異文化で多国籍チームを率いることについて

最近SWITCHインタビューの小林圭さんと澤田秀雄さんの回の録画を見たのだが、お二人共海外で人を率いて来られた経験から、それぞれのリーダーシップの秘訣を話されたのが興味深かった。ちなみに、澤田秀雄さんは有名な海外旅行会社、HISの会長であり、旅行業界にとどまらず様々な分野でご活躍の実業家、小林圭さんはパリにあるRistorant Keiという、最近ミシュラン3つ星を獲得した話題のフレンチレストランのオーナーシェフである。

澤田秀雄さんのお話

ー 片目をつぶって任せる
ー 失敗に罰は与えない 
ー 部下には厳しく接する

片目をつぶって任せる」、とは言い得て妙だなと感心した。私も同じことを国連で多国籍チームを率いる際に心がけていたからだ。人を育てるためには、自分がやったほうが早いと思っても、あえて部下に仕事を任せることが大切なのだが、仕事ぶりを見てしまうと、思わず口を挟みたくなる。部下の成長のためにはあまり手も口も出さず、グッと堪えて見守る、という心持ちを、「片目をつぶって任せる」と端的に表現されたのだと思う。時間に追われるビジネスの状況では、思わず自分がやってしまおう、そのほうが早いし確実、となりがちだが、将来のリーダーを育てるためには、時間はかかるが、部下に任せるのも大切である。

また、「失敗に罰は与えない」という方針も、部下を育てる上で大切なことだと思った。革新的なアイデアを実行するには、失敗から学ぶことのできる土壌も必要だからだ。部下の自主性を尊重し、片目をつぶって任せ、それで失敗しても罰は与えない、これは言うは易く行うが難し、リーダーの態度だと思う。ご自身がいろんな事業に果敢に挑戦され、その中でたくさん失敗もあると、具体例を挙げて失敗談を包み隠さず語っておられたのが印象的だった。

小林圭さんのお話

ー 一人一人とコミュニケーション
ー 人によって受け止め方が違う
ー まず褒めない

小林圭さんは、パリのレストランで、主にフランス人の料理人たちを率いてこられたわけだが、人によって受け止め方が違う為、一人一人とコミュニケーションをとる時間を意識して作られているそうだ。これは私も非常に共感することで、国連では多国籍チームと働くのが常であり、国事務所では、その国出身のスタッフがチームの大半を占める。異文化の環境で、さらにその国とはまた違う文化背景を持った人々と働く中で、一人一人とコミュニケーションをとることは、チームリーダーとしての最優先事項だと私は思う。小林さんのおっしゃるとおり、人によって、同じ言葉を聞いても理解の仕方が違うのも理由の一つだが、もう一つの理由は、どのようなマネジメントスタイルであればその人のやる気を引き出すことができるのか、ということも上司として理解したいところだ。

褒めて伸びるタイプなのか、厳しい方がやる気が出るタイプなのかを見極める

お二人に共通していたことが、部下には基本的に厳しく接する、ということである。小林圭さんはまず褒めない、とおっしゃっていた。

リーダーシップのスタイルは人それぞれであるのだが、厳しく育てる、褒めない、と言うのは、日本人のリーダーに多いスタイルであるように感じる。日本語の「改善」と言う言葉は、海外の実業家たちにもKaizenとして知られている位、常に改善点を見つけ、向上しようとする姿勢は素晴らしいと思う。けれども、国連でチームを率いて感じたのが、意識して褒めることの必要性である。特に欧米では、子供の時から、親にも先生にも褒めてもらう機会が多い。日本人の親は子供のことを人前で褒めることはあまりせず、褒める場合も、一言、親バカですが、と断りを入れるくらいだが、これが欧米だと、自分の子供がどんなに素晴らしく、誇りに思っているかを語るのが普通だからだ。当然、職場の上司にも褒められることを期待する人は多い。

私も日本人の例に漏れず、自分に厳しく人にも同じ様なストイックさや完璧さを求める傾向があるのを自覚していたので、部下に厳しくなり過ぎず、笑顔や冗談の言える雰囲気を作る様に心がけていた。そして、自分に厳しいと、できて当然、と思ってしまいがちなので、意識して感謝の言葉を伝えるようにしていた。人によって、やる気のスイッチが違うので、コミュニケーションを通じて、相手が褒めて伸びるタイプ、厳しく接した方がやる気が出るタイプとなのかを見極めて接することで、個々人の能力をより引き出すことができたと思う。

そして、私自身がリーダーとして成長していく中での大切な学びの一つに、褒める時は人前で、叱る時は他の人のいない所で、ということがある。人前で叱られて、プライドが傷付かない人はまずいない。文化によっては、これは大変な侮辱行為であるから、気を付けないといけない。恨まれてしまっては、人間関係にヒビが入るし、何より仕事もうまくいかない。他の人のいないところで話をすることで、相手も自分のミスを認めやすくなるし、認識することで再び同じような過ちを繰り返さないためにどうしたら良いかと言う建設的な話もできる。大きなオープンスペースで大勢で働いていると、なかなかプライバシーを守るのも難しそうだが、これは文化を問わず実践することをお勧めしたい。

今回のSWITCHインタビュー、他にも面白いお話が沢山あった。お二人とも、自分の仕事を通じてどう世の中に貢献できるのか、ということも考えておられたし、ナンバーワンか、オンリーワンそのどちらかを目指す、という志の高さにも感銘を受けた。

私は、オンリーワンの道を進み、世の中に貢献したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?