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【絵本紹介】平和への祈りをこめて~ヒロシマに関する絵本~

かつて勤務していた市では、ほぼどの学校も修学旅行で広島に行っていました。

「平和教育」の一環です。

5月や6月に修学旅行がある時は、もうゴールデンウィークが明けたらすぐに修学旅行への取り組みが始まっていました。

太平洋戦争、なかでも原子爆弾の被害について事前に学習し、グループごとにテーマを決めて調べ学習をすることが多いです。


本番の修学旅行では、広島の平和記念資料館を見学するのはもちろんですが、平和記念公園で語り部さんやガイドさんのお話を聞いたり、記念碑を見て回ったりします。

そして、「原爆の子の像」の前で、セレモニーを行います。

全校児童で折った折り鶴をささげ、平和への誓いの言葉を言ったり、歌を歌ったりするのです。


*原爆の子の像……広島で被爆し、中学1年生で原爆による白血病で亡くなった佐々木禎子さんをモデルにした像


「原爆の子の像」の前に捧げる折り鶴は全校児童で折るのですが、趣旨説明をして1~5年の各クラスに折り方を教えに行くのは6年生の子どもたちです。

勤務していた学校では、鶴を折ってもらう前に絵本の読み聞かせに行くことにしていました。

広島の原爆をテーマにしている絵本を、6年生が下学年に読み聞かせます。
そしてそのクラスに、後日鶴を一緒に折りに行くのです。
低学年の子どもたちには、特に、単なる説明だけより印象に残るようです。


今回は6年生が読み聞かせに行った本のうち5冊をご紹介します。


■まちんと(松谷みよ子 作  司修 絵  偕成社)


すこし むかし
小さな子が
もうじき3つになる子が
広島に すんでいて
昭和20年8月6日の朝
げんしばくだんに おうたげな


これだけで6ページ。
文字の量は少ないけれど、司修さんの絵と合わせて、迫ってくるものがあります。

言葉が削られているからこそ、より伝わるものがあるように思います。

子どもに読ませるとついついさっさと読んでしまうので、ゆっくりゆっくり、超スローに読んで、絵をじっくり見てもらうように言って練習させています。

保育所・幼稚園でもよく読まれているようです。




■さだ子と千羽づる(SHANTI 作  オーロラ自由アトリエ)


2歳のときに被爆して、小学校6年生で白血病に倒れ、翌年亡くなった佐々木禎子さんの実話を絵本にしたものです。

太平洋戦争の経過も、低学年にもわかるように書かれています。

6年生が広島の修学旅行に行くからって、どうして「つるを折る」のか?
そう思っている低学年にはお悩み解決の絵本です。

低学年に読み聞かせに行くのに、選ぶグループが一番多い絵本でもあります。




■おりづるの旅 さだこの祈りをのせて(うみのしほ 作  狩野富貴子 絵  PHP研究所)


『さだ子と千羽づる』と同じ、佐々木禎子さんの実話を絵本化したものです。

『さだ子と千羽づる』が禎子さんの話だけなのに対して、『おりづるの旅』では、禎子さんの死後、級友が立ちあがって原爆の子の像を作ったことや、折り鶴が世界に広まっていく過程が描かれています。

少し長いですが、鶴を折る意義を伝えるのに適していることもあり、選ぶ子ども達が多いです。

平和記念資料館には禎子さんが病床で折った鶴が展示してあったり、禎子さんの話が詳しく書かれたりしているので、熱心にメモを取る子ども達が何人もいました。

禎子さんが同年代だというのも、子ども達に響くものが多いのかもしれません。




■伸ちゃんのさんりんしゃ(児玉辰春 作  おぼまこと 絵  童心社)


伸ちゃんは3歳の男の子。
あの日、近所のきみちゃんと遊んでいて被爆し、亡くなりました。

お父さんは伸ちゃんをもう一度焼く気になれず、仲よしのきみちゃんと、三輪車をいっしょに庭に埋葬しました。


これも、実話を絵本にしたものです。

平和記念資料館には三輪車の実物も展示してあり、子ども達は「あ、三輪車や!」と見つけるが早いがじっと見ています。
やはり聞いたことがある話は興味がより湧くのでしょう。

資料館のパンフレットの表紙も、伸ちゃんのさびついた三輪車で、配られると子ども達には「伸ちゃんの三輪車」だとわかるようです。

実物を見ると改めて絵本の話が実際にあったこととして迫ってくるようです。




■真っ黒なおべんとう(児玉辰春 作  長沢靖 絵  新日本出版社)


これも実話です。

8月6日の朝、お母さんが作ってくれたお弁当を持って建物疎開の作業に出かけたしげるくんは、原子爆弾によって命を奪われてしまいます。
しげるくんを探しに出かけたお母さんは、食べられないまま真っ黒に焼け焦げたお弁当を見つけます。

真っ黒に炭化したお弁当は、平和記念資料館に展示されています。

実話をもとにした絵本が何冊もあることに、被害の大きさ、被害者の数だけエピソードがあることに気づかされます。

中学年を中心に読み聞かせに行くグループが多かったです。




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主に小学校の教科の学習の中で、関連づけて読み聞かせができる絵本を紹介しています。


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なぜ小学校で読み聞かせをするのがいいのか、学級づくりにどう役立つのか、そんなことも書いています。


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子育て中であり仕事にも忙しかった小学校の先生の私が、少しずつ意識を変え、生活を変え、夢を叶えていったお話を書いています。



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