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第百四十話:ジェームズとの縁を切る

 二日後にまたジェームズより連絡があり、一昨日の話の続きをしようと言われた。前回、話し合いが長時間にわたり、遅くなり途中で切り上げたためだった。
 私は、しっかり恋愛関係を解消しよう(とくに恋人らしいことは何か月もなかった訳だが)と思って行ったのだが、当のジェームズは一昨日の話し合いで全てが解決したような感じで話をいつも通りにしてきた。
 よく分からないペースにのせられ、だらだらと雑談を続けられ、わざわざ仕事後行きたかったジムを休んで、会いに来たことを心底後悔していた。

 挙句の果てには、私のルトフィーへの気持ちをも否定するようなことを言い出した。「出会ったのはたった数か月前なのに、そこまで感情移入し悲しんでいてお前は頭がおかしい。」「そもそも俺が、ルトフィーがお前のことを好きだったって教えるまで、それすらも知らなかったんだろ!それでいて悲しい理由が分からない。」
 そんなことを言われ、ここまで人の感情を理解できず否定してくる人間と友人関係すら続けたくないと強く思った。それと同時に、人の心が分からないから、人のメッセージも平気で無視するし、人を長時間待たせても平気だったんだなと合点がいった。
 「もうこれ以上あなたと話を続けたくない。」そういって私はカフェを後にした。

 もう、ジェームズと会って話すことはないだろうなと感じていた。
 ただ、まだ貸したお金は返してもらえてないし、担保として置いていった車も売れていなかった。すでに車は1年半くらい置かれており、見に来るお客さんは大勢いるのだが、状態が悪く、ジェームズに指摘しても直そうとせず、値引もしないので売れないという感じだった。
 お金をしっかり回収するまで、関係を悪化させないように努めるべきか、それとももうお金のことは忘れて、縁を切るべきか、正直悩んでいた。

 そんな中、なんとその翌日、車を見に来たお客さんがすぐに購入を決めてくれ、入金してくれたのだった。すぐに、貸していたお金を差し引き、残りをジェームズに送金した。

 すごいスピードですべてが進んでいき、関係を解消する準備が整ったことに、とても驚いていた。と同時に、これはもう別れなさいということだなと不思議な力を感じていた。
 そしてものすごい長文でルトフィーへの感情を否定してくるメッセージを送りつけてくるジェームズに、「もう、あなたとは話をしたくありません。」と一言返信した。 

 10年前に出会ってから常に心の中にいて、無理矢理諦めようと他の人と結婚したが、結局忘れられず、彼の気持ちを自分に向けよう、プロポーズしてもらおうと苦しんだ関係がようやく終わりを迎えた。

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