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孤独は2つの魔法になる

孤独なとき、考える。喜びのてざわりをどうすればひととシェアできるのか。

孤独なとき、考える。埋めようのない悲しみはどこから来るのか。

孤独を原動力として、光も闇も生まれる。出力は同じだが、生み出されるものは正反対である。

街をただひたすらに歩くとき。孤独だが清々しい。
家のダイニングでぼんやりしているとき。耐えられないほどの孤独が喉めがけて襲ってくる。

孤独をきわめたあるとき、街へ出た。孤独がきわまると、清々しくなるまでに時間がかかる。歩いているうちに高田馬場へ出た。そこで巫女に出会った。
彼女は「あなたは魔力をコントロールする術を知る必要がある」
と言った。
「いまのあなたはとても無防備すぎる」
そして巫女は姿を消し、空となった。

途方に暮れて縁側に座り込む。庭にぶらりと足を投げ出し、雨上がりの庭を眺める。灯籠の影にひそんでいた蛙が不意に姿をあらわし、背中をぎらりと光らせながら茂みの中にその姿を隠す。その入れ替わりに、目の前にすっと白くなめらかな手が差し出される。その手を取りわたしは立ち上がる。つないだ手を辿りそのひとの顔を見ると、その顔は真っ白である。はっと驚いてあわてて手をほどくと、指の間から白い蛇がぬらりと逃げていく。尻もちをつくと、背後に「大丈夫?」と声をかけてくるひとがいる。その顔はちょうど影になって、そのひとがどんな顔をしているのか見えない。

闇にからめとられて深い沼へ沈んでいくか。
足を踏ん張りながら闇を切り裂き光をつかむか。白か、黒か、選ぶのは自分なのだと気づかせてくれたのは巫女だった。

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