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心に風が吹くような一冊:息吹


2020年早々素敵な本に出会いました。

本屋に行くと平積みされているので、話題になっているのかな?SFの作品集です。

「小説か。」と侮ることなかれ。
「自由意志なんてあるのだろうか」「生きる意味とは何なのだろうか」という誰もが一度は巡らす(少なくとも私は常にどこかでずっと気になっている)出口の見えない思考に、清々しい風を吹かせてくれるような、そんな作品でした。

私は脳科学も物理学も生物学も天文学も、「科学」のことについてはトンと疎いし、哲学についてもきちんと学んだことのないような人間ですが、本書はフィクションなので読みやすく、オススメです。

9篇を収録しており、どれも良かったのですが、私が特に心を打たれたのは以下2篇です。お気に入りの一節と共に。


息吹

空気を満たした2個の肺を(文字通り)取り外して交換することで生を得ている、私たちの住む世界とは全く違う世界の科学者が、自身の体、そして宇宙について探究していく話。

「わたしの望みと考えのすべては、この宇宙のゆるやかな息吹から生まれた渦巻であり、それ以上でもそれ以下でもない。そしてこの偉大な息吹が終わるまで、わたしの思考は生きつづける。」
存在するという奇跡についてじっくり考え、自分にそれができることを喜びたまえ。
出典:息吹(テッド・チャン著)


不安は自由のめまい

「プリズム」という新たに分岐した2つの時間線をつくり出す装置があり、チャットや動画でパラレルワールドの自分(=パラセルフ)と話すことができる世界。無数のパラレルワールドができ、無数の「そうなる可能性のあった自分」(=パラセルフ)を知ることができるようになったことで、自らの意思決定について様々な考え方をするようになった人々の話。

「正しい選択をすることに価値があるかどうか。わたしは絶対にあると思う。わたしたちは誰も聖人じゃない。でも、もっといい人間になろうとすることはできる。なにかいいことをするたびに、次にまた、もっと高い確率でいいことをする人間へと自分をかたちづくっている。
(中略)
前よりいい人間になることで、この時点から将来に向かって枝分かれしてゆく分岐のますます多くに、よりよいバージョンのあなたがいる確率を上げている」
出典:息吹 不安は自由のめまい(テッド・チャン著)


今現在の私の関心ごとは、

・娘の幸せ
・「みんなで子育てをする社会をつくる」こと

ですが、ふと、そもそも論に思いを巡らせることがあります。

「幸せってなに?」
「幸せを追い求めることが、本当に人生の目的なのかな?」
「みんなで子育てをする社会を作ることって、どのくらい意味があることなんだろう?」

生きる意味とか、私とは何なのかとか、幸せとは何か、ということに考えを巡らせること自体は私にとって楽しいことです。

でも、生きる意味なんてないかもしれないし幸せを追い求めることが人生じゃないかもしれないし、私には自由意志などないのかもしれないし...
考えれば考えるほど分からなくなります。わからない中で私はどんな行動をしたらいいのだろう。


そんな中で、


「それを考えられることを喜ぼうぜ。」


「意味などないからって考えることを放棄しないで、今、ここに集中して、良い選択をしていこうよ。その先に、少なくともより良い自分がいるからさ。」


っていう清々しい提案を(少なくとも私に)くれた本書。

2020年の手帳にはこんな言葉を書いています。

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(枠を可愛らしくしている割には、字が下手だし、間違えている…)


少なくとも2020年は、「よりよいバージョンのわたし」を生み出したいと願う自分の(はたまた人間の?)気持ちに素直になり、「今、ここ」に集中して1つ1つの選択の積み重ねを意識して過ごしたいと思います。



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