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【論文】職業性ストレスとワーク・エンゲイジメント-個人のワーク・エンゲイジメントは他者に伝染する!?-

ワーク・エンゲイジメント、という言葉は組織開発の勉強をしていると必ず目にするワードです。

従業員のワーク・エンゲイジメントを高めよう!とか
従業員のワーク・エンゲイジメントを高めるには?などなど。

よく従業員満足度(ES)との違いはなにか、と言われていますが、両者の大きな違いは、従業員との関わりが想定されている「対象」です。

ワークエンゲージメントが「仕事の内容」との関わりについての概念であるのに対して、ESが対象としているのは仕事内容、報酬、職場環境などを含めた「企業」との関わりです。

リクルートマネジメントソリューションズHPより抜粋


ちなみに、ワーク・エンゲイジメントの定義は下記となります。

シャウフェリらは、ワーク・エンゲイジメントを、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲイジメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である。」と定義している。

職業性ストレスとワーク・エンゲイジメント


ワーク・エンゲイジメントとは何なのか、ワーク・エンゲイジメントが高まるとどうなるのか、について下記の論文をもとに追っていきたいと思います。

【論文名】職業性ストレスとワーク・エンゲイジメント/島津明人さん


ワーク・エイジゲンメントの要素


ワーク・エンゲイジメントは、活力(Vigor)、熱意(Dedication)、没頭(Absorption)の3 要素から構成された複合概念といわれています。

このうち、活力は「就業中の高い水準のエネルギーや心理的な回復力」、熱意は「仕事への強い関与、仕事の有意味感や誇り」、没頭は「仕事への
集中と没頭」をそれぞれ意味しています。

『職業性ストレスとワーク・エンゲイジメント』

つまり、ワーク・エンゲイジメントの高い人は、仕事にやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て活き活きとしている状態にあると言える。

「ああ、私今日活き活きしているなあ」と思ったらワーク・エンゲイジメントが高まっている証拠ですね。

ワーク・エンゲイジメントの規定要因


既定要因とは、ある事柄の原因となる要素や要因のことを指します。

ワーク・エンゲイジメントの規定要因としては、仕事の資源(Job resources)と個人資源(Personal resources)が、これまでの実証研究で明らかにされているそうです。

仕事の資源とは、仕事において1)ストレッサーやそれに起因する身体的・心理的コストを低減し2)目標の達成を促進し3)個人の成長や発達を促進する機能を有する物理的・社会的・組織的要因のこと。

個人資源とは、自分を取り巻く環境を上手にコン トロールできる能力やレジリエンスと関連した肯定的な自己評価のこと。

図にするとこんな感じです。

『職業性ストレスとワーク・エンゲイジメント』


仕事の資源とワーク・エンゲイジメント

仕事の資源とワーク・エンゲイジメントとの関連については、上司からのパフォーマンス・フィードバック、社会的支援、上司によるコーチング、仕事のコントロール、革新的な風土、報酬、承認、組織と個人との価値の一致、などがエンゲイジメントと正の関連を有しています。(正の関連:片方の値が増加すると、もう一方も増加する傾向があること)


個人資源とワーク・エンゲイジメント

個人資源とワーク・エンゲイジメントの関連については、目標設定、動機づけ、パフォーマンス、仕事や生活への満足感などと正の関連を有しています。


ワーク・エンゲイジメントは他者に伝染する!?

ワーク・エンゲイジメントがなんなのか?ということが少しおわかりいただけたでしょうか。

ここから面白い研究結果があります。なんと、ワーク・エンゲイジメントは、他者に伝染するという研究結果があるのです!!!!

個人のワーク・エンゲイジメントは別の個人にも「伝染する」ことも知られている。共働き夫婦を対象にした研究では,夫 (妻)のエンゲイジメントは妻(夫)のエンゲイジメントと正の関連を有しており、夫婦間で良い影響を及ぼし合っていることを明らかにしている 。このように、 ある個人の感情や態度が別の個人に「伝染する」現象をクロスオーバー効果と呼んでおり、これまでに、 夫婦間、上司・部下間、同僚間でのクロスオーバー効果が明らかにされている。

『職業性ストレスとワーク・エンゲイジメント』

例えば、夫が仕事に対してワーク・エンゲージメントを感じられておらずストレスを抱えていてイライラしていれば、そのイライラが妻にも伝染する、ということ…..これはなんとなく想像できますよね。

これが上司・部下間でも、同僚間でも、影響をし合うという研究結果があります。

個人のワーク・エンゲイジメントを高めることは、はたまた夫婦間の関係性を良くすることにもなるんですね。

では、どうすればワーク・エンゲイジメントを高めることができるか?についてはまた別の機会にご紹介できたらと思います!

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