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ヤバいって200種類あんねん

ヤバいは形容動詞の「やば」が形容詞化したもの。
危うい。危ない、不都合だ、問題が多い、困惑させられるなどの意味として辞書には載っている。
ヤバい仕事と言えば、健全ではない仕事を指すし、
目が合った。ヤバいって言えば、まずいタイミングで見られたことを指す。
このヤバい、2000年頃から、反対の意味でも使われるようになってきた。つまりすごくいいって意味。
アルバイトの時給が上がってもヤバいというし、コンサートでアイドルと目が合えば目が合った。ヤバいになる。満開の桜もヤバいし、美味しい料理もヤバい。
類義語は両方の意味で相当数になる。

本来の「危うい」「危ない」「不都合」「問題が多い」「困惑させられる」の類義語を挙げると、
危険、物騒、重大、深刻、険しい、おぼつかない、いぶかしい、怪しい、いかがわしい、不確実、心もとない、不正確、不確か、疑わしい、あやふや、手数が多い、困る、迷惑、面倒、禍、煩雑、厄介、煩わしい、悶着、支障、差支え、迷惑、難事、邪魔、骨が折れる、面はゆい、照れくさい、決まりが悪い、狼狽、混乱、うろたえ等。類義語辞典で調べると分かるが、もっとある。
本来の意味でもこれくらいあるのに、反対の意味でもOKとなったら、もう数えきれない。本当に200種類くらいありそうだ。

一人の高校生がスマホの何かを指差し、もう一人の高校生に「これヤバくない?」と聞いて「わー、ヤバい」と答えたら、この二人の間には意思疎通ができている。どの意味のヤバいなのか、大体分かるからだ。でもそのヤバさは、実は一人一人違うし、第三者には説明できない。ましてや社会に出て「今日の現場はやばかったです」という報告書が通じる職場はあまりない。この高校生同士の場合でも、本当はもう少し言い換えた方がいい。実は違う意味で使っているかもしれない。

ヤバいを言い換える練習をしておくのも大事。このヤバいは、いい意味でも悪い意味でも使える言葉なので、下手したら1日で起きる出来事の形容詞は全部ヤバいで済んでしまう。ありとあらゆる感情をヤバいで表現すると、本当は微妙に食い違うのに、全部ヤバいで意思疎通ができるようになってしまう。その結果、自分の感情の方が分岐しない。これは恐ろしいことだ。

例えばお小遣いがあと100円しかなかったとする。ヤバい。
それは、持ちそうだけど心もとないのか、これから工面が面倒なのか、この先困るのか、生活に差し支えるのか、本当は状況などによって、微妙に違う。その微妙に違う自分の心を観察して、一つ一つ言葉を当てはめて行かないといけないのに、とっても便利なヤバいをどの感情にも使うことによって、素晴らしく複雑な心境が、良いことも悪いことも、全てヤバいに取って代わられてしまうのだ。全て「ヤバい」の方がラク。人間は本来怠け者だからそっちに流れちゃう。その結果、自分の感情の方が単調になってしまうのだ。それはとても怖いことだ。伝えたい気持ちをきちんと伝えられないし、生じた誤解も解消できない。つまりコミュニケーションが成り立たなくなってしまう。
だから、ヤバいと思った時は、そのヤバいはどのヤバいなのか、他の言葉を使って言い換える練習をしてみよう。そうすると自分が本当は何を言いたかったのか、徐々に見えてくる。見えてくると感情の方もヤバいから分離して増えていく。

やばい。体重減った。
うちの親、やばい。
進路、やばい。
A子の彼、やばい。
昨日からメンタルがやばい。

やばいって200種類あんねん。どのやばい?って自分に聞いてみて。

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