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伊勢日記 10巻

7時半起床。

作業の予定を変更して二見へ。鳥羽行きのバスに乗り、二見浦表参道で下車する。二見の町は海が近く、歴史を感じさせる宿が多く残っていて、伊勢神宮周辺とはだいぶ雰囲気が違う。海岸沿いには松が植えられ見晴らしがよく、町全体がとても静かだ。

夫婦岩表参道を歩く。小腹が空いたので、塩ようかんと抹茶をいただく。

本当に静かだ。お土産屋さんも店番のひとが見当たらない。試しに入ったお店で見つけた、貝と真珠のブローチを買う。50年以上前に作られたものだそうで、ピンもさびている。ずっとこの店のショーケースのなかにあったものなのかもしれない。

そのまま表参道を歩いていくと、国指定重要文化財の賓日館という建物がある。明治20年に建てられ、皇族や要人が多数宿泊した場所で、いまは資料館として公開されている。せっかくだから見ていこうと中に入ったが、思っていた以上にすばらしかった。大広間が有名なのだそうだが、個人的には桜や松などのテーマにあわせて意匠をこらした部屋の一つ一つと、庭のうつくしさが印象に残った。資料館もあって、こちらもおもしろかった。

それから二見興玉神社へ。縁結びや夫婦円満にご利益があるからか、カップルやご夫婦が多い。ここから夫婦岩ものぞめる。猿田彦大神をまつっている場所だが、内宮近くの猿田彦神社とはかなり雰囲気が違う。

神社を過ぎてさらに歩くと伊勢シーパラダイスがある。「レストランあります」というのぼりに吸い寄せられて中に入ろうとしたが、なんと今日は休業であった。伊勢は車で移動するひとが多く、徒歩で移動できる範囲内では食事やトイレの場所は少ないので、見つけ次第入るようにしている。特に冬は、食事とトイレについてはつねに注意しておきたいところである。

そこからしばらく歩いて、安倍晴明が建立したと言われる松下社へ。誰もお参りしていなかったのだが、いろいろなところに気配がある。あまりにパワフルで、圧倒されてしまった。とても不思議な場所だった。

松下社の隣にある、民話の駅 蘇民へ立ち寄る。地元でとれた魚や野菜が並んでいて楽しい。アンパンマンの顔をしたクリームパンがどうしても気になったので買う。

そこから元来た道を戻る。うつくしい風景がたくさんあった。

バスに乗ったらいつの間にかぐっすり眠り込んでしまっていた。

伊勢にいるのもあと数日。全部見ておきたいと思うけれど、わたしがいま考える「全部」は、伊勢の四季のうつろいや、時間や天候によって変化する風景のことで、それはたぶん一年いても見きれない。限りがあることがはがゆく、楽しくもある。

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