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ググる時代の終焉。その後の子育て

アレクサネイティブの子どもたち

SpotifyやAmazon Musicが好きそうな曲を次々に流してくれる。興味をもって何回も調べていることのヒントがGoogleからサジェストされる。本を読み終わると、次にこの本を読んだらどう?と紹介される。友人の中には、毎月自分好みの洋服が届くサービスを利用している人もいる。もう自分で検索する必要がなくなった時代に入りました。生まれた時からAIに囲まれた子どもたちを「アレクサネイティブ」と呼ぶそう。この時代、子育ては何に留意すべき? 答えは「これは違う」と言えるだけの「主体性」と「自分軸」を持つ子にすることと、「現場」に子どもを預ける覚悟だと私は感じました。

石角友愛×落合陽一×和田孫博

朝日新聞社主催「朝日新聞チャレンジフォーラム 時代を拓く子どもの育て方」に行ってきました。
石角友愛さんはパロアルトインサイトCEO
落合陽一さんは筑波大学准教授、ピクシーダストテクノロジーズCEO等々
和田孫博さんは灘中学校・高等学校校長

今回の話と関係ありそうな著書貼っておきます。

日本がAIに対し「備えて」という表現をする理由

石角さんはシリコンバレーに住み、お子さん二人を育てているワーキングマザー。石角さん自身は高校を中退しボーディングスクールに入っています。アメリカでの教育については、彼女の名前でググれば出てくるし、本になっているのでそちらで。
ボーディングスクール卒業生へのアンケートで、何が良かった?と伺ったところ「自分で選択をして生きているという自負」感とのこと。自分で人生を選択しているという自信ですね。この辺を子どもたちに是非とも付けたいところなんですが、現実は「親が選択をした方法で生活している」のが日本のほとんどの家庭ではないでしょうか。

シリコンバレーでは、AIはツールであり、インフラであるという意識なのが、日本ではまるで人間をおびやかす存在のように言われているところが興味深いとのこと。確かに「来たるべきAI時代に備えて」などと、まるで「人間 対 AI」のような語られ方をしますよね。これは、ひとえに敵(と日本人が想定している悪しき者)のことを知らないがために起きていることなのではと思いました。AIに職を取られる、AIに侵略される、そんなふうに表現するのは、AIのことを知らないせいかと感じます。その点、むしろ子どもたちは抵抗なくAIを受け入れていると思います。あまりに当たり前過ぎて「AI?何それ?美味しいの?」の世界ですね。

石角さんは、そのような子どもたちに対してAIバイリンガルに育てることが大切だと仰っていました。ドメインの専門家たる能力にプラスしてAIの知識が必要だと。例えば、今まで、現場の状況やドライバーの能力を判断し、Excelで管理していた配車担当者が、AIの知識を身につけ、今やAIをトレーニングする職についた例があるそうです。敵(笑)の、AIの知識さえつければ、奪われる職なんてないのかもしれません。また、私が一番感動したのは、この二つに、哲学や芸術、倫理などの「人間性」を兼ね備えた「Π(パイ)型の人間」がこれからは必要なのだという話。その3つ、哲学、芸術、倫理は、AIにはしばらく無理でしょうし、人間が人間たる所以の性質であるように思います。

一段階枠組みを大きくしないとインクルーシブは拡がらない

聴覚障害者も参加できるオーケストラのイベントを開いた落合さん。

私はこの分野での落合さんの活躍に期待している一人で、インクルーシブ教育に関する彼の発言に、沢山の気づきを得ています。
文科省は、どちらかというと、個人の能力の最大発揮を、能力別に分類したハコの中で育てることにしていますが、落合さんはそんな枠組みを外して、一段階上に行かないと、真の意味でインクルーシブなんかできないと説いています。この日も、フォートナイトのライブの例などを出して、思考の枠のぶっ飛ばし方を教えてくれました(笑)
この仮想空間でのライブ、なんと1000万人もの人が集まったのだそう!
人が撃ち合うゲームで、こういうフェスにも1000万人。本当に特殊です。共感できるようなできないような、こんな特殊な倫理が、これからの子どもたちには備わっていくのでしょうね。

アンパンマンしかサジェストされない

子育て中のママから伺っていたのですが、延々とオモチャで遊ぶ動画を見るのが、お子さんが好きだとのこと。「は?なにそれ?」と思ってググってみたら、アンパンマンのオモチャで永遠に遊んでいるだけの動画がありました。さらに調べてみたら、そのYouTuberは8才で、広告収入が年で25億円とのこと。なんじゃそりゃ!!!???(笑)
この日も落合さんの話の中にまでこのYouTuberの話が出てきて、子育て世代には常識なんだと、少し驚きました。

もちろん、そういうビジネスモデルを子どもと考えるのも良いでしょう。落合さんも、それはそれでいいと言っていました。そして、そんな動画を落合さんの息子さんも見ているのだそうですが「大好きだったアンパンマンの動画を、興味なさそうにぐったりと見ているのを見て、これはヤバいと思った」そうです(笑)

