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水のないヴェネツィアの風景

 ヴェネツィアといえばラグーンに囲まれた運河の街。並ぶ家の壁から水路に零れるように咲く花や、大小様々な橋、その下をくぐりゆくゴンドラ、艀の向こうに島を望む広場などの絵が浮かぶだろう。

 サン・マルコ広場から海沿いをビエンナーレ会場のほうへ歩いて行く道は、眺めの良い散歩道だ。右手に明るく青い海を眺めながら、島の形に添ってゆったりとカーブする。左手には河岸に続いて緑豊かな公園が現れ、海との対比が目に楽しい。
 天気の良い日だったので、公園のベンチに座った。迷路のような街中や広場に比べるとのんびりしていて、地元の方だろうか、犬の散歩やジョギングしている姿も多い。
 ビエンナーレ会場では特に何も催されていなかったので、公園を抜けて街の方へ出た。そろそろ昼ごはんを食べたい時間帯だった。
 この辺りは運河が入り込んで来ていない。比較的大きな通りにレストランや土産物屋が並び、路地の日陰には猫が点々と丸くなったり平たくなったりしている。窓から窓へ張った紐に洗濯物がたなびいているのも、なんとものどかだ。
 水の都、どこも絵になるなあと思っていたが、運河も海もないヴェネツィアもなかなか風情があるのだった。

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