withコロナ時代と「モノ」のシェアリングサービス
withコロナ時代の到来。
「モノ」のシェアリングサービスはどう対応していけばいいのか
私は子育て家庭のためのミールシェアサービス「マチルダ」を(クローズドにですが)運営しています。
(ミールシェアについては以下のnoteに色々書いてます)
3月から冒頭の問いが頭のなかを、ブンブン🐝ブンブン🐝うるさく飛び回っていますので、考えたことについて「えいや!」とまとめました。
トピック1:ニーズはあるのか?
そもそもの問い。
withコロナ時代にシェアリングサービスの需要はあるのか?
正直に言うと、これは需要が上がるとも下がるとも思うので、どちらとも言えません。
人々の衛生意識が大幅に上がった今、「シェア」「共有」をしたいと思うのか。
ただでさえ、「信頼」がキーワードになるシェアリングサービスで、「衛生面」もキーワードに入れていくと、難易度は高くなると思います。
一方で、オンライン化や経済の不安定化により複業が当たり前になり、「個」のエンパワメントが益々進みます。
また、個人的には、ソーシャルディスタンスが当たり前のwithコロナ時代、「人との繋がり」の必要性も見直されるのでは無いでしょうか。
以上より、「シェアリングサービスなのかどうか」かよりも、当たり前ですが「そのサービスで提供されるモノ、コト」が今後の社会にとって価値があるのかどうか重要です。
トピック2:対面型か非対面型か。有形か、無形か。
withコロナ時代に考えたい、シェアリングサービスをざっくり区分けするとこんな感じ↓
「対面型」×「有形財」
「対面型」×「無形財」
「非対面型」×「有形財」→今回はここにフォーカス
「非対面型」×「無形財」
withコロナ時代を考えるにあたり、「対面型」なのか「非対面型」なのか、は極めて重要なポイントです。
スキルマーケットのココナラのような「非対面型」×「無形財」のサービスについては、withコロナ時代、ノーリスクでむしろ追い風。
一方で、「対面型」のサービスにとっては、有形財でも無形財でも、3密の回避が当たり前になり、逆風なのは想像に難くありません。
それでは「非対面型」×「有形財」のサービスはどうでしょうか?
マチルダも、「非対面型」×「有形財」のサービスになりますが、非対面なので濃厚接触は起き得ません。
しかし、「有形財=モノ」を介しての感染について不透明なことも多く、どの程度対応したら良いのでしょうか。
トピック3:「モノ」からの感染について
実際に「モノ」を介した感染は発生しているのでしょうか?
「モノ」からの感染について、現在得られる情報です↓
COVID-19は一定時間、感染力を保ったまま物体の表面に残存する
厚紙の表面では24時間後まで、ステンレススチール表面では48時間後まで、そしてプラスチックの表面では72時間後まで感染力を維持することが報告されています。
物体からの感染例が強く疑われるケースが複数発生している
・大分の院内感染
→タブレット端末などを介して感染が広がった可能性あり
・愛知のバブでの感染例
→ソファーを介して感染した可能性あり
・シンガポールの教会での感染例
→教会の椅子を介して感染した可能性あり(以下論文のCluster C)
上記のような事例はこの他にもいくつかありますが、より決定的な事例をご存知の方は是非教えてください、、、!!
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上記情報からも、感染頻度はともかく、「モノ」を介した感染は発生すると考えて良さそうです。
※ちなみに、内閣府の食品安全委員会によると、食品が感染経路となった科学的知見の報告は現在のところないようです。
トピック4:各サービスの対応例
「モノ」を介した感染があり得るなかで、「非対面型」×「有形財」のシェアリングサービスは、どのような対応を取っているのでしょうか?
ファッションレンタルサービス、airClosetの場合
以下の対応をされているようです。
・倉庫関係者のマスク着用、出勤時の消毒及び検温
・関係者以外原則立ち入り禁止の対応
・返却された洋服は医療機関や介護施設等でも使用している除菌率99.9%の洗剤にて全点クリーニング
・返却のためだけの外出を控えてもらうための「集荷」サービス
(出典)airCloset「【airCloset】弊社代表天沼より」
カサのシェアリングサービス、アイカサの場合
以下の対応をされているようです。
・返却のために外出することが無いよう、連続利用2日目移行の追加料金発生なし(2020年4月22日段階、出典はコチラ)
・アイカサスポットの一部に消毒用アルコールの設置(出典はコチラ)
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以上はBtoCの「非対面型」×「有形財」のシェアリングサービスの対応例です。
次にCtoCの「非対面型」×「有形財」のシェアリングサービスの対応例について。(マチルダはコチラに当てはまります)
CtoCサービスの場合、多くのサービス利用規約に「当事者間で合意に基づいて行われた取引について、当社は一切責任を持ちません」といった免責事項があります。
CtoCサービスはプラットフォームであり、個人間取引で発生した全ての事項に対して責任を取らない(取れない)ビジネスモデルなので、新型コロナウイルスに対して、対応をすべきか、はたまた利用者に完全に任せるべきかはサービスの内容、サービスの思想によって違いが出そうです。
民泊サービス、AirBnBの場合
AirBnBは「ガッツリ対応」をしている一例ではないでしょうか。
※AirBnBは厳密には「空間」のシェアリングサービスですが、「(ホストが在宅でない場合が多いので)非対面」そして「有形で接触感染が起こり得る」という点で、このnoteでは「非対面型」×「有形財」に分類します。
AirBnBは事業規模が異なりますので、対応策も豊富で、以下のリンクに全てまとまっています。
・清掃ガイドラインの作成、通知
・スーパーホスト救済基金を設置
・キャンセル費用の一部負担
・ゲスト/ホストに感染者が出た場合の対応まとめ
・ホスティングを続けるための様々なtips発信
etc...
