ばあちゃんが作ってくれた牛乳とお砂糖たっぷりの「コーヒー」の味。
この世にはコーヒーが好きな人、苦手な人、牛乳を入れれば辛うじて飲める人、ガムシロとミルクをたっぷり入れて、もはやコーヒーなのかいう状態なら飲める人など、様々な人がいる。
その中で私は毎日のようにコーヒーを飲む。
いわばコーヒー過激派である。
(とあるラノベの宝石商の英国紳士を知っている人ならわかる表現)
とくに朝のコーヒーは飲まないと頭が働かないような気がして、時間がない時でも職場に着くまでにコーヒーを買わないと気が済まないほどだ。
私が最初にコーヒーを好きになったのは
亡くなった母方のおばあちゃんの影響だった。
同居していた父方のおばあちゃんは急須で入れた煎茶が大好きで、別で暮らす母方のおばあちゃんは洋風のお菓子が好みなのもあってコーヒーをよく飲んでいた。
とはいえ淹れ方や種類にそこまでこだわりはない。
いつも大きめのマグカップにインスタントコーヒーをスプーンに山盛り一杯入れてお湯に溶かして飲んでいた。
私はおばあちゃんの飲むコーヒーの芳ばしい香りが好きで、当時小学生だった私はその味に興味津々だった。
大人のすること為すことに興味を持ち始める年頃である。だが「私も飲みたい!」と言うと母は「コーヒーなんて苦いだけよ」と言っていつも突っぱねられてしまう。
小学校4年生くらいの頃だろうか。
いつものやり取りの後に、おばあちゃんは「ちょっと待っててね」と優しく微笑み台所に向かっていった。
私専用の小さなコップに牛乳を注いで電子レンジで温め、そこに少しのインスタントコーヒーとたっぷりの砂糖を入れて「コーヒー」を作ってくれたのだ。
コップから立ちのぼる憧れていたあの芳ばしい香りが私の鼻をくすぐる。
とても嬉しかった。
ワクワクしながら飲んでみると、母の言っていた苦味は少しするけど牛乳と砂糖の甘さが程よく合わさって、とっても美味しく感じた。
はじめて大人の味というものを味わった気分だ。
それ以降、冬休みにおばあちゃんの家に帰るたびに「コーヒー」を作ってもらい、そこから私のコーヒー好きが始まったのだ。
今となっては砂糖も入れないし牛乳も入れないし、むしろブラックコーヒーで飲むことがほとんどだが、あの日飲んだ「コーヒー」は今でもずっと忘れない味。
そんな私のおばあちゃんが亡くなったのは
ほんの3ヶ月前のこと。
今だにコーヒーを口にすると、あの日のことを思い出しては涙が出そうになることがある。
優しくて、料理上手で、おしゃれで、旅行好きなおばあちゃん。
そんなおばあちゃんが大好きだった。
この文章を打っているパソコンの横にも、まさに珪藻土のコースターに乗ったブラックコーヒーが置いてある。
たまにはあの日の「コーヒー」を作ってみようかな。
少しのコーヒーと牛乳をたっぷり入れて。
由佳
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