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幸せの三段重ね

精神科医の樺沢紫苑(かばさわ・しおん)という人が書いた「ストレスフリー超大全」(ダイヤモンド社)を読みました。この本には面白いことがたくさん書いてありますが、中でも最後に出てくる「幸せの三段重ね」の図が実に興味深かったので、ここに紹介します。興味のある人は是非買って読んでみてください。(別に宣伝するわけじゃないですが…)

「幸せの三段重ね」、冒頭に掲げた三角形の図がそれです。人が幸せになるための条件を脳科学的な観点から解説したものです。いきなり結論を言うと、「セロトニン」「オキシトシン」「ドーパミン」、この3つの神経伝達物質を脳内で放出することが人が幸せになる鍵だと書かれています。

三段重ねの仕組み

そもそも神経伝達物質とは何か?脳の中では神経細胞が様々な情報を伝達しているのですが、その仲介をする物質を神経伝達物質と呼びます。50種類ぐらいあるそうですが、特に有名なのがこの「セロトニン」「オキシトシン」「ドーパミン」です。他にも「アセチルコリン」とか「アドレナリン」とか「エンドルフィン」とかあるのですが、話がややこしくなるのでここでは割愛します(笑)。

で、この神経伝達物質が出ると様々な気分とか感情とかが誘発されるんですね。例えば「セロトニン」が脳内で放出されると、爽やかな気分になり、前向きに生きようという意欲が湧いてきます。これを著者は「セロトニン的幸福」と呼んでいます。このセロトニンは朝日を浴びたり瞑想をしたりすると出てきます。出なくなるとどうなるかと言うと、心が重く沈んでいき、極端な場合はウツ状態になることもあるようです。

同様に「オキシトシン」が放出されると、心が癒されます。オキシトシンは、夫婦や恋人などのパートナーと一緒にいたり、子供や孫を膝の上に抱っこしたりすると出てきます。スキンシップ、コミュニケーション、愛情、交流、仲間とのつながりですね。逆にこれが足らなくなると「孤独」を感じ、不安が心を支配するようになります。

最後の「ドーパミン」、これは立身出世や試験の合格、スポーツの試合に勝つ、大金持ちになるなど、何かを達成した時に放出され「ヤッター」感が出ます。お酒を飲んで気持ち良くなった時にも出てきます。パチンコで勝った時にも出るのですが、お酒やパチンコは依存性が高いので注意が必要ですね。

さて樺沢氏はこの3つの幸福の中で、最も重要なものは「セロトニン的幸福」だと述べています。なぜならこれがすべての幸福の基本、ベースとなるものだからです。しかし世の中の多くの人はいきなり「ドーパミン的幸福」を求めてしまう。出世したり金持ちになったり名誉を得るために奔走したりするわけです。その過程で多くの人が、家族や友人とのつながりをないがしろにして「オキシトシン」を出さなくなったり、睡眠時間を削ったり不規則な生活をしたりして「セロトニン」を出さなくなったりする。それではダメだと樺沢氏は主張します。

幸福は、あくまで下から「セロトニン」→「オキシトシン」→「ドーパミン」の順番に積み上げないといけない。「ドーパミン」だけいくら放出しても、「セロトニン」や「オキシトシン」が出ていなかったら、その人は幸福にはなれない、というわけです。では具体的にどうすれば良いのか?

バナナを食べて朝散歩 (^0^)))

まずはセロトニンを出します。朝起きたら散歩をする。目が覚めてから1時間以内に、15〜30分の散歩が目安だそうです。朝日を浴びると目の奥の網膜に光が当たり、その網膜を通過してさらに奥にある視床下部に光が届くとセロトニンが分泌されます。まずはこれですね。あと、脳内でセロトニンを分泌させるには「トリプトファン」が必須の栄養素になりますが、これは体内では生成されないので、食べ物として摂取する必要があります。トリプトファンを多く含む食物は、豆腐・納豆・味噌・しょうゆなどの大豆製品、チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、あとはお米などの穀物。それとバナナですね。僕は毎朝、バナナにヨーグルトをかけて食べ、そのあと朝散歩をしています。これだけで気分が爽やか、前向きになれます。

心を癒す、オキシトシンの力

次は「オキシトシン」です。愛情がもたらす「つながり」の幸福感。親子や友人だけでなく、ペットとの触れ合いなんかも良いようですね。手をつないだり、抱っこしたりするスキンシップのほか、人に親切にしたり、ありがとうを言ったりしても出てきます。組織の中にいると、人間関係のストレスで悩むこともあるかと思いますが、職場の中で雑談したり冗談を飛ばして笑い合ったり、あるいは親身に相談に乗ったりすることで、オキシトシンが力を発揮すると思います。その点、今年はコロナ禍で物理的な触れ合いが断たれている状況が散見され、大きな問題を孕んでいると思います。たとえ離れていても、心が触れ合い気持ちが通じ合う環境を確保したいですね。

幸せの境地

最後はドーパミンです。これを出すための方法は、数多くの自己啓発書に書かれているので、多分皆さんご存知でしょう。目標を定めて成果を出す、上司に言われた課題をやり遂げる、大会で優勝する、山頂に登って下界の景色を見渡す。こういったことを、セロトニン、オキシトシンを分泌した状態で達成すると、「三段重ね」が完成するわけですね。それってどんな境地なんだろう?と想像するだけでワクワクしてきます(笑)。

実は僕はむかし一度だけ、そのような気分を味わったことがあります。確か初夏の夜明けごろだったと思いますが、「自分は今最高に幸せな状態にある」ことを自覚したのです。時は1980年、場所は京都の北白川。明け方の陽光を浴び、道路の中央分離帯に立って目の前の東山を見上げ、そう感じました。もちろん社会に出る前の甘ちゃんだった頃ですが、気の合う仲間とともに活動し、健康にも恵まれ、充実した日々を送っていたのです。加えて未来は無限の可能性が広がっている…とその時には思えました(笑)。まさに三段重ねが成立していたのでしょう。それから40年が経過し、腰が痛くなったり記憶力が怪しくなってきたりしてますが、あの時の気分をもう一度味わってみたいものだ、とふと思います。

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