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「きれいに書きなさい」という言葉では、きれいに書けるようにならない

「うちの子、字が汚いんです。『きれいに書きなさい』って何度言っても書けないんです」
国語の先生をしていると、そんな相談も受けます、でもそれって、お母さんの言い方が間違ってるんですね。「片付けなさい」も同じです。

文字をきれいに書くとはどういうことなのか。子どもは、言語化できません。確かに、友達のきれいな字を見ると「きれいだな」ということは分かりますが、自分がその文字を書くために、何をどうしなくてはいけないのかが、さっぱり分からない。手段が見つからないので、もはや才能の差のように思えて「あんな字は、僕は書けるようになんかならない」と、落ち込む原因にもなりかねません。

ではお母さんの方はどうでしょう? きれいな字と汚い字って、何が違うと思いますか? もし、言語化ができるなら、それをお子さんに話してあげてください。お母さんのいうところの「きれいな字」とは何をどうするとできるのかっていうことをです。

一般的に、綺麗な字というのは、雑ではない字ということです。雑に書かないということは、どういうことでしょう?
そうですね。ゆっくり書けばいいんです。
かける言葉としては「ゆっくり書いてみようか」「ゆっくり書こうね」でいいのですが、実はその子がゆっくり文字を書けるかどうか、これは環境に大きく左右されます。

急いで書かなければいけない時などは、大人でも雑な字になりますよね。わーっと書いたメモを「ちょっと見せて」と言われても嫌でしょう?
つまり、時間がない時に、字は雑になるんです。だからそういう時に子供を急かしては、逆効果なんですね。
時間がある時に「ゆっくり書いてごらん」「慌てないでゆっくり書いてごらん」と肩などをトントンと叩いてみてください。頭を撫でるのもいいでしょう。そうすると、明らかに慌てて書いた時と、字が違うと思います。そうしたら今度は、それを子どもにも認識させること。「やっぱりゆっくり書くと綺麗な字になるんだねえ」と心の底から言ってあげてください。それを聞いた子どもも、きれいな字を書くということは、達筆とは違うんだ。こういう状態のことを言うんだと、理解し、再現することができるようになります。
文字の雑さには、姿勢も大きく影響します。これも大人も同じです。基本的に、悪い姿勢ではきれい字は書けません。こちらもなぜ悪いのか、原因を探すといいと思います。椅子の高さと机の高さが合っていない場合や、柔らかすぎる椅子に座っているなどの原因が考えられます。
特に「足底接地」と言って、足の裏が両方とも地面についているか。脳は、体勢を整えるのに認知資源を割きますので、そこもポイントです。まあ、あまり姿勢のこと言いすぎると、気持ちがそっちの方に取られて、逆に焦ったり、いやになったりしてきてしまいますので、姿勢は二の次で良いかと思います。

片付けも同じです。何をどうしたら片付けと言うのか、あなたは言語化できますか? 子供は分からないので「片付けなさい」の言葉では片付けられないんですね。幼稚園などでは「おもちゃをおうちに戻す」と表現しますが、まずは「出ているものを、もっとあった場所にしまいなさい」という言葉が必要です。が、「もとあった場所」が決まっていない場合は、そこからの改善が必要です。その改善もナシに、片付けなさいなんて、大人でもできないですよね?(笑)
知らないオフィスに連れてこられて、何がどこに収まるべきか知らない状態で「片付けなさい」って言われたら?(笑)

物の場所が確定できたら、そこに戻すこと、ゴミは拾ってゴミ箱に捨てること、靴下などが出てきたら(笑)洗濯かごに入れること、3つぐらいをセットにして、それを「片付け」と言うのだと認識させることが大事。そうしてやっと「なるほど。片付けとは、それが必要なものであれ、不要なものであれ、汚れた物であれ、とにかく物を所定の位置に戻すことなのだ」と認識すると思います。
とは言っても、思春期過ぎた男の子にはちょっと無理な感じですが(笑)

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