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気軽に国境を越えて買い物に行く習慣

 フリウーリ・ヴェネツィア=ジュリアはイタリア北部東端の自治州だ。ウーディネを中心とするフリウーリ地方がその大部分を占めているが、州都はヴェネツィア=ジュリアのトリエステ。
 カルスト地形の語源にもなった石灰質の土壌が向いているのだろう、白ワインが有名だ。でも赤も美味しい。他であまり作られていない品種の作付があったりして面白い。
 サン・ダニエーレの生ハムを筆頭に肉製品も有名だし、チーズも美味い。主に緑豊かな平原と丘陵地帯、白い川底のおかげで青く輝く河川と遠くに見える山々から構成される、美しい土地だ。

 ウーディネからトリエステへと伸びる国鉄の、特急は閑散としたいくつもの駅を通り過ぎる。駅からは『団地』という風情の集合住宅や工場、郊外型の巨大なスーパーが見え、そこでの暮らしはわれわれにとっても想像に難くない。
 しばらく列車に揺られていると、田畑や平原の中をゆく道に有料道路の料金所のようなものが見えた。
 辛うじて舗装されていた気がするが、中央線もなく、どう見ても高速道路ではない。遮断機は上がっていて人はいない。ただまっすぐに、緑の平原に道が続いている。
 スロベニアとの国境のゲートだと、同行のフリウーリ人が教えてくれた。昔は有人だったそうだが、スロベニアもシェンゲン協定に加わり廃止されたそうだ。
 かつてのユーゴスラビア。なんとなく、子どもの頃にニュースで見た絵面を思いだした。いま目の前にある風景はのどかな、とくべつなところのない田舎で安堵する。

 国境をかんたんに越えられるので、わりと気軽に隣国へ出かけるそうだ。
 フリウーリ人の家族や友人たちも休日のランチや買い物に、しばしばスロベニアの町へも行くらしい。峠を越え車で15分、近いものだ。景色もよくドライブに最高。山がちでイタリア側より雪も多い。
 イタリアに比べるとやや物価が安く、特に煙草は1ユーロくらいは安いのでみんな買いに行くんだと言っていた。より物価の高いスイスやドイツからはイタリアに来る。

 いくつか停まる駅の中にゴリツィアもある。スロベニアとの国境の町で、スロベニア側にはノヴァ・ゴリツァと言う町になっているそうだ。
 ノヴァ・ゴリツァとは『新ゴリツィア』の意、そんな大久保と新大久保みたいな感じで名前をつけるのか。いやいや。そんな。

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