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第百十七話:夫との待ち合わせ

 夫は警察署で汚職防止機関に行ったのはお前だろうと責められたらしく、相当焦っている様子で、「お前は誰に話を持っていったんだ?」と激怒していたが、私は自分は全く何も知らないとしらを切りとおした。
 警察官のほうは、汚職防止機関に話がいったことにより、自分たちが捜査期間を無駄に引き延ばしファイルを未だに裁判所に渡していないことに焦りを感じており、私はいつになったら労働許可証を取れるんだと逆にプレッシャーをかけられる形となった。
 完全に板挟みの状態で、夫からは再三連絡が来て、「一緒に問題を解決しよう!」と誰がこの問題を作ったんだよと突っ込み満載のせりふを言われ続け、周り全員に反対されながらも会って話を聞く決断をしたのだった。

 会うことは決まったわけだが、とにかく夫が警戒しており、必ず一人で来るようにと何度も言われ、当日になるまで会う場所も教えて貰えず、当日に言われた場所も向かっている最中に変更し、待ち合わせ場所に行くと車に乗り込んできて、車を指示するとおりに走らせるように言われたのだった。
 内心ここまでする必要があるのかも不明だし、なんかサスペンス映画の見過ぎなんじゃないかと、とても冷めた気持ちになった。呆れつつ着いた場所は、レストラン&バー併設のローカルホテルだった。嫌な予感しかしないし、皆に言われた通りにこんな遠くまでわざわざ会いにくるべきではなかったなと後悔した。
 そして、車から降りる前に携帯と鞄はお互い車内に置いていくようにと指示された。かなり抵抗したのだが録音などされたら嫌だからと、向こうも一向に譲らない。実際、私は会話を録音しておくように友人たちからアドバイスを貰っており、サインを私が偽装したと言い張っている件で万が一裁判などになったときのための証拠が取れるかもと目論んでいた。
 かなり粘ったが、最終的にはアホらしくなり、一応要求を呑むことにした。GPSはオンにしており、友人たちには何かあったときのため居場所を分かるようにはしてあった。
 最終的にお互い財布だけを持って、車から出た。
そして、レストランの外の席に、周りから距離を置くようにして座ったのだった。

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