トピック5:どのような対応が求められるのか
「非対面型」×「有形財」のシェアリングサービスにとって、どのような対応を取るべきか、サービスの内容次第ですが、やはりAirBnBの例がお手本になるのでは無いでしょうか。
重要なのは以下の3つだと考えます。
1. 利用者の感染予防策の作成
2. 利用者が感染した場合の対応方法作成
3. リスクコミュニケーションの徹底
以降のトピックで、各項目について触れていきます。
トピック6:利用者の感染予防策の作成
まずは利用者の感染予防策について。
感染予防策もサービスごとに異なりますが、以下の項目は検討する価値がありそう。
・キャンセルポリシーを柔軟にする
→通常、48時間前や24時間前以降の取引キャンセルについてはキャンセル料が発生するサービスが多くあります。熱や体調不良があるのに「モノ」を発送する、「スペース」を利用する、などの事態が発生しないようにキャンセルポリシーを柔軟に設定することには意味があります。
AirBnBではホストがキャンセルポリシーを選択できるようになっていますが、以下のように呼びかけています。
・衛生ガイドラインの提示
→AirBnBは「清掃箇所チェックリスト」を含んだ清掃ガイドラインを提示しています。
シェアする前に消毒をしてもらうために、「提供側(ホスト、サポーター)」へのガイドラインの作成は感染予防として効果がありそうです。
・利用前の検温依頼
→一度すべて回収して消毒のできるairClosetのようなBtoCのシェアリングサービスには必要ない項目ですが、CtoCや回収のできないBtoCサービスの場合は、利用者への利用前の検温依頼が感染予防策の一つとなり得ます。
・サービス停止ラインの検討
→どんな時にも停止しないサービスが理想ですが、不特定多数との(間接的)接触がどの程度あるサービスなのか、また社会の状況、政府の要請によっては安全のためにサービスの一時停止を余儀なくされることがあります。
サービス側のスピーディーな対応が利用者の安心にもつながるため、サービス停止ラインについても事前に検討しておくと良さそうです。
トピック7:利用者が感染した場合の対応方法作成
次に、利用者が感染した場合の対応方法について。
withコロナ時代、誰でも感染の可能性があります。
利用者に感染者が出た場合、感染した当事者および、間接的に接触した可能性がある利用者に対してどのような対応をとるのか、事前に検討すると良いのではないでしょうか。
AirBnBは以下のリンクで
・感染した疑いがあるホストの対処法
・感染した疑いのあるゲストを受け入れた場合の対処法
・感染した疑いがあるゲストの対処法
と細かくまとめています。
ちなみに、マチルダはとても小さなサービスですが、以下のようにまとめています。
トピック8:リスクコミュニケーション
最後に、リスクコミュニケーションについて。
シェアリングエコノミー協会のリスク分科会にて、シェアリングサービスにおけるリスクコミュニケーションとは
「ステークホルダーに対して、自社のリスクに関する取り組みを積極的に発信し、対話を通じて解決策を共に考える活動」
との説明がありました。
AirBnBを含め、多くの良いサービスでは、会社の代表が新型コロナウイルスへの対応方針を発表し、サービスのトップにもどのような対応を現在取っているのか、のリンクを貼っています。
AirBnB創業者からのホストへのメッセージ↓
現在LINEにてクローズドβ版を運営しているマチルダも、リッチメニューに対応方針のリンクを貼っています。(マスク姿のマチルダちゃんがポイント)
いまだに不明なことも多く状況が刻々と変わるなかで、ステークホルダーと「対話を通じて解決策を共に考える」という姿勢は、サービスにとって極めて重要なのではないでしょうか。
(ちなみにこのnoteも、マチルダのリスクコミュニケーションのうちの1つです!)
最後に
スタートアップにとっては当たり前すぎて記載しませんでしたが、「リスクマネジメント」の観点で考えると、withコロナ時代に台頭する新しいニーズに合わせて業態を変えていく、というマインドも忘れてはいけません。
今のシェアの方法で価値を提供出来るのか、そもそもシェアである必要はあるのか。
個人的にはシェアリングサービスは「繋がり」を生むとても素敵な仕組みだと考えているので、サービス同士でも対話を重ねながら、最適な対応方法を見つけていきたいです!
頂いたサポートは全て本となり、私の知識となります。