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金時豆の甘煮の話

簡単な分量目安と作り方

【材料】
金時豆 200g
きび砂糖 150g
黒砂糖 10〜30g
塩 小さじ1/3(またはしょうゆ大さじ1)
※黒砂糖がなかったら、きび砂糖だけで炊く。
※甘いのが好きなら、豆:砂糖=1:1。抑えめが好きならそれより砂糖を減らす。

【つくりかた】
①金時豆は水洗いした後、鍋に入れてたっぷり浸かるぐらいの水に1晩浸ける。
※一晩の目安は、約5〜6時間。朝イチに浸けたら、昼から煮る。

②(下茹でしてアク抜き)豆が水を吸って水が足りなくなっていたら、すっかりかぶるぐらいまで水を足して、火にかける。沸騰してから3分ぐらい煮て、白い泡(アク)が出てきたら一度湯を捨てて、豆をザルにあげる。

③もう一度鍋に豆を入れ、すっかりかぶるまで水を入れたら火にかける。沸騰したら弱火にして、豆が指で押したときにつぶれるぐらいにやわらかくなるまでゆでる。目安は40分〜1時間。途中、水が足りなくなったら足す。
※新豆だと茹で時間は40分程度、豆が古いとゆで時間が長くなる。
※調味料を入れると豆はきゅっと身がしまるので、この下茹ででやわらかくする。
※グラグラと沸騰させすぎると、豆が湯の中で踊るので皮が破れやすくなる。沸騰したら弱火で気長にコトコト。シャトルシェフに移してもいい。

④分量の半分の砂糖を入れて弱火で10分煮たら、もう半分を入れて10分。最後に塩を入れて、さらに5分〜。煮汁をお好みの量まで蒸発させたら火を止める。
(調味料を一度に加えると、豆がびっくりして固くなりがち)

【冷蔵保存で1週間〜10日。冷凍保存も可能。砂糖の量が多いほど傷みにくい】

おかずかそれともおやつか

数ある豆類の中でも、金時豆はかなり上位だ。
青森の祖母がつくる赤飯は、小豆でもささげ豆でもなく、金時豆だった。しかもそのお赤飯は甘い。ちょっとした和菓子かと思うほど甘くて、おいしい。
私が子どものころ、甘い金時豆のお赤飯は、当たり前の家庭料理で家で食べるものだったけれど、今では代表的な郷土料理になっていてスーパーや道の駅でも売られる人気商品になっている。

祖母の家に行くと、いつでも金時豆の甘煮が常備してあった。祖母は、ザラメか三温糖と醤油で炊いていたような気がする、記憶は定かじゃないんだけれど。
ほくほくの豆はもちろん、炊いてから1日置いて煮豆がなじんだ時のとろっとした煮汁が最高。祖母の金時豆は潰れたお豆が少しあるぐらいやわらかく炊いていて、煮汁は少し多め。
冷蔵庫にしまってあるタッパーから作り置きの煮豆を移すときは、小さいお玉を使い、私はこっそり煮汁を多めにすくう。そしてスプーンで煮汁ごと食べる。豆のほっくり感と、とろみと、甘みが、絶妙な組み合わせて口の中にあふれて、そしていつしか喉を通っていった。冷やされていた金時豆の甘煮は、そう、どこか冷やし汁粉のようなのだ。

今では私も年中金時豆を煮る。下茹でして半分は甘煮に、もう半分はお肉などと一緒に塩気のあるおかずにする。
甘煮は常備菜だが、私には当然ながらおやつだ。スプーンで煮汁ごと食べる癖は、今も抜けない。一人きりの時は、おもちを焼いて、そこに煮汁たっぷりの金時豆ときなこをかけて食べる。私だけの楽しみなのである。

このコンビネーション。バニラアイスでもいい。

この楽しみ方は私だけに違いない、と子どもの頃は思っていたけれど、どうもそうではなかった。数十年前、半蔵門にある甘味屋「おかめ」で、金時豆の甘煮の上にソフトクリームを乗せた蔵王あんみつを見つけた時は、喜びに心震えた。
沖縄のかき氷「ぜんざい」を食べた時に、きめ細かい氷の下に金時豆の甘煮がお隠れ遊ばしているを見つけた私の喜びと言ったら。
金時豆の甘煮が、あんこと肩を並べている様子を見つけるたびに、うれしくなる。

おばあちゃんたちの前衛的な味覚

考えてみると、おばあちゃんたちって味覚が前衛的だったと思う。子どもの頃に全然慣れ親しんでいなかったはずのオロナミンCやファンタも、うちのおばあちゃんだけでなく近所のおばあちゃんたちもガンガン飲んでいた。
トマトやグレープフルーツには白砂糖をかけたし、ホットケーキの中にみかんの缶詰を混ぜてケーキを焼いてくれたこともあった。
(前衛的な特性はうちのおばあちゃんや津軽という土地柄だけではなかったようで、東京のど真ん中の築地そばで暮らしていた夫の祖母も同様だったらしい。「漬物に、セパレートドレッシングかけてたんだよなあ」と懐かしそうに言っていた)

そういえば、いっときは謎の煎じものを飲んでいて、聞けば「柿の葉のお茶」だという。これを飲むとお肌にいいらしい、美白になるんだと言っていて、いったいそんな話をどこから聞きつけていたんだろう。

子どもの頃から、信じられないスピードで、台所の様子も、食材も、変化をした世代。その中でしたたかに、しなやかに、日々の食事を切り盛りしながら楽しみ続けていたおばあちゃんたちは、最高に素敵だ。



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