ここで、冒頭の、AIのサジェストの話に戻りますが、つまり「自分の好きなものしか現れなくなる」ことへの警戒を落合さんは考えています。確かに、Twitterでは同じ方向を向いた人の話しか表示されませんし、なんならアンチのコメントを精神衛生の考えで、見ないようにする、ミュートすることも可能なわけです。アカウントごとブロックもできます。Facebookには「いいね」を付けた人の投稿が上に表示されるアルゴリズムになっていますし、広告なんて、自分が調べたことしか出ませんよね。これは、AIに関われば関わるほど、考えが偏ることを意味してると落合さんは語っていました。

情報があふれる世界で「情報を選択する力」を身に付けよう!とあんなに叫んでいたのに、そのすきにAIに、まんまと先を越されてしまったのです。

どんな質問をすればアレクサはきちんと答えてくれるか

これ、問いを立てる力とはまた別なのですが、アレクサの利点として、石角さんは2つあげていました。

・アレクサにどのような質問を投げればいいかを考える機会があるということ
・アレクサにそのような問いを投げている空間を家族が共有できるということ

です。

また「どのような仕組みでAIにリコメンドされるかを知っていることも大切」と、開発に関わっている人らしい発言もありました。

一般家庭で言う「現場」とは

この話を、シリコンバレーに住む、遠いご家庭の話、「私ら家族には縁のないこと」と思わないことです。例えば、どんなふうに話せば答えが得られるかということは、アレクサよりももっと良い機会が身近にあると私は考えます。

それは、現場。子どもなら、家庭と地域です。
※私は教室は現場ではないと思っています。

どんなふうに質問をしたら、自分のほしい答えが返ってくるか、もっと言えば、まずどんなふうに挨拶をしたら、相手が心を開いて、時間を作って、自分の質問に答えてくれるか?という体験です。

息子がまだ小学生の時、私と息子はポケモンカードゲームにはまっていたのですが、大会ともなると、大人と子どもではクラスが違うので、息子は私と離れ、子どもエリアでカードゲームに挑みます。大会ではずるをする子もいましたし、嫌な言葉を言って場を混乱させる子もいました。でもその中で、息子は「どうしたらルールを守るようにと相手に言えるか」ということを学びました。審判員への申し出もできるようになりました。もちろん「失敗」もあったでしょう。嫌な目にもあったに違いありません。でも彼は「こうしたらうまくいかないんだ」という失敗を積み上げ、なんとか正しい道を発見できたのだと思います。

どうしたら失敗するのかはAIは教えてくれない

失敗に関して、石角さんの講演の中で、ユダヤ人のお話が例に出されました。

森の中で道に迷った女の子が、老婆に出会い、どの道を行けば森から出られるか聞くと「私はもう40年も道に迷っている。私が教えられるのは、どの道を進めば森から出られないかということだけ」と答えた

素晴らしいお話。人間は失敗からしか学べないですもんね。

落合さんは、失敗を恐れず、フットワーク軽く始めることが大事で、よっぽどのことがない限り、やらせてあげることが大事なのでは?とのこと。
先週、大熊先生の講演でも「30cmの勇気」を大人が持つことが大切だと行っていた。何でもやらせてあげる。ただ、本当に危ないかもしれないという時は大人がそばにいてもいい。ただ、それでも子どもに触っちゃだめだ、手を30cm離して構えておけばいいという話。

現場には、生のものがあるし、命もある。何よりアートだ。そこに子どもを入れる覚悟を親ができるかどうか。そこが運命の分かれ道になる気がします。そして「意識高い系」の親ほど、考えすぎて、その辺ができなくなっているような感じです。
「子どもは放っておけば育つ」と、一人一人に構っていられない子だくさんのママほど、子どもがリアルな現場に常に居て、失敗を重ねて立派に育っている例が多いです。

でもでも、このようなフォーラムに来る親御さんの中には、今さらそんな子育て方法ができないという方もいらっしゃるでしょう。だとしたら、その野放しママがしている方法を分析して成功したことと、こういったフォーラムでの気づきを融合させて、どんどん実践したらいいと私は思います。

ディスライクする力

こんな動画がお好みなんでしょう?とAIが提示してきたときに、受け身状態になってしまう子どもにしない為には「それは違う」と言えるだけの「主体性」と「自分軸」を持つように育てることですよね。
考えることを放棄せず、しっかりと「ほんとか?」と問う心、AIの仕組みを知り「そうか、そう来たか。でもそうじゃない世界も見せて」と提案を断る力が大切だと、この講演をきいて感じました。

そして、その力も「現場」で培えることを知ったのなら、例えば、料理を通じて、化学や、火の扱い方や、家事分担方法や、文化を知りたいのなら、料理教室なんかに子どもを入れないで、家の料理を作らせたらいいでしょう。失敗しても食べてくれる家族がいますものね。そんな考えで「○○教室」なんかに行かず、リアルに○○がある、そのものがある現場に子どもを任せてみたらいいと思います。なんなら地域がベストですよ。両親以外の大人、斜めの関係の大人は子どもが心を開きやすいから。


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