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個性がにじみ出る小論文

どーもー。ゆか先生です。インターネットで国語を指導しています。この春から高校生に小論文を教え始めました。

小論文と作文の違い

何だと思います?
小論文も作文も、自分の意見を述べることに変わりはありません。違いは、
作文が自分の体験を通じ、自分の考えを具体的に、そして主観的に伝えるのに対し、小論文は、自分の意見を提示し、客観的な根拠を添え、相手を納得させるものです。大きな違いは、主観的に感情の入り混じった、大いに感情の入った言葉で、相手を打ちのめすのが作文で、感情は持っていいけれど、それをできるだけ客観的な言葉に変換して、いかに「熱量」ではなく「説得」という形で相手を堕とすのが小論文
まあ、その方法を色々教えてるわけです。

そう言うと、生徒が一番勘違いがするのは「じゃあクールダウンして、感情を切り離して書けば完成するのか」というところ。私もちょっと前までは「切り離して」って思っていたんですが、そういう文章って、やっぱり、人間らしくないんです。作文であっても、小論文であっても、やはり書き手の個としてのエネルギーというのは必要で、それを保持しつつ、説得のために言葉を選び直せる力をつけていないといけないってことなんですね。これ、入試に限らず、入社の面接でも、なんならその後の社会生活でも必要なスキルです。

小論文に模範解答はない

小論文は、テーマがあると、ある程度の模範解答は存在するのではないか?と考える人がいます。(大抵は、受験間際になって慌てて小論文のハウツー本を探す、小論文を甘く見ている人です)実際に書店に行くと、テーマ別になっている小論文の参考書が並んでいます(もちろん先ほどのニーズにこたえるためです)聞いたことがないテーマを、当日、本番中に考えるのは辛すぎるので、ある程度さらっておき、考えておくことも必要です。が、全く同じ問題が志望校で出題されるとは限りません。これは社会でも同じことですよね。こういうケースはこういう対応が最適という解はあるけれども、では、あなたの会社で今起きているこの件について、それが適用されるのか?ベストなのか?という点については、当事者にしか分かりません。
テーマのない、例えば、その場で資料を見て答えるだとか、読解力判断とセットになっていて、文章を読んで意見を述べるだとか、自分の体験から核だとか、色々な場合があり、何が来てもこたえられるようになるためには、結局、普段から、もっと高い次元から物事を考え抜いている必要があるんです。だから、小論文を甘く見るなよーって思っちゃうんですよね。

小論文の個性はどこに出るか

そんな小論文で、個性が出る部分があります。それが結論直前の文章です。
例えば、今月の課題は「死刑制度について存続か廃止か」どちらかの立場に立って意見を書いてもらうものでした。さすがに高校1年生で答えはサッと出るわけがありません。材料はなく書けないと思いますので、賛成派と存続派、それぞれ10個の理由をあげて、どれか好きなもの、書きやすそうなものを3つ選んで、自分の意見を添えてもらうことにしました。
もちろん客観的に書けているか、言い回しは適切か、段落構成はそれでいいかなどの指導はします。
型は色々ありますが、今回は、結論ー根拠①、②、③-大結論(私の講座の用語。根拠や、予想される反対意見に対する反論を述べたあと、レベルが上がっている結論のこと)という型を選びました。
例えば根拠①②③のところで、10個の理由から3つ選んでいるわけです。なので、最後の代結論の部分で次のような文章にしがちです。

以上、根拠①②③により、私は死刑制度存続に賛成(反対)です。

これは、そのまま過ぎるんですね。自分が①②③を選んだ、さらに奥にある個人の背景というものを言語化しなければいけません。

書かない部分も言語化する作業

もちろん、この部分は膨大な文字数になるので、書かなくてOKです。でも、言語化する必要があります。自分はなぜ10もある理由から①②③を選んだのか。
「書きやすいと思ったから」上等です!書きやすいのには理由がちゃんとあるんですね。自分の思いや価値観に近いからではありませんか?
それは、倫理観だったり、正義感だったり、はたまた不公平や不公正(この2つの言葉は意味が違います)に対する憤りだったりします。もちろんそんな感情をそのままぶつけては小論文にはなりません。
その3つを選んだ理由、自分の根底にある感情に、気体のような感情を言語に昇華して個体にすることで、自分ならではの心持ちに気づくことは、とても大切なプロセスです。このプロセスを経ていない小論文は、本当に、もうAIが書いたような、抜けや漏れはないけど、刺さらない文章になってしまいます。
「そうそう!こういう人が欲しいんだよ!」と膝を叩くような、多少誤字脱字があっても、そう思われる文章、それは大学入試の小論文に限らず、全ての文章に必要な要素なのです。
小論文の個性は、考え抜いていればにじみ出てきます。そこで勝負です。誤字脱字とか、字数がどれくらい埋まっているかとか、そんな問題が「瑣末なこと」と一蹴されるほど、考え抜いて書いてください。
そして、小論文に限らず、人を説得させられる文章が書けるようになるためには、筋トレやピアノの練習と一緒で、毎日考える、毎日言語化する。それが一番の近道なんです。

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