まで見てくれた方ありがとうございました!